69話 ☆1『スライム討伐』②(1対2)
草を刈りながらの進んでいると、揺れる草の隙間から青い何かが見えた。
「スライムだ、ただ2体いるな……スライムA、Bって感じかな」
ここは諦めて別の所を探そうと思ったが、スライムの攻撃にも耐えられるようになっているので、1対2で挑んでみることにした。
「えい!」
「スラ!」
後ろを向いているスライムAに剣を振り下ろす。攻撃を当てられたスライムAは血を流しながら跳ねてその場から離れる。スライムBは、いきなりのことで驚きの表情をしたまま固まっていた。
「スラ! スラ!」「スラ!」
血を流したスライムAが俺の存在に気が付き威嚇している、それに釣られて、固まっていたスライムBも正気を取り戻し、こちらも威嚇を始めた。
そして、2体同時に体当たりをしてくる。ガードだと防ぎきれないので横に避けた。
スライムBは、すぐに体勢を直して、体当たりをしてくる。それをガードして、反撃しようとしたところで、脇腹に衝撃が走る。
スライムAが横から体当たりしてきたようだ。お腹をかき回されるような痛みだったが、加護のおかげで痛みは一瞬で消える。
「ガードしている間に、もう1体のスライムに攻撃される、どうするか……っ!」
スライムAとBが交互に体当たりをしてくる、ガードをしていたら横から攻撃をもらうので、避けることに専念していた。
スライムは俺が避けた後、地面に着地してから俺のいる方を向いて、体当たりをしてくる。
「避けてばっかりじゃ勝てない! 何か反撃する方法はないのか!? ぐはっ!」
スライムAの体当たりを剣でガードしながらダメージを少し与えるが、スライムBの攻撃にはガードが間に合わず、お腹に直撃を食らう。このままではスライムを倒す前に俺がやられる。
一旦スライムたちから離れ、作戦を考える。1体ならガードしてからの反撃や、避けてからの反撃などの選択肢があったが、2体いることで、その隙を突くことができなかった。
考えるほど、今の俺には厳しいという答えが出てくる。
「こんなことなら、もっと強くなってから2対1に挑むべきだったな……いけない、反省は帰ってからだ! 今はとにかくこの場をなんとかしないと!」
剣をしっかり握りしめ、気合を込める。
「スラ!」「スラ!」
スライムたちは一斉に体当たりをしてくる、俺とスライムの距離が遠かったので、当たらないよう横に大きく避ける。スライムは地面に着地してから俺の方を向いて、体当たりをしてくる。
「体当たりの前に必ず俺の方を向くな、試してみるか……」
俺はスライムたちの周りを走り始める。するとスライムたちは俺の方に合わせて身体を回している。俺が止まると、スライムの身体は少しへこみ、体当たりをしてきた。
俺は横に走って体当たりを避ける。
「やっぱりそうだ、スライムの体当たりは、向いている方向にしか攻撃できないみたいだ。それに、体当たりの前に溜めがいるのか、少しへこむ動きもある」
スライムの動きの特徴がだんだん分かってきた。俺がスライムの周りを移動すれば、体当たりをするために俺の方を向く。つまり、その間は攻撃をされないということだ。
周りながら近づき、体当たりができないようにしながら隙を見て攻撃をする。
「スラ!」
思った通り、俺が移動している間は体当たりをすることができないみたいだ。しかし、スライムに攻撃が当たったことで、スライムの位置が変わってしまい、2体のスライムの間に距離ができてしまった。
周りを走っているつもりでも、離れているスライムには体当たりに十分な角度らしく、体当たりをしてくる。
スライムAは俺の横を通り過ぎていった。もし俺が途中で止まっていれば、当たっていただろう。そして、またスライムの位置が変わり、移動する場所も長さも変わった。
それでも走ることをやめない、体当たりされても移動しているおかげで、体当たりが不発に終わる。
「おらぁ!」
「スラ!」
「こっちも!」
「スラ!」
「『スマッシュ』!」
避けて攻撃して離れてと何度も繰り返し、避けられない体当たりが来たら省略詠唱の『スマッシュ』で攻撃を中断させる。
少しずつダメージを与えているが、ずっと走っているので疲れが溜まってきていた。
体当たりを避けようとしたが、反応が遅れて避けられる距離じゃなくなった。
「『スマッシュ』! あれ!? 出な、ぐわっ!」
『スマッシュ』を使おうとしたが、魔力がほとんど手に集まらず、発動することができなかった。それにより、スライムの体当たりを止めることができなくて、身体が吹き飛ばされ地面に倒れる。
「いってぇ! ……はっ!」
倒れている間もスライムからは攻撃される。俺は転がりながらもその場から移動して避けた。剣を支えにして立ち上がり、体勢を立て直す。
「魔力切れか……省略詠唱だと今の俺には3発が限界なのか」
ここからは魔法でスライムの攻撃を止めることはできない、スライムたちもダメージを受けているが、俺が受けるダメージの方が大きい。
今も攻撃を避けつつ剣で切っては離れる、これを繰り返すが、背中や脇腹に体当たりされたりしていた。
このまま戦い続ければ俺が負ける、そう思っていたところでスライムたちに変化が起きた。
「……逃げた?」
スライムAとBはそれぞれ反対の方向に逃げ始めた。
「待てぇ!」
バラバラに逃げてくれたおかげで、1対1で戦うことができる。このチャンスを逃さないために、スライムAの方を追いかけた。
跳ねながら逃げるスライムを後ろから切る。スライムも覚悟を決めたのか、逃げることをやめ体当たりをしてくる。
体当たりに合わせて剣でカウンターをする。手に衝撃が伝わってくるが、その分スライムに与えるダメージも大きくなる。
「スラ……」
カウンターで消耗しているようだ、上下に揺れているだけで、その場から動こうとしない。目線も俺に合っていなかった。
俺は振りかぶって攻撃をしようと突進していったら、今度はスライムがカウンターをしてきた。
「っ!」
タイミングがズレたことで、剣ではなく俺の腕がスライムに当たる。スライムの攻撃はそれが最後で、地面に落ちてから身体をビクビク震わせて倒れていた。
「これでトドメだ!」
「ス……ラ…………」
腕の痛みを我慢しながらスライムにトドメを刺し、経験値が入ったことで倒したことを確認する。
「っ! 腕が痛いままだ……加護がなくなったのか……まだ2体しか倒してないけど、一旦街に戻って回復しないと……」
加護も魔力もなくなった今、スライムと戦うのにとても危険な状態だ。俺は他の魔物と会わないように気を付けながら街に帰っていった。
■
街に着くと、俺を見た人たちが「えっ?」と軽く悲鳴に似た声を出すのが聞こえる。
草原にいた時には気が付かなかったが、腕には10センチくらいの紫色の痣ができていて、肌色の腕には目立つ色だった。
ギルドに着くと、ハンナさんが俺を見つけて笑顔で手を振ってくれる。俺が手を振り返すと、痣があるのを見つけたのか、受付から出てきて俺のところまで来てくれた。
「シンさんその腕どうしたんですか!」
「スライムと戦っていたらこうなっちゃって」
「でも無事で良かったです! クエストもクリアしたんですよね」
「いや、それは……まだ1体倒していないんです、でもこれだけダメージを受けたので、街に戻って回復してから、また挑みたいと思っています!」
「そうでしたか、でも引く判断は良かったと思います! 道具屋にポーションが売っているので、それを買って回復すれば、すぐにでも戦いに行けますよ!」
「分かりました、ポーション買ってきます」
ハンナさんのアドバイスを聞いて、ギルド内にある道具屋に向かいポーションをGPで買い、その場で飲んだ。1本飲んだだけで、みるみる痣は無くなっていき、ほとんど目立たなくなっていた。痣のあった場所を押すと痛みがまだあったので、2本目のポーションを買い、それをすぐ飲むと、痣は完全に消えて、加護も復活してきた。
「それじゃあハンナさん、次来るときはクエストクリア期待していてください!」
俺はそう言って、再び草原に向かって行った。
1対2の戦闘をしたら予想以上に苦戦をして、1体しか倒せず、街に帰ることになった。
ポーションで傷や加護を回復して、再びクエストに挑む。




