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86話 ☆3『鉱石調達』⑨(歩合)

「鉱石はこれで全部か?」


「うん、もう壁には鉱石なさそうだし、これで水がない所にある鉱石は全部だと思うよ」



 俺はリクにそう伝えて鉱石袋がたくさん置いてある所を見つめた。個々の場所だけでかなりの鉱石が集まった。キャリーが言っていたように、これだけあれば十分だろう。



「やっぱり水の中にある鉱石も持って帰ろうぜ」


「リク、それは無理だって。この水の奥を見てみなよ」



 カイトが水の中を指差して、リクはその先を見た。俺もリクと一緒に覗き込むと、そこには何かが奥の方で泳いでいるのが見えた。


 深い位置にいるから正確な大きさは分からないが、それでもここまで上がってきたらかなりの大きさになることは予想できた。



「魔物がいるのは分かったよ、でもかなり深いぜ? あれならこっちに来ないでしょ? カイトだってここ水使っていたし」


「俺がキクラゲと戦っていたときにはいなかったんだよ。多分俺の攻撃で寄って来たのかもしれない。水に入る前に気が付いたのが幸いだよ。あんな魔物は、ここにいる全員が戦っても勝てないでしょ。少なくとも俺らが受けるクエストの難易度にあんな魔物の情報はない」


「そうかぁ……」



 水の中の魔物を見つめながらリクはため息を吐いた。魔物はゆらゆらと更に奥に潜って姿が見えなくなった。



「リクさん、カイトさん、シンさん、鉱石袋をまとめましたのでそろそろ戻りますよ!」


「分かった、今行く!」



 キャリーが凄く大きな布をカバンから取り出し、鉱石袋を1つにまとめて担いでいた。かなりの重さがあるはずなのに、布は破れる気配がない。


 帰り道にも置いてきた鉱石袋があったので、それも回収して、俺たちは洞窟から出て地上まで戻って来た。






 ■






「ようやく街に帰れるよ、あぁ疲れた」



 地上に出て太陽の光を浴びると、洞窟の壁を背もたれにして座った。鉱石集めや魔物との戦闘もそうだが、何よりこの洞窟に来てからほとんど動きっぱなしで俺の身体に疲れがたまっていた。


 キャリーは馬車に鉱石袋と倒した魔物をドンドン載せていく。馬車の中はいっぱいになり、全員が座れるほどのスペースは残っていなかった。



「どうしましょうか……」


「歩いて帰るか、置いていくかのどちらかだな」


「私はここから街まで歩くの嫌だよ!」



 イラミは歩いて帰るのが嫌らしく、馬車に乗ると騒いでいる。



「はぁ、仕方ない。俺が歩く」


「それじゃあ俺も歩こうかな。まだまだ体力余っているし」



 ザイゲンとリクは馬車に乗らないで歩いて帰るようだ。こうしてキャリーを除く残りの8人は馬車にぎゅうぎゅう詰めになりながらも乗り込んだ。


 俺の隣にはイラミとコカが座っていて、2人の柔らかい感触に潰されそうになっていた。それは俺の2つ隣に座っているアオも似た状況で、コカに潰されそうになっていた。


 そんな俺らを、向かい側に座っているユカリは光を無くした冷たい目で見ている。その隣に座っているハクはそんなユカリを見て、頬に汗を流して顔色が悪くなっていた。


 そんな状況になっているのをカイトやソラはクスクスと手で口元を抑えて笑っている。



「それではそろそろ出発しますよ、えい!」


「「ヒヒーン!」」



 キャリーが馬に動くように指示を出すと、2匹の馬が馬車を引っ張り、ゆっくり動いて揺れ始める。鉱石などを積んでいて重いのか、行きのときに比べて進むのが遅いと感じた。


 馬車の後ろからついて来るように歩いているザイゲンとリクは「これくらいなら楽について行ける」

と言っている。


 俺は街に付いてギルドの前まで馬車が着くまでこの状況で過ごした。






 ■■






「みなさん、ギルドまで到着しましたよ!」



 キャリーがそう伝えると、イラミが真っ先に降り始めた。イラミが隣からどいたことでスペースにゆとりができて動きやすくなった。


 コカもイラミに続いて馬車から降りる。その後はユカリ、ハク、カイト、ソラと順番に降りていった。



「アオ、降りるよ……ってどうしたの!?」



 みんなが降りたのにアオがその場から動かないので声をかけると、顔を真っ赤にして息が荒くなっているアオがそこにいた。



「ぎゅうぎゅう詰めでちょっと苦しかっただけだから大丈夫だよ。先にギルドに行っているね」



 アオは積まれた鉱石などを支えにして立ち上がって馬車から降りていった。


 俺も馬車から降りてギルドに入っていく。リクたちはギルドの所に集まっているようだ。アオは少し離れたところにあるイスに座って休んでいた。






「みなさんクエストお疲れ様です、今確認しますのでしばらくお待ちください。時間がかかるので、お食事してきても良いですよ」



 ハンナさんがそう言うと、扉から手の空いたギルド職員の何人かが出てきて、キャリーと一緒に馬車に積まれた鉱石袋や魔物を運んでいく。


 確かに時間がかかりそうな雰囲気だったので俺たちは食事をするために、リクたちが使う食堂に向かうことに決まった。


 食事のことを意識すると急にお腹が空いてくる、もうお昼の時間が過ぎていて、それだけ長くクエストをしていたのかと思い返した。


 食堂に付くと食べ終わって談笑している人たちや、食器が積みあがっただけで、片付けがされていないテーブルもあった。


 俺たちを見た店員が何名で食べるか聞くと、急いで残った食器を片付け、テーブルやイスを拭き、10人で食べられるように場所を作ってくれた。



「お待たせしました、こちらへどうぞ」



 店員さんに案内されて席に付き、俺たちは料理を選んだ。


 みんなたくさん動いたのと、食事の時間がいつもより遅いということから、普段よりも多い量を頼んだみたいだ。俺は普段食べる分の料理を選んだが、足りなくて追加で注文してしまった。


 全員完食をして少し時間を潰してから食堂を出る、ギルドに戻ると、確認作業が終わったみたいで、俺たちはハンナさんの前に集まった。



「皆さんが集めた鉱石は200(キロ)以上あることを確認しました。こちらが報酬金となります。ギルドカードにもGP(ギルドポイント)を入れときました」



 俺たちは150(ゴールド)入った袋を10つ受け取り、ギルドカードにはそれぞれ150GP(ギルドポイント)が追加された。



「そしてこちらが、みなさんが集めてきた鉱石の報酬です」



 ハンナさんから1人ずつ報酬の入った袋を渡されていく、袋に大きさはバラバラで、中に入っている(ゴールド)の量が違うようだ。ギルドカードにGPも追加されているようだ。


 俺の袋は1番小さかったが、中には300(ゴールド)が入っていて、900GP(ギルドポイント)が追加された



「これは集めた鉱石の量によって変わる報酬です、みなさんがサポーターから渡された鉱石袋には印がありまして、誰が何を入れていたかが分かるようになっていました。これにより多く鉱石を入れた人には多く報酬を出しています」


(なるほど、ってことはザイゲンさんやリクは俺より多く報酬をもらっているのか)



 俺は大きさの違いに納得するとみんなと一緒にギルドから出た。






「今日は一緒にクエストに来てくれてありがとう、最初は俺の失言で不穏な空気にしてしまったが、終わってみれば君たちと仲良くなれた気がする。また機会があればパーティーを組んでクエストに行こう」


「バイバイ、今日は楽しかったよ! またね、シン」


「またね……」



 イラミは大きく手を振り、コカは小さく手を振って別れた。コカは別れ際に誰かに向かって微笑んでいたが、俺ではないことは確かだ。そのときのアオは顔が赤くなっていた。






「それじゃあ俺たちも帰るぜ、また一緒にクエストやろうな! シン」


「またね、一緒にやろうね」


「じゃーな」



 リクは両手で大きく振り、カイトはこちらを向きながら片手を上げ、ソラは顔をこちらに向けることなく手を肩より高い位置で振っていた。






「僕たちもそろそろ行くね、またよろしくね」


「……じゃあな」


「じゃあねシンくん、またクエスト誘ってくれれば行きますわ」



 アオとハクとユカリもそう言って帰っていった。






「ではシンさんお疲れ様でした。サポーターが必要でしたら私を呼んでみてください! もちろん食堂の利用だけでも良いですよ。では失礼します!」



 キャリーもいなくなり、ギルドの前には俺1人だけになった。



「さて、帰るとするか」



 俺は宿屋の自分の部屋に帰り布団を敷いて眠りについた。今日はとても長く感じる1日だった。

水の中には強そうな魔物がいて、そこにある鉱石までは回収できなかったが、それでも十分なほど鉱石は集まった。


追加報酬も合わせると、GP(ギルドポイント)が初めて1000を超えた。


とても長く感じる1日だった。

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