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64話 ☆2『ゴブリン討伐』③(ボス)

 俺たちが森に入る前に、ハクはアイテムポーチからポーションに似た容器を取り出し、中身を飲んだ。



「ハク、それは何?」


「……これはマジックポーション、魔力を回復させるポーションだ……俺は魔法を多用するから何本か持つようにしている。シンはポーションを飲まなくていいのか?」


「いや、俺はポーションを持ってないんだ、まだ資金に余裕がなくてね……」



 俺が肩を落とし落ち込んでいると、アオやユカリが慰めてくれた。



「あ、そろそろみんなにかけた防御魔法の効果が切れそうだね、かけ直すから待ってて……『アームクルド』!」



 アオが唱えた魔法のおかげで、再び俺たちは何かに包まれるような感覚になった。



「僕が回復魔法を使えていれば、シンくんの加護を回復させられるんだけど、まだ習得していないからポーションで回復してね」


「いいのか? これはアオのポーションなんじゃ……」


「いいのいいの。買ったけどまだ一度も使ったことなかったし、回復魔法を習得したら使わなくなるだろうから、シンくんが使ってよ」


「分かった、ありがとう」



 俺はアオから渡されたポーションを一気に飲み干す、ゴブリンから攻撃を受けて減っていた加護が、戻ってきたような感覚になった。


 ユカリはスタミナ以外そこまで消耗していなかったので、俺たちが回復やら魔法のかけ直しをしている間に、休憩を済ませていた。


 みんなの準備ができたところで森に入ろうとすると……






「!? 何か来るわ!」


「ゴブッ!」


「ゴブリンだ! でも傷ついているぞ」


「……あのゴブリンの傷……もしかして俺の毒で動けなくなっていたやつか?」


「毒は完全に抜けているみたいだよ、またハクくんの毒で弱らせる?」



 もう一度ハクの毒をゴブリンに使えば倒すのは簡単だ、しかしそれではせっかく回復した意味がない。


 ゴブリンをよく見ると、肩で息をしている。毒が抜けたとはいえ、失った体力は戻っていないようだ。


「多分あと少しで倒せると思う、俺がゴブリンのヘイトを買うから、ユカリは背後に回ってトドメを刺して欲しい、アオとハクは、もしもダメだった時の準備をしておいて」



 俺はそう言いゴブリンに突進して剣を振る、ゴブリンは棒でガードしているが、弱っているからか、

 俺との鍔迫り合いは互角になっていた。



「えい!」


「ゴブッ!」



 俺に気を取られている間に、ユカリが背後に回り、ゴブリンの背中を切る。


 ゴブリンは反撃しようとユカリの方に身体を向け、棒を振るが、ユカリは余裕で避ける。


 今度は俺がゴブリンの背中に攻撃をする。しかし、当たっても背中の肉を剣先で軽く押すだけで、ダメージになっていなかった。



「『スマッシュ』のダメージが小さいから薄々分かっていたけど、スライムと比べたら耐久力が高いんだな……っ!」



 今度は俺に向かって、横に薙ぎ払うように棒を振ってくる。俺はそれを剣でガードして耐える。


 俺が耐えている間に、ユカリが剣でゴブリンを刺す。ダメージを受けすぎたゴブリンは、その攻撃で倒れ、経験値となって俺たちに入っていった。






「やったわ! 今のゴブリンはシンくんがヘイトを集めてくれたおかげで攻撃しやすかったですわ」


「ハクが毒で弱らせていたから俺でも耐えられたんだ」


「……確かに俺の毒で弱くなっていたが、ゴブリンを抑えていたのはシンなのは間違いない」


「そうだよシンくん!」


「ふっ……そういうことにしておくよ。ありがとう」



 みんなの優しさを受け取り、照れながらお礼を言う。



「それじゃあそろそろ次のゴブリンを探そう」



 俺はみんなを引き連れ森に入る。ゴブリンの討伐数は4体、あと1体倒せばクエストをクリアできるが、ギルド職員が倒されたゴブリンを回収しているだけで、生きたゴブリンは全然見当たらなかった。



「他の冒険者もこのクエスト受注していたし、もう倒すゴブリンがいないのかな?」



 アオがそんなことを言っているが、今も森のどこからか雄叫びは聞こえている。まだまだゴブリンはいるはずだ。






「ゴガァァァッッッ!」


「!?」






 全身に音の振動が伝わり、身体の自由が利かなくなる。


 ズシンズシンと足音まで響かせている。今俺たちの後ろに強い何かがいるのは確実だ。雄叫びによってすくみ上った身体は徐々に動くようになり、後ろを振り向く。


 そこには、2メートル以上はある大きな身体をしたゴブリンが立っていた。



「これがドン・ゴブリン!」


「あわわぁ……」


「あんなのに勝てる気がしませんわ!」


「……あの大きさじゃ、俺の毒が効き始めるには時間がかかるだろう」



 ドン・ゴブリンの後ろからも、普通のゴブリンが何体も現れ、ますます絶望的な状況になっていた。



「ん? ゴブリンたち、かなり傷ついていないか?」



 よく見ると、血だらけになっていたり、足を引きずっているゴブリンもいた。


 ドン・ゴブリンも右肩から血を流し、右手をだらんとさせている。




「うおぉぉぉ! 逃げるんじゃねぇ!」




 ドン・ゴブリンの後ろからそんな声が聞こえてくる。そんなことを言った茶髪の人は飛び上がり、斧を振り下ろそうと構えていた。



「これでトドメだ! 『アースクラッシュ』!」


「ゴガァ……ガッ…………」



 ドン・ゴブリンの背中に大きな傷を付け、地面に倒れている。


 そして、ドン・ゴブリンから見たこともない量の経験値が溢れ出てきた。経験値は倒した人だけじゃなく、その人の後ろから現れた、濃い青色の髪の人と、淡い緑色の髪の2人にも入っていった。



「俺らがゴブリンに足止めされている間に倒したんだね」


「いいとこ持っていかれちゃったな」


「カイトとソラのおかげで逃げられる前に倒せたぜ……ってまだゴブリンの残党が残っていたか」



 ドン・ゴブリンが倒されたことで、普通のゴブリンたちは戦意を失い放心状態になっていてその場から動かなかった。



「あ、シンくんじゃないか、昨日ぶりだね」


「ん! シンがいるのか! どこだ」


「あそこだよ」


「本当だ! シン、久しぶり! 俺だよ、リクだよ!」


「リ……リク!?」



 どうやらドン・ゴブリンを倒したのはリクのようだった。



「シンと会うのは何か月ぶりだ! アオたちは冒険者になっていたのに、シンだけいないから心配していたんだ」


「リク、そういうのは帰ってからやろう。まずは残ったゴブリンの討伐が先だ」


「分かったよソラ。じゃあシン、ギルドに着いたら色々聞かせてくれよ」



 そうしてリクたちは動かないゴブリンを一方的に攻撃して倒していく。


 それを見ていたハクが慌てて、ゴブリンを倒すことを急いだ。



「……このままじゃリクたちにせっかく楽に倒せるゴブリンを全部倒されてしまう。俺たちもゴブリンと戦うぞ」



 ハクの言葉にクエストのことを思い出した俺たちは、反撃をしてこないゴブリンにひたすら攻撃をして、無事に倒した。これで、クリア条件の5体を討伐することができた。


 俺たちがゴブリンと戦っている間に、リクたちは戦いを終わらせ、ギルド職員の人も集まり、ドン・ゴブリンやゴブリンを回収していった。



「それじゃあクエストも終わったし街に帰ろうぜ!」



 リクの言葉にみんな賛成し、俺たちは街に帰ることになった。






 ■






 街に到着しギルドに向かい、受付にいるハンナさんにクエストクリアの報告をする。



「クエストお疲れ様でした。アオさんたちが倒したゴブリンは、5体回収されたことをギルド職員が確認しています。こちらが報酬金となります。ギルドカードにもGP(ギルドポイント)を入れときました」



 俺たちは100(ゴールド)入った袋を4つ受け取り、ギルドカードにはそれぞれ300GP(ギルドポイント)が追加された。


 俺たちの報告が終わると、今度はリクたちがクエストの報告を始めた。リクたちがもらった報酬は、俺たちのもらった袋より5倍くらい膨らんだ袋を報酬金としてもらっていた。



「よっしゃ、シン! 俺が出すから食堂で騒ぐぞぉ! みんなもおいでよ」


「やれやれだね」


「しょうがないな」



 リクの仲間のカイトとソラという人もくるようだ。



「僕たちも一緒に行こうか」


「そうね、いっぱいお話しがしたいですわ」


「……そうだな」



 アオもユカリもハクもくるようだ、ここで俺が行かないのはおかしいだろう。



「分かった、それじゃあリクに甘えるとするよ」



 こうして俺たちはギルドから出て、騒ぎやすい食堂に向かった。






 今日は初めて討伐のクエストをクリアしたり、

 リクと再会した日だった。

新キャラ紹介


・ソラ

淡い緑色の髪をした男

詳しくは次回やります


技紹介


・『アースクラッシュ』

土属性の強力な攻撃

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