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76話 ☆2『アルンの洞窟へ運搬』⑥(帰還)

「ここが団長のいる建物だな」


「さっきの食堂に比べると小さいんですね」



 この階の中心に団長さんの使う建物があった。入り口には扉は無く、外からでも中を覗くことができた。俺たちが中に入ると、イスやテーブルがあり、外からじゃ見えなかった所に扉があった。


 その扉には『団長室』と書かれた板が付けてあり、ノックをしてナーゲさんと俺は部屋に入っていく。



「貴方たちは何の用でここに?」



 眼鏡をかけた男性が一瞬こちらを見ると、テーブルの上にある書類に目を戻して、作業を進めながらそう聞いてきた。


 ナーゲさんは背負っていた荷物をテーブルに置く。



「団長、俺たちはこの荷物を届けに来たんだ」


「……中身を確認しますね」



 団長さんが荷物を開けると、中からはたくさんの魔法石が青白く輝いていた。そのうちの1つを手に取り、じっくり観察をしている。



「今回も良い魔法石をギルドは用意してくれたのですね、そちらの方の荷物は何でしょう?」



 俺が背負っている荷物もテーブルに置き、中身を確認する。中に入っていたのは袋詰めされた何かがいくつもあり、袋を開くと種が入っていた。



「ニンジンにタマネギ、カボチャにジャガイモの種ですか。下の階の団長が、畑で新しい食べ物を育てたがっていたので助かります。では少々お待ちを……」



 団長さんは荷物に入っていた魔法石を別の箱に入れ、種が入った袋を全て荷物から取りだり、俺たちが背負ってきた荷物は中身が空になった。そして、紙に何かを書きもむと、空になった荷物に紙を入れた。



「クエストお疲れ様です、先ほどの紙はクエストクリアした証明になるので、荷物ごとギルドに渡してくださいね。また機会があればクエストよろしくお願いします。もちろん、クエスト以外で来ることも歓迎しますよ」



 こうして俺たちは荷物を背負って団長さんの所から離れた。






「それじゃあ帰るか! シン」


「え? 名前……ギルドに着くまでクエストクリアになっていませんよ」



 ナーゲさんが俺の名前を呼んでくれるのはクエストクリアしたらと言っていたので、俺は驚いてしまった。



「あとは帰るだけだからクリアしたようなもんだろ、行くぞシン」


「は、はい!」



 俺たちは『9』と数字が書かれた壁の前に着いた。



「もしかして来た道を戻る感じですか?」


「当たり前だろ?」


「魔物はもちろん出ませんよね?」


「ボスと戦わないだけマシだろ?」


「やっぱり魔物が出るんじゃないですか!」



 そう言っている間に、ナーゲさんは階段を出現させ進んでいく。



「そんな所でもたもたしていていいのか? 俺に付いて来ないと帰れなくなるぞ」


「今行きます!」






 ―9階―




「ガウッ!」「ガウッ!」「ガウッ!」


「わあぁぁぁ!」


「ふん!」


「ガッ……」「グッ……」




 ―8階―




「触手がぁ!」


「そのまま7階に行けぇ」




 ―7階―




「今度は最初から縦に切ってやるよ!」


「ウッドォを倒した所に『8』の数字が出てきた……」


「6階に行く階段最初からあること忘れていたぜ!」




 ―6階―




「ス……ラ……」


「次はモンスターハウスだから気をつけろよ」




 ―5階―




「ガッ……」「ゴッ……」「ス……ラ……」


「ここを突破できたから、あとは楽だな」




 ―4階―




「ガウッ!」


「ふん!」


「分かれ道みたいですね? どちらに進みますか?」


「今度は右行ってみるか」




「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」


「そうだった! 帰りは反対なんだから、右を選んだら来た道と同じになっちゃうんだった!」


「まぁ良いじゃねぇか、こっちの方が経験値稼げるしよ」




 ―3階―




「ゴッ……」「ス……ラ……」


「もうそろそろで地上だ!」




 ―2階―




「スラ!?」「ス!?…………」


「スライムを両手で掴んで、もう1体のスライムに投げて倒しちゃった」




 ―1階―




「スラ!」


「俺も殴ってスライムを……うわぁ痛ぇ!」


「スラ!」


「シンの力じゃまだ無理だ、ふん!」


「ス……ラ……」






 ―地上―






「地上は雨が降っているんだったな、レインコートで濡れないようにするぞ」



 ナーゲさんと俺は洞窟内でレインコートを着て外に出た。



「無事に帰ってこられましたか!」


「ささ、どうぞお通りください!」



 アルンの洞窟の門番をしている兵士も、入るときは厳しい厳しかったのに、出ていくときは優しくしてくれた。



「門番の兄ちゃん、アルンに向かう馬車はいつ来るんだ?」


「はい! もう少しお待ちいただければ来るかと思いますが……あっ! 今こちらに向かっているのが見えます!」



 門番の人が指差す方向を見ると、遠くの方に馬車がこちらに向かってきているのが見えた。



「何!? 丁度いいタイミングだったぜ。シン、あの馬車が着いたらすぐ乗るぞ」


「分かりました! もう少し遅れていたら、馬車が行ってしまった後になっていたんですね……」

「危なかったな」



 馬車が到着して乗っていた人を降ろし終わり、俺たちが乗り込む。すぐには出発しないようで、10分ほど馬を休ませてからアルンの街に向かうようだ。


 俺たちは待っている間に、おまけでもらった食堂の卵サンドパンを食べ、時間を潰した。






「それでは出発いたします」



 俺たち以外にも数人馬車に乗り込み、馬車はアルンの街に向かった。






 ■






「到着しました」



 俺らより後に乗ってきた人たちは(ゴールド)を払って降りて、俺たちは荷物を見せることで帰りも無料で降りることができた。


 ギルドに向かって真っすぐ進んでいく。雨で人が少ないから、道の真ん中を進んでも誰にもぶつかりそうにならない。




 ギルドに到着してクエストの報告に向かう。




「ナーゲさんから報告していいですよ」


「俺は2階で報告することになっているからここでお別れだ、今度パーティー組むときは俺をサポートできるくらい強くなっとけよ」


「はい!」


「またな」



 ナーゲさんはそう言って2階に続く階段を上っていった。



「ハンナさん、クエストクリアしました!」


「シンさんクエストお疲れ様です、今確認しますね…………はい、確かにクエストクリア確認しました。こちらが報酬金となります。ギルドカードにもGP(ギルドポイント)を入れときました」



 俺は300(ゴールド)入った袋を受け取り、ギルドカードにはそれぞれ900GP(ギルドポイント)が追加された。




 報酬を受け取ったので、宿屋の自分の部屋に帰る。




「クエスト1回で300(ゴールド)か……いっぱいもらえて嬉しいな。明日からもクエスト頑張って稼ぐぞぉ!」



 こうして俺は長い1日を終えて眠りについた。

ナーゲさんの荷物は魔法石で、俺の荷物は食べ物の種だった。


帰るときは行きより早いペースで進み地上に帰還。


誰かと報酬を分けない(ほし)2クエストは、今までもらってきた報酬の倍はあって嬉しかった。

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