77話 魔王軍活動開始?(情報)
窓から入る光で目を覚ます。
「ん……今日は暑いな……」
ジメジメとしていて、蒸し暑く感じる朝であった。今日もギルドでクエストを受けるために、布団を片付けて着替える。
準備も終わり部屋を出ると、扉に板のようなものが付いていて『この板を持って、受付まで来てください』と大きく書かれていた。
俺は板を扉から外して受付まで行くと、箱だけが置いてあるだけで誰もいなかった。
「……そうだった、確か受付に置いてあるこの箱を押すと来るんだったよね?」
俺は箱を上から押してみると急に青い光を出した。すると、部屋の扉が1つ開き、中から店主が出てくる。
「これはお客様、今日はどのようなご用件で?」
笑顔で対応する店主に板が付いていたことを説明した。
「こちらは、お部屋の貸し出しの期限が過ぎた所に付ける板です。お客様のお部屋を確認したいので、板を渡していただけますか?」
俺が板を渡すと、店主は板の裏を見る。そこには番号が書いてあり、おそらく俺が使っていた部屋の番号だろう。
「確認が終わりました。1週間のご利用ありがとうございました。もしお客様がよろしければ、お部屋の貸し出しを延長しますが、どうしますか?」
「まだここに住んでもいいってことですか?」
「はい、1泊100Gかかりますがどうしますか? それとも他のお部屋に変えますか?」
俺はGが入った袋の中身を見る。まだまだ使っても大丈夫そうなほどお金が入っているのと、クエストでもらえる報酬が多くなってきたことを考えて、答えを決めた。
「んー、同じ部屋を1週間分お願いできますか?」
「ありがとうございます。1週間ですと700Gになります。もしよろしければ、ご一緒に朝食付きをお付けしませんか? 1泊に付き50Gですので、1週間分ですと350Gで朝食をご用意いたします。」
「宿代とご飯代で合計1050Gか……じゃあ朝食もお願いします」
「ありがとうございます」
俺は店主に1050Gを払い食堂に向かって朝食をとることにした。食堂に向かう間、店主は俺が見えなくなるまで笑顔で対応してくれた。
■
朝食を食べ終わりギルドへ向かう、何やらギルドの中は騒がしくなっていた。中に入ると、かなり大人数で騒いでいる。その中にこんな言葉が聞こえてきた。
「魔王軍が動き出した!」
魔王軍、ナーゲさんから事前に話しを聞いていたから焦りはしなかったが驚いている。まさか話しを聞いて1日で来るなんて思ってもみなかった。
「何だこの騒ぎは? あ、シンじゃん。おーい!」
「リク!」
今来たであろうリクが俺を見つけて手を振って呼ぶ。俺はリクの方へ向かって行った。
「で、この騒ぎは何なの?」
「『魔王軍が動き出した』ってさっき聞いたけど、俺も詳しいことは分からないんだ」
そんなことを話していると、騒がしかったギルドが少し静かになった。冒険者たちが壁になって見えにくいが、金髪の何かが動いているのが見える。
2階に続く階段を上る後ろ姿は、ここのギルド長をやっているドラコニスさんだ。
ドラコニスさんが2階の手すり付近に顔を出すと「静かに」と力強く言う。騒がしいかったギルドが一気に静かになった。
「みなさんも知っていると思いますが、魔王軍が活動を開始したという噂が流れています。しかし、これを嘘と呼ぶには難しいと判断する情報も届いています。今回魔王軍らしき集団に攻撃された村があり、被害にあった村は、ここから北にあるキッタ村です。その村にいた冒険者たちにより死者は1人も出ませんでしたが、魔物をリーダーらしきものが人語を話していたとの報告があります」
静かになったはずのギルドが少し騒がしくなり、冒険者たちも同様を隠せないようだ。
「魔王軍の特徴の1つに、幹部クラス以上の魔物は人語を理解し話すことのできる魔物というのがあります。また、中央大陸では比較的に魔素が濃い北側に現れた。これも魔王軍の特徴です。この2つの特徴から魔王軍活動開始として考えても良いですが、我々ギルドはもう少し情報が欲しいです。なので……」
ドラコニスさんが指を鳴らすと、1階にいたギルド職員が車輪の付いた簡易的な掲示板を運んできた。
「☆2~☆3の下位冒険者は、こちらの簡易的掲示板のクエストを優先してください。☆4~☆6の上位冒険者は、上位クエストにキッタ村付近のクエストを作りましたので、そちらを優先してください。それと、一部冒険者には緊急クエストを出しますので。呼ばれたら来てください。では話しは以上です。みなさんよろしくお願いします」
ドラコニスさんは俺たち冒険者に頭を下げると、2階の奥の方に消えて見えなくなってしまった。
「こうしちゃいられねぇ! 今すぐクエストやるぞ!」
「「「おぉぉ!!!」」」
冒険者たちはやる気を出し、掲示板には人が集まり、クエストをどんどん受注していく。
「冒険者が多すぎてクエスト取れそうにないね……」
「そうだな、いったん外に出て騒ぎが収まるまで待っているか」
俺とリクはギルドから出て時間を潰す、ギルドからはぞろぞろと冒険者が出ていき、街の外に向かって行った。
「そろそろ静かになったころかな?」
「多分な……ってあれはソラやアオたちじゃないか、おーい!」
街の外に向かう冒険者たちとは反対に、ギルドに向かって歩き出す冒険者もいる。その中に、リクのパーティーのソラとカイトと並んで、アオとハクとユカリがいた。
仲良さそうに話していたみたいだったけど、リクの声を聞いてこちらに手を振ってくれた。
「シンくんおはよう、なんだか今日は冒険者が多いみたいだけど何かあったの?」
今来たばかりのアオたちにも魔王軍の話しを説明した。
「……なるほど魔王軍か」
「なんだか怖いね……」
「私たちは大丈夫なのでしょうか」
ハクは落ち着いているようだが、アオとユカリは不安そうにしていた。
「俺たちにできることは上位冒険者たちのサポートだけだ、魔王軍と戦うことなんてほとんどないさ」
「そうだね、俺たちの実力じゃ、下っ端の魔物は倒せても幹部クラス以上の魔物にはやられてしまうだろう。だったら、上位冒険者たちが戦ってくれている間に、情報を集めたり、アイテムの素材を取ってきたりして、貢献しなきゃね」
ソラもカイトも俺たちより強いはずなのに、それでも魔王軍には勝てないと言っている。それほどまでに魔王軍は強いのだろう。
「俺たちが話している間に冒険者が減ってきたから、そろそろクエスト選びに行こうぜ!」
リクの言葉に俺たちは頷き、再びギルドの中へと入っていった。
ギルドの中はかなり冒険者の数が減っていて、俺たち以外だと6人しか1階にいなかった。そのうちの3人は女性だけのパーティーみたいで、クエストを受注してすぐにクエストに行ってしまった。
残った3人は男性1人と女性2人のパーティーのようだ。どこかで見たことあるような……
「あ、ザイゲンさんとイラミさん?」
「ん? あぁ君は確か……えっと……誰だったかな? 一緒にクエストに行ったことは思い出したんだが、名前が出てこない」
ザイゲンさんは俺の名前を忘れているようだ、会ったのも数日前だし、あれが初めての出会いだからしょうがない。イラミさんも唸りながら思い出そうとしている。
「んー…………! そうだ、シン! シンよ、思い出したわ!」
「そうだ、君はシンだったね。いやぁすっかり忘れてしまっていたよ」
「ふふん、私に感謝しなさいよザイゲン!」
ザイゲンの背中をバンバン叩いてアピールをするイラミ。
「……誰?」
「コカがクエストに来られなくなった代わりに一緒にクエスト行ってくれた人よ」
「私の……変わり?」
首をちょこんと傾けるコカという女性。見た目はおっとりとした優しい顔つきに、黒髪ロングのストレートで腰くらいまで髪が長かった。武器を持っているようには見えないが、ローブを着ているので魔法を多用するのだろう。ローブの隙間からチラッと見える足はムチムチしていて柔らかそうだった。
「シンの知り合いか?」
「うん、1回だけ一緒にクエスト行ったことある人たちだよ」
俺がリクに説明しているとザイゲンが俺たちに話しかけてきた。
「なぁ、良かったら俺たちとクエストに行かないか? 俺たち3人とも☆3冒険者だから、君たちを守りながらでもクエストはできるぞ?」
「だとさリク、カイト。俺たちを守りながらクエストができるみたいらしいぜ」
「守られるなんて久々だし良いんじゃない?」
「そういうことじゃないよリク、僕たちは舐められているってソラは言いたいのさ」
☆3のリクたちが、同じ☆3のザイゲンたちに守ってやるなんて言われたら舐められていると解釈してしまうのも仕方のないことだろう。
「まぁまぁ落ち着いてよみんな、ところでクエストって何やるんですか?」
「あぁそれはだな…………」
ザイゲンが掲示板に貼ってあるクエストを指差した。
今日からまた1週間宿で過ごせるようになった。
魔王軍が活動開始しているかもしれないので、冒険者はそれらに関係するクエストを優先して受けるようだ。
リクたちアオたちザイゲンたちと再会して、みんなで同じクエストを受けるみたいだ、
その内容は果たして……
新キャラ紹介
・コカ
見た目はおっとりとした優しい顔つきに、黒髪ロングのストレートで腰くらいまで髪が長い。
武器を持っておらず、魔法を使い攻撃をする。服はローブを着ていて、
ローブの隙間からチラッと見える足はムチムチしていて柔らかそう。




