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80話 ☆3『鉱石調達』③(バフ)

「あそこに鉱石あるよ! 掘ってくる」


「そろそろ魔物が出てきてもおかしくない、離れすぎるなよ」


「分かってるって」



 イラミは鉱石を掘りに先に進んでいく、カンカン音を鳴らしながら採掘をしている。


 俺たちは離れているが、コカのライトの光で照らされているから、ランタンだけではイラミの周辺しか見ることができないところを、更に先まで見ることができ、なにかあってもすぐに助けに行けるようになっていた。



「やっぱりここは鉱石だけじゃなくて魔物も出るんですね……」


「そうだな、魔素ある所に魔物あり。便利なものを手に入れるには危険と隣り合わせだ……どうした、コカ?」



 急にコカは立ち止まり、イラミが魔銅を採掘している所よりも更に奥を見つめている。俺たちも視線の先を見ると、赤く光る何かが複数見えた。



「魔物……」


「「「グルゥ……」」」


「この泣き声に赤い光……イラミ! ウルフが近くにいる、武器に持ち替えて戦うぞ」


「あとちょっとで掘り切れるのに、もう少し戦闘待ってくれてもよかったじゃん!」



 俺たちはイラミの所に駆け足で向かい、ウルフを迎え撃つ。イラミは装備していたピッケルを外して、槍を装備する。ザイゲンも拳を構えて戦闘態勢に入っている。


 コカは少し後ろに離れた位置から援護するみたいだ。俺は3人の間の位置に立って、ザイゲンたちを通り抜けてコカさんに攻撃が来ないようにする。



「「「ガウッ!」」」


「オラッ!」


「やぁ!」


「ガルッ!」「グルッ!」



 噛みつこうとしていたウルフの1体は、顎の部分をザイゲンの下から突き上げるアッパーカットで攻撃される。ウルフはくるくると縦に回転しながら吹き飛び地面に身体を打ち付ける。


 もう1体のウルフは、イラミの槍で突かれて肩から脇腹辺りまで切り傷ができ血を流している。


 しかし、襲い掛かってきたウルフはもう1体いるようで、俺に攻撃を仕掛けようとしていた。



「っ! 来い!」


「私がやる……」



 俺の前にコカがでて魔法を詠唱する。



「『ストーン』」



 石の塊がウルフに向かって飛んでいき、頭に命中する。頭に当たったことでふらふらしているところに追撃をする。



「『ドン・ストーン』」



 四角に近い形の大きな石の塊を空中に作り出して、それをウルフに落として下敷きにしてしまった。



「グッ……」



 小さな泣き声を最期に、石からは経験値が出てきてコカに入っていく。


 ザイゲンやイラミもウルフにトドメを刺して、無事に戦闘を終わらせていた。



「ほんとコカがいて助かったよ、コカのライトの魔法がなきゃ私もザイゲンもウルフ相手に苦戦していたよ」


「あいつらは暗闇でも俺たちが見えるからな、明るくなかったら距離感が分からず、何回か攻撃を食らっていたかもしれない。助かった」


「うん……」



 コカは軽くうなずくだけでザイゲンたちからの感謝を受け取る。



「魔物も倒したことだし、あそこに見える鉱石じゃんじゃん掘るよー」



 イラミを助けるために奥に進んだことで、ライトも一緒に付いてきて、更に奥が見渡せるようになっている。そこにはかなりの数の鉱石が壁にあった。



「魔銅じゃない色の鉱石もあるみたいですね、何の鉱石だろう?」


「鉄のような色をしているから魔鉄じゃないか? とにかく掘ってみれば、サポーターが教えてくれるだろう」


「それもそうですね、俺もいっぱい掘るぞ」



 俺たちは掘る場所を決めて、別々の前の壁に立つ。イラミとザイゲンは掘り始めたようで、カンカンと音が鳴っている。コカもピッケルで掘っているが、俺と同じでなかなか上手くいかないようだ。



「アレを試してみるかな、上手くいくと良いけど……」



 俺はピッケルを地面に置いて完全詠唱を始める。



「我が魔力を星に……流星が如く……天を切り開く……大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる…………ナンタ……ライダ……リカル……アイド……ケブン……バイタ……」



 詠唱することで頭上に魔力が溜まっていく。初めて試したときは誰に使うかを決めていなかったから、空中で分解してしまったけど、今回は気を付けて、自分に効果が現れるように魔力に指向性を持たせる。



「『パンプア』!」



 頭上にあった魔力が俺の身体に入り力を湧き上がらせる。地面に置いたピッケルを拾い上げると、魔法で強化する前よりも軽く感じた。



「成功、したのかな? えい!」



 試しに1回鉱石に向かってピッケルを振り下ろす。すると、亀裂の入り方が深くなっていた。



「おぉぉ、効いている! 力が上がっているぞ!」


「どうしたの? そんなに騒いで……って、わぁ! 何そのモアモアした魔力は!?」



 イラミが俺の様子を見に来ると、俺の身体に付いた『パンプア』の魔力に驚いていた。



「ん? イラミ何をそんなに驚いて……っ! シン、どうしたんだそれは」


「バフ系魔法……珍しい……」



 ザイゲンもコカも俺の『パンプア』に驚いているようだ。俺は3人に力が上がる魔法であると説明した。






「なるほど、そういう魔法か……確かにバフデバフ系を使う冒険者は少ないな。色んな魔法を使うコカでも攻撃魔法ばかりで、それ以外の魔法は『ライト』などだな」


「うん……私は攻撃魔法ばかり……」


「そうよね、戦士タイプなら武器で攻撃する方を優先するし、魔法使いタイプなら攻撃魔法を優先するよ。魔法使うのが主な戦い方の冒険者が、戦士みたいな力は必要ないもんね。でもシンは両方とも弱いから、役に立てるようにバフ系魔法を覚えたんだね」



 一通り話し終わると、イラミは俺の両肩を掴んでお願いをしてきた。



「ねぇシン、私にもその力が上がる魔法かけてよ! 私たち今はパーティーじゃん?」


「良いですよ、そのために覚えたところもありますから」


「やったー!」



 上機嫌になっているイラミに完全詠唱をした『パンプア』を使用する。上手くできるか分からなかったけど、なんとか成功したみたいで、イラミの身体には俺と同じように、モアモアした魔力が纏わり付いていた。



「力は上がりました?」


「んーあんまり上がってる気がしないなぁ、シンが自分に使ったときは分かりやすかったんでしょ?」


「強くなる量は……使用者の力量次第……」


「なるほど、力が上がる量が決まっている感じなんですね。俺が自分に使って強くなったと思ったのは、元々力が弱かったからで、イラミさんは元々力が強かったから、上がってもそんなに影響がなかったのか……」



 まだまだ他人に使えるほどの魔法になっていないことに落ち込んだ、でもコカの言うように力量次第で強くなるなら、鍛えていけばいずれ『パンプア』もみんなの役に立つだろう。


 そんなことを思いながら、俺たちは鉱石掘りを再開した。

洞窟内でウルフと戦った。コカの『ライト』のおかげで苦戦しないで戦えた。


『パンプア』を使ったことで力が少し上がったが、イラミにはあまり効果が発揮されなかった。

今はまだ他人に使えるほど強くはないみたいだ。

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