表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/248

70話 ☆1『スライム討伐』③(昇格)

「今日二度目の草原だ……今の俺の状態を確認しよう」



 傷はポーションを使い完全に消え、加護も戻ってきている。魔力は使い切ってもう魔法は使えない。



「今日はもう魔法が使えないから、それを考えて行動しないとな」



 真上から照りつける太陽に向かって剣を突きつけ気合を入れる。



「さぁ、スライムを探すぞ!」



 朝と同じように、草を刈りながら前へ進んだ。






 ■






「……スライムがいるけど2体いるな、違う所探さなきゃ……これで3回目だよ……」



 額の汗を拭いため息を吐く。1体しかいないスライムを探しているが、なかなか見つからない。いたとしても見える範囲に別のスライムもいて、戦えば1対複数は避けられそうもなかった。


 理由はこの暑さにあるだろう。クエストに行くときは朝ばかりだったから気温も穏やかだったが、今は真上に太陽がある昼、草原の気温は高くなり、長居するには向かない場所になっていた。


 そんな状態だからか、スライムたちも草原から離れ、森の入り口にある木の陰で身を潜ませている。そこに、草原にいたスライムが集まっているので、入り口付近にはスライムが多かった。



「もう森の中に入って隠れながら探した方が良さそうだな」



 森の中に入って木の陰に行くと、涼しい風が身体を冷やしてくれる。



「涼しい……これじゃあスライムたちが熱い草原にいるわけないよな。ここじゃあスライムが多いから、もっと奥を探してみるか」



 他の魔物と出会わないように気を付けながら、森の奥へと進んでいく。






 涼しい風が吹く方向に歩き続けると光が見えてくる。その先には大きな湖があった。



「森の中に湖なんてあったのか!」



 ここの湖には人の出入りがあるらしく、近くには小屋があり、木製の船着き場とイカダがあった。


 湖は綺麗で、中を覗き込むと、浅い所には空気草が生えていて、深い所には大きいクラゲのような何かが泳いでいるのが見えた。


 更に深い所にも何かいるみたいだが、暗くなっていて形も大きさもよく分からなかった。




「グルァァァ!」




 獣の鳴き声が聞こえてくる。周りを見ると、湖の向こう側に赤い色の熊が俺に向かって吠えていた。



「あいつは確かベアードの通常個体! あいつがいるってことは、俺はかなり奥の方まで進んじゃったってことだな……」



 ベアードは辺りを見渡して通れる所を探しているようだが、湖が広いおかげで、俺の所までたどり着く道を見つけられないようだった。


 しかし、そんなことでは諦めないのか、湖に飛び込み、泳いでこちらに来ようとしていた。



「うあっ!? こっちに来る、逃げなきゃ!」



 呑気に眺めていた俺は、慌てて逃げようとすると、ベアードの様子がおかしいことに気が付いた。



「グルァァァ!」



 ベアードが湖に入って少し泳いだところで、触手に捕まり、その場で暴れていた。


 触手はどんどん増え、ベアードの抵抗を抑え、湖に引きずりこんでしまった。



「ここは俺の来て良い場所じゃないな……」



 戦いとも言えない、一方的なやられ方を見てレベルの違いを理解し、逃げるように湖から離れた。






 森の中を走り続けて、草むらに入り辺りを警戒する。



「はぁ……はぁ……ここまでくれば、よく見る森の風景と同じだ。助かったぁ」



 安心したからか、急に疲れが現れ座り込む。すると、草むらの陰に青色の何かが光った。



「あ、スライムだ。しかも怪我をしている」



 怪我をしたスライムは草むらに身を隠して寝ているようだが、たまたま俺が座った位置からなら見えていた。



「もしかしたら、朝に戦って逃げられたスライムかな? とにかく寝ている今がチャンスだ」



 俺は剣を抜き、足音を立てずにゆっくりと近づいて剣を突き刺した。



「スラ!?」



 スライムは攻撃されたことで目が覚める。刺した剣を抜くと血が一気に噴き出した。元々弱っていたからか、反撃をしてこないので連続で攻撃する。



「えい、えい、えい!」


「ス……ラ……」



 スライムは動かなくなり、経験値が俺の中に入ってきた。



「これで、クエストクリアだ! あぁ、大変だった……」



 少し休んだ後、倒したスライムを持ち、森を抜けた。






 森を抜け草原に出ると、ギルド職員がリュックや袋を持って立っていた。



「クエストお疲れ様です。魔物を運ぶのは大変でしょう。そのスライムは私がギルドまで運びます」


「良いんですか!」


「もちろんです、それが我々ギルド職員の仕事の一部ですから」


「分かりました、それじゃあお願いします」



 俺はギルド職員にスライムを渡し、街に帰った。






 ■■






 ギルドに着くと、早速ハンナさんの所に向かいクエストクリアの報告をする。



「クエストお疲れ様でした。シンさんが倒したスライムは、3体回収されたことをギルド職員が確認しています。こちらが報酬金となります。ギルドカードにもGP(ギルドポイント)を入れときました。新しいギルドカードをご用意しているので少々お待ちください」



 報酬金の100(ゴールド)を受け取り、あとは新しいギルドカードと200GP(ギルドポイント)を受け取るだけだ。



「そしてこちらが新しいギルドカードです! シンさん、(ほし)2冒険者にランクアップおめでとうございます!」


「ありがとうございます!」



 受け取ったギルドカードには少し装飾がされていて、冒険者の欄には(ほし)が2つ付いていた。



「シンくん、ランクアップおめでとう。私の出したクエストを見事達成したみたいだね」


「ドラコニスさん!」



 ドラコニスさんは軽く拍手をしながら2階から降りてきた。



「これで冒険者として認めてもらえますよね?」


「もちろん、シンくんは普通の冒険者と同じだけの実力があり、(ほし)2になったことを認めましょう!」


「やったぁ!」



 俺がガッツポーズをして喜んでいると、何やらまだ話があるらしい。



「実はシンくんには明日受けてもらいたいクエストがあるのですが、受けてくれますか?」


「良いですけど、いったいどんなクエスト何ですか?」


「ある場所にモノを運んでもらいたいのです。詳しくは明日説明しますので、朝の9時までには来てくださいね。では、今日は大変だったと聞きます。部屋に帰ってゆっくり休んでください」


「分かりました、それではまた明日お願いします!」



 俺は遅い昼食を済ませて部屋戻り、ギルドカードをニヤニヤと眺めつつ、次の日に備えて身体と心を休めた。

今日は、森で湖を見つけたり、ベアードが簡単に触手に負けてしまったりとあったが、

スライム3体との戦いを、苦戦をしながらも勝利することができた。

これで俺はドラコニスさんにも認められ、(ほし)2の冒険者となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ