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72話 ☆2『アルンの洞窟へ運搬』②(魔刃)

 洞窟内を歩き始めて、外にいた兵士たちも見えなくなってきた。俺がイメージしていた洞窟と違うことに気が付く。



「洞窟の中なのに明るい」



 壁や床や天井の色々な所が光っていて、奥の方まで見渡すことができるくらい明るかった。



「壁には魔石が埋まっていて、それが魔素と反応し光っている。明るい理由はそんな感じだな、地上に比べれば見える範囲は狭いが、そこまで遠くを見る必要もないからこのくらいの明るさがあれば十分」



 ナーゲさんが俺の疑問に答えつつどんどん前へ進んでいく、俺はその背中を追いかけるように付いていった。


 洞窟に入ってから数分歩き続けて、目の前には数字の『1』という模様の入った壁があった。



「着いたぜ、ここから先がアルンの洞窟の1階だ、下れば魔物が出るようになる」


「着いたって、目の前には壁しかないですよ……階段なんてどこに……」


「聞くより見た方が早い」


「っ! 壁が消えた!」



 ナーゲさんが模様の入った壁に手を当てると、壁はゴゴゴっと音を鳴らして魔素となり消えていった。そして、壁の向こうには下に向かう階段があった。



「さぁ行くぞ少年」



 ナーゲさんは驚いて固まっている俺を気にすることなく先に進んでいった。俺は急いで後を付いていく。






 ―1階―






「着いたぜ、ここが1階だ」



 階段を降り、平坦な地面が周りに広がっていた。



「うっ……なんだこの気持ちの悪い感覚は……」


「その気持ち悪い感覚は魔素の影響だな、ここは魔素だらけだから無理もない。地上じゃ魔物や木や石などが魔素をある程度吸ってくれているおかげで、空気中が魔素だらけってことがない。慣れればここでも地上と同じように動けるさ」



 俺が呼吸をするたびに苦しくなってくるが、どんどん慣れてきて、洞窟に入る前より気分が良くなってきた。



「慣れてきたみたいだし、そろそろ動くぞ」


「はい」



 ナーゲさんの後に付いていき洞窟内を移動する、しばらく歩いていると、横にある壁がどんどん広がって、通路というより大きな部屋みたいな所に出た。


 奥の方には『2』という模様が入った壁が見えていた。



「あ! あれって階段のある壁ですよね、行きましょう!」


「待て、そう簡単に通してくれないみたいだぜ」



 ナーゲさんの見つめる先に魔素が集まっていた。集まった魔素が形を作り出して、俺たちの目の前にスライムが誕生した。



「っ! 魔物が急に現れた!」


「スラ!」



 スライムは俺たちを見つけると体当たりをする構えを見せてきた。



「スライムは俺らが敵意を出さなきゃ襲ってこないはずなのに、なんで俺たちを攻撃しようなんて!」


「ここではどんな魔物も狂暴化している、地上では中立のスライムだろうと、他の魔物と同じく襲ってくるのさ」


「スラ!」



 スライムが体当たりをしてくる、狙いはナーゲさんのようだ。



「ふん!」



 ビチャ! という音が聞こえる。


 ナーゲさんはスライムの体当たりに合わせて、スライムの身体を殴った。スライムの身体はナーゲさんの拳で貫かれていて、ビチャ! という音は、スライムの肉片が地面に打ち付けられる音だと分かった。


 スライムは経験値となりナーゲさんと俺に入ってくる。魔石は小さな音を鳴らして地面に落ちた。



「ス……スライムをたった1発のパンチだけで!?」


「スライムごときに武器を使うまでもないな」



 ナーゲさんはスライムを倒した後、落ちた魔石を拾うことなく『2』の模様が入った壁に向かっていく。



「ナーゲさん、魔石拾わないんですか!?」


「スライム程度の魔石ならいらないな。俺は拾わないから、欲しかったら自分で拾いな……さて、次の階に行くぞ」



 ナーゲさんは壁を消して階段を降りて行った。俺は魔石を袋にしまって後を付いていく。






 ―2階―






「スラ!」


「ふん!」



 2階では通路に最初からスライムがいていきなり襲われた。それをナーゲさんは拳1発だけで倒していく。


 俺は何もしていないのに、経験値と魔石をもらっている状態だった。


 横にある壁がどんどん広がっていく、また大きな部屋みたいな所に出て、奥の方には『3』という模様が入った壁が見えていた。


 なんとなくこの洞窟のパターンが分かってきた。


 階段を下りたら通路を歩き、この広い部屋の奥に次の階段がある。そしてそこを通ろうとすると……



「スラ!」「スラ!」


「っ! やっぱり魔物が生まれた! しかも今度は2体も」



 予想した通り、階段に繋がるこの場所には必ず魔物が生まれるようだ。


 スライムに体当たりされる前にナーゲさんが動く。



「ふん! ふん!」



 跳ねて移動するスライムに左右の拳で攻撃する。たったそれだけでスライムは経験値へと変わっていった。



「魔石拾うならさっさとしろよー」



 俺が2体と同時に戦った時はあんなに苦労したのに、ナーゲさんは本当にスライム程度をなんとも思っていないように倒していく。


 いったい何者なんだ……






 ―3階―






「ナーゲさんめちゃくちゃ強いんですね」


「ん? あぁそうだな、なんてったって俺は(ほし)4冒険者だからな、10階くらいの魔物なら負ける気しねぇよ」


(ほし)4冒険者!? なるほど、強い理由が分かりました。よくここの洞窟に来るんですか?」



 俺がそう聞くと頬に汗を流し考え込んでいる、そんなに答えにくい質問だったのだろうか?



「…………いや、今回で2回目だ。だから、少年よりちょっとこの洞窟に詳しいだけで細かいことは分かっていない、知りたきゃ帰ってから自分で調べるんだぞ」



 そう言うと、ちょうどスライム2体が俺たちの前に現れる。この2体も、ナーゲさんの拳で消えていった。


 歩いていると壁が徐々に広がってくる、この階のゴールが近くなっていた。



「スラ!」「スラ!」「ゴブッ!」



 3階ではスライム2体とゴブリン1体の合計3体が生まれた。



「さすがに殴るの飽きてきたし、そろそろ武器でも使うか……」



 ナーゲさんが腰から取り出したのは、ナイフのような形をした武器のはずなのに、刃が付いていなかった。



「ナーゲさん、それ刃付いてないですよ! どうやって戦うんですか!?」


「心配すんな少年、この武器は俺用に作ってもらった武器だからよ」



 ナーゲさんが武器に魔力を込めると、魔力が刃の形に変わっていく。そのナイフをナーゲさんが振ると、魔力の刃だけが無くなっていた。



「ゴ……ブ……」



 ゴブリンがその場で倒れ経験値となって消えていく。完全に消える前の額には穴が開いていた。



「スラ! ス……」「ス……ラ……」



 スライムも何が起こったのかわからず騒いでいるが、スライムも声を出さなくなる。今の一瞬でスライム2体にも穴が開き経験値となって消えていった。



「な……なに、その武器!?」


「これか? これは魔力を刃に変えて投げられる武器だな。刃だけ飛ばせるからナイフを出さなくてもすぐに攻撃できるのが特徴の武器さ」



 ナーゲさんは腰からもう1本のナイフを出す。それにはちゃんと刃が付いていた。



「こっちが普段使っている刃が付いた投げナイフだ。これはナイフごと投げないといけないから連射もできないし回収が大変。その代わり威力は保証する」



 俺が唖然としている間にナーゲさんは壁を消して次の階へ行こうとしていた。



「先に行っているからな、魔石拾ってさっさと来いよ」



 今日は驚かされるばかりだ。魔力を刃に変えて攻撃、俺は剣に魔力を纏わせることはやったが、ここまで上手く操れなかったし、それどころか遠くに飛ばすことすらできなかった。



(ほし)4冒険者って凄いんだな!」



 俺は魔石を袋に詰めて後を追いかけた。

アルンの洞窟は、洞窟内は壁や床や天井が魔素によって光っていて、模様のある壁を触ると壁は消え、階段が現れる不思議な所だった。


ナーゲさんは(ほし)4冒険者で、魔力の刃を作り、それを飛ばして攻撃をしていた。


まだ3階なのにスライム2体にゴブリン1体と同時戦闘、もっと下に行くとどれだけ強い敵が待っているのだろうか

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