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62話 ☆2『ゴブリン討伐』①(再会)

「ん……朝か、今日は晴れたんだね」



 目が覚めると、窓の外は快晴。昨日はほとんど外を出歩く人はいなかったのに、もう何人かは出歩いているのが窓から見えていた。


 雨が降る気配は無いので、レインコートとレインブーツは部屋に置いていき、朝食を済ませてギルドへ向かった。






「ん? 何か騒がしいぞ」



 ギルドの外からでも騒いでいる音が聞こえてくる。中に入ってみると、掲示板の前に多くの冒険者が群がっていた。



「俺もゴブリンクエストに行くぜ!」


「俺も行く!」


「私たちも一緒にやりましょうか」


「そうね!」



 どうやら掲示板にはゴブリンのクエストが貼られていて、みんながクエストを受けるようだ。


 1人で受注する冒険者もいれば、パーティーを組んで受注する冒険者もいる。気がつけば、掲示板の前にいた冒険者はどんどんクエストに向かい、いなくなっていた。



「僕たちもこのクエスト一緒にやってみようか」


「……そうだな」


「2人と一緒に同じクエストをやるのは久しぶりだわ、楽しみね」



 聞き覚えのある声、見覚えのある後ろ姿の3人が楽しそうに掲示板の前で話していた。



「アオ? ハク? ユカリ?」



 俺の声に反応してこちらを向く3人。顔が見えてやっぱりアオたちだと分かった。



「シンくん、久しぶり!」


「久しぶりですわ、シンくん!」


「アオ! ユカリ!」



 アオとユカリが駆け足で俺の所まで来て嬉しそうに話しかけてくる。ハクも歩いて俺の方に向かって来た。



「……1か月ぶりだな、シン」


「ハクも元気そうで良かったよ」



 こうして3人と再会したことで、冒険者学校にいた頃を思い出していた。それはアオたちも同じで「あの頃は楽しかったね」などと思い出に話で盛り上がっていた。



「あ、そうだ! シンくんも冒険者になったんでしょ? 僕たちと一緒にクエスト行こうよ、あの頃よりも強くなっているから安心だよ」


「私が前衛で戦いますので、シンくんは魔法が使えますので、ハクくんと一緒に中衛から援護してくれれば大丈夫ですわ」


「……俺たちの方に魔物が来ても、俺がシンを守ってやる」


「みんな…………それじゃあ一緒にクエスト行ってみようかな」


「やったぁ! それじゃあさっさとクエスト受注しよう。他の冒険者も同じようなクエストやっているから、ゆっくりしているとクエストクリアできなくなっちゃうかもしれないしね」



 アオの後に続いて受付のハンナさんのところへ向かう。



「このクエストを僕たち4人でお願いします!」


「このクエストですね、分かりました。クエスト内容を確認します」


 ――


 (ほし)2『ゴブリン討伐』


 クリア条件:ゴブリンを5体以上討伐


 報酬金:400(ゴールド) 1200GP(ギルドポイント)


 参加条件:(ほし)1から(ほし)3冒険者1人以上


 ~依頼内容~


 森に潜むドン・ゴブリンを倒しやすくするため、

 取り巻きのゴブリンを討伐せよ。


 ――


「このような内容ですが、クエストを受けますか?」


「みんなはこの内容で大丈夫だよね?」



 ハクとユカリは大丈夫なようだが、俺は大丈夫じゃない。



「ちょっと待って、俺ゴブリンと戦ったことないんだけど!?」


「私たちは何度も倒しているから心配いらないわ」


「……シンが弱いことは知っているが、いつまでも戦わないと強くなれないぞ。危なくなっても俺たちがシンを守れるから、戦ってみたらどうだ?」


「そう……だね。俺の力がどこまで通じるか分からないけど、みんなを信じてやってみるよ」

「決まったようですね、それではクエストを受注します。クエスト頑張ってくださいね」



 こうして俺たちは、ゴブリンを倒すために森に向かった。






 ■






「そろそろ森が近くなってきたね、それじゃあ魔法をかけるよ……『アームクルド』!」



 アオが魔法を唱えると、何かに包まれたような感覚になった。



「この魔法は何?」


「これは『アームド』の同系統の魔法で『アームクルド』って言うんだ。複数人同時に防御力を上げる魔法だよ。この魔法なら1回でみんなの防御力を上げられるから楽なんだ。その分魔力を多く使っちゃうけど、3人以上にかけるなら、ほとんど魔力の量は変わらないし、戦闘中になったら1人1人にかけ直している暇は無いからよく使うんだよね」


「俺とアオとハクの3人で実戦訓練したときに使ってくれた魔法のやつより強い魔法ってことだね」


「私たちが魔物と戦えているのも、アオくんが魔法をかけてくれるからですわ」


「……魔物の攻撃に当たる気はないが、当たっても大したことが無いのであれば楽に戦うことができるな」



 みんなアオの魔法を褒めているから、アオは照れて顔を赤くしていた。



「ほら、早くしないと魔法が解けちゃうよ、ゴブリンの所へ急ごう!」



 恥ずかしくて話題を切り替えたいのか、アオは俺らを急かして森の中に入っていった。






 森に入ると、どこかで戦っているのか、ゴブリンの叫び声が聞こえる。木にはひっかき傷や、剣などで切られた傷が付けられていた。


 地面には魔物の血らしき液体も散らばっている、草むらをかき分ければ、ゴブリンが地面に倒れていた。


 そこにギルド職員たちが大きなカバンを背中に身に着けて、ゴブリンをカバンに詰めていた。



「あれは何をやっているんだ?」


「……あれは素材を回収しているんだ。武器や防具に、アイテムなどを作ったりしている。それに、倒された魔物を放置しておくと、他の魔物が血肉を食らい、強くなってしまうからな。スライム1体でも放置されていると強力な魔物が出てくることもあるらしい」


「でも、スライムくらいなら、経験値も少ないですし、1体くらいならほとんど影響ないですわ」


「ん? さっきから足音の数が多い気がする」



 アオがみんなに静かにするように指示すると、俺たち以外に何者かが移動しているような音が聞こえていた。



「私が様子を見てくるわ」



 ユカリはそう言うと、音のする方へゆっくりと進んでいく。ハクはいつでも攻撃できるように弓を構えている。






「!? いたわ、ゴブリンよ。怪我をしているみたいで、ゆっくり動いているみたいですわ」


「……周りに他のゴブリンはいなさそうだ、おそらく、他の冒険者と戦って逃げてきた個体だろう。やるなら今がチャンスだぞ」


「こっちに気がついていないみたいだし、シンくんが攻撃してみればいいんじゃない?」


「え、俺!?」


「……弱ったゴブリン相手なら、シンでも大丈夫なはずだ。それとも念のために俺の『パラシス』で弱らせておくか?」


「そうだね、ハク。ゴブリンを念のために弱らせてくれる?」


「……分かった……『パラシス』」



 ハクは矢に麻痺毒の魔法を付与させて、ゴブリン目掛けて矢を放った。



「ゴブッ!」



 矢はゴブリンの肩に刺さった。すぐにゴブリンは矢を肩から無理やり外し臨戦態勢になる。



「……俺の魔法はすぐには効果が出ない、最初は遠くから攻撃するんだ」


「分かった!」



 俺は『スマッシュ』の完全詠唱をしていつでも撃てるようにする。ゴブリンは俺たちが4人いることに気がついてか、威嚇するだけで襲って来ない。


 そんな隙を見逃さずに『スマッシュ』の圧縮をして威力を上げていく。


 ゴブリンは俺の魔法に危険を感じたのか、背中を向けて逃げようとした。



「逃がすか! 『スマッシュ』!」


「ゴブッ!」



 ゴブリンの後頭部に当たって転倒する。傷はついているが、それでもゴブリンは生きていた。すぐに起き上がり、さっきと変わらない速度で逃げだしていく。



「圧縮した『スマッシュ』を頭に受けてもあれだけ動けるのか!? 今の俺じゃ勝てないな。俺の実力は分かったから、みんなで戦おう!」


「分かったわ! えい!」


「ゴブッ!」



 ユカリがゴブリンに向かって走り出し剣で切りつける。その次にアオが『ウォーター』で攻撃し、ハクが矢を当てていく。



「ゴッ……ゴブッ……」


「……麻痺毒が効き始めた、ユカリ、後は頼んだ」


「任せて!」



 麻痺毒によって動きが鈍くなったゴブリンに、どんどんダメージを与えていく。ゴブリンは攻撃をするが、ユカリの速さに付いて行けず、全て避けられてしまう。


 そして、ユカリから攻撃を受けすぎて、ゴブリンは立っていることもできなくなり、地面に倒れた。



「やったのか?」


「……いや、まだだ。ユカリの攻撃力じゃ切り傷を作る程度……俺がトドメを刺す……『ボイズ』」



 ハクはナイフに魔法を付与して、倒れたゴブリンに何度も攻撃する。



「……これだけ攻撃すれば毒が回るはず……」


「ゴッ……ゴ……ゴ…………」



 ゴブリンから経験値が出て、俺たちの身体に入ってきた。



「ハク、さっきの魔法は?」


「……『ボイズ』のことか? あれは毒魔法だ。相手に毒状態にして、ダメージを与えていく魔法だ」


「これであと4体倒せば、僕たちはクエストクリアできるね」


「そうだった! あんなのがあと4体……俺の攻撃はほとんどダメージにならないし、俺にできることってあるのか?」


「……ない、とは言い切れないな。怪我をしていたというのもあるだろうが、シンの魔法にゴブリンは逃げを選択した。もし、他のゴブリンも同じ反応をするなら……!?」






「ゴガァァァッッッ!」






 突然大きな叫び声が森に響き渡った、身体にビリビリっと衝撃が走る。


「声からして、ここから遠い所にいるみたいですわ」


「多分、他の冒険者が狙っているドン・ゴブリンの声だと思う……うぅ、足が震える……」


「アオ、しっかり!」


「……ここにいると鉢合わせるかもしれない。一旦森を出る」



 ハクの言葉にみんな賛成し、森の外へ急いだ。






 今日、俺はアオ、ハク、ユカリと再会し、

 ゴブリン討伐のクエストを一緒やることになった。

 何とか1体は倒せたが、突然大きな叫び声。

 俺たちは無事にクエストクリアできるのだろうか?

魔法の紹介


・『スマッシュ』

無属性の魔力の塊を作る魔法


・『ウォーター』

水の塊を作る魔法


・『アームド』

1人の防御力を上げる魔法


・『アームクルド』

味方の防御力を上げる魔法


・『パラシス』

麻痺毒の効果を付与する魔法


・『ボイズ』

毒の効果を付与する魔法

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