8話 授業!③(観察)
授業三日目
朝の授業で、ランド先生合わせて5人の大人と一緒に、俺たち生徒は町の外に出ていた。歩く道は整備されているが、それ以外の周りは一面草原で遠くに森や山が見えるくらいだった。こんなところを歩いている目的は野生の魔物を見ることだ。
「この辺りから道を外れます。しっかりついてきてください」
そう言われしばらく後をついていくと、草むらに何かが動いたように見えた。
「いましたね、あれがスライムです」
ランド先生の指さす方へと目を向けるとスライムがいた。向こうも気が付いたようでこちらの様子をうかがっている。
「スライムは魔物の中でも穏やかで、敵意のない相手に襲い掛かることがありません」
スライムは俺たちの方を見ながら後ずさりして、ある程度離れたら後ろを向き、ピョンピョンと跳ねながら逃げていった。
「魔物との力量差があると今のように戦わなくても逃げ出します。どんどん進みますよ」
それからスライムと遭遇し逃げられるが何度かあった。気が付いたら遠くに見えていた森が近くなっていた。
「これから森の外側を歩きます。スライム以外の魔物も出てきますので、私たちから離れないでください」
そう俺たちに注意をした後、森の中から声が聞こえた。
「ゴブッ!」
「あれはゴブリンですね」
「ゴブッ」「ゴブッ」「ゴブッ」
1体だけかと思ったゴブリンが数体出てきた。手には木の棒を持っている。魔物から敵意を初めて向けられた生徒ばかりなのか、顔から汗が出ていた。ランド先生は余裕の表情でゴブリンの方へ歩いていく。
1体のゴブリンが木の棒で殴り掛かってくる。ランド先生は腰に付けていた剣を引き抜く。しかし、剣で切りつけることはせず、開いた手でゴブリンの木の棒を掴んで受け止めた。ゴブリンは木の棒を取り返そうと引っ張るがびくともしない。
「ゴブリンなんてこんなものです」
そう言ってゴブリンを剣で切りつけた。切られたゴブリンはその場で力なく倒れた。
「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」
他のゴブリンたちは仲間がやられたことで怒り、いっせいに襲い掛かってきたが、それを難なく切り倒した。
(凄い……)
俺は素直にそう思った。他の生徒たちも同じように思っているようで、目をキラキラさせている。
「私のせいでゴブリンが弱いと感じたかもしれませんが、ゴブリンは集団で遭遇することの多いので、新人冒険者は命を落とす可能性が高い魔物です。冒険者になったときはしっかり注意しましょう」
「「「はい!」」」
生徒たちは大きな声で返事をした。
ゴブリンを倒したことで移動を再開する。少し歩いてから木の根元近くに他とは違う草を見つけた。
「あの草は薬草です。素材で使うことの多いアイテムです。こんなところに生えているなんて珍しいですね……!」
ランド先生は一瞬だけ目を見開いた。それを見ていた俺は薬草を観察してみる。しかし、薬草の知識が無い俺では何も分からなかった。そこで薬草の周りを見ることにした。そして違和感に気が付く。
なぜ他の木には葉が付いているのに、薬草に一番近い木に葉が付いていないのか。そこに疑問を持ったので木の根を見てみる。根は地面に埋まっていなかった。
「ランド先生、あの木はもしかして魔物ですか?」
「シンくんよく気が付きましたね!」
「昨日の授業であの魔物についてやっていたので覚えていました!」
「なるほど、ちゃんと学んだことを生かせて私はとても嬉しいです」
ランド先生は笑顔だった。俺も嬉しくなって笑顔になる。
「シンすげーな!俺全然分からなかった!」
「……やるな」
「凄いね!シンくん」
みんなにも褒められた。
「では昨日教えたパッシブの検証をしましょう。ウッドォには『火属性(弱)』が付いています。まずは火属性じゃない属性を使ってみます」
「ウィンド!」
竜巻のような風がウッドォという木の魔物に向かっていってぶつかり倒れた。しかし致命傷とはならずすぐに起き上がってくる。
「今のは風属性の魔法です。ダメージは与えましたが風の勢いで倒れただけですね。次は弱点の火属性の魔法を使います」
「ファイア!」
今度は火の玉が飛んでいく。ウッドォに当たり火の玉の大きさに見合わずかなり燃え始めた。のた打ち回った魔物はしばらくして動かなくなった。
「今ので火属性が有効だと分かりましたか?同じような威力の魔法でも、弱点の属性を付くことによって大ダメージを与えられます。では朝の授業は以上にしましょう。そろそろ戻らないと昼食が食べられなくなってしまうので学校へ帰ります」
こうして朝の授業は終わった。長い間歩いたため学校に着くころには足が疲れていた。
――
お昼の授業
教室でアイテムについて教わることになった。足がまだ疲れていたので座って授業は楽だった。
「みなさんはこの草を覚えていますか?」
「それは朝見た薬草ですね」
俺がそう答えた。
「その通り、これは薬草です。では何に使うかは分かりますか?」
「……食べて回復するものですか?」
「飲食して回復するのは当たっています。でも他の用途に使うことが多いです。それは素材として使うことです」
黒板に薬草と書く。その横に線を引き、アイテムを書き込んでいく。
『ポーション』
『マジックポーション』
『解毒薬』
などと書かれていた。
「ここに書いた通り、『ポーション』『マジックポーション』『解毒薬』は薬草を素材にして作られています。それぞれのアイテムにどのような効果があるか解説していきます」
「『ポーション』は回復アイテムです。飲むと女神の加護が少し回復します」
(……女神の加護?……何だそれは?)
「ランド先生、……女神の加護って何ですか?」
俺がそう聞くとみんながこちらに向き驚いた顔をしていた。どうやらこの世界では当たり前のことのようだと察した。
「まさか女神の加護を知らないとは……女神の加護は私たちに付いている加護のことで、これがある限り身体に傷がつくことはありません」
「あぁなるほど!ありがとうございました!」
(身体に傷がつかない!?何だそれは!……FPSのアーマーみたいな感じか!?)
俺が困惑している間にも授業は進んでいく。
「続けます。『マジックポーション』は魔力を少し回復します。『解毒薬』は毒を治してくれます。また、毒を放置すると加護が削られていくので、毒に侵されているなら早めに飲むことをオススメします」
それぞれのアイテムの効果を解説すると、テーブルに3つ何か置きはじめた。
「これが『ポーション』『マジックポーション』『解毒薬』です」
どれも200mlほどありそうな大きさだ。回復アイテムでも一気に飲むのは難しそうだ。
こんな感じで今日の授業は終わった。