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60話 レインコート!(雨)

「今日は雨か……」



 起きて窓の外を見ると、雨粒が窓に当たっている。



「こんな天気でもクエストしないと生活が危なくなっちゃうし、今日もギルドに行くかぁ」



 俺は朝食を済ませてギルドへ向かった。中に入ると人はほとんどいない。クエストが貼ってある掲示板には、遠目から見ても多い量のクエストが貼られているのが見える。


 近づいて内容を確認すると、ゴブリンの討伐ばかり貼ってあった。



「ゴブリンは倒せるか分からないし、そもそもこのクエストは(ほし)2だから俺は受けられないな」


「シンさん、今日もクエストですか?」



 俺がクエストを見ているとハンナさんに話しかけられた。受付から出てきているなんて珍しい。



「ハンナさん、おはようございます! 今日もクエスト行きたいんですけど、雨だからあまり外に出たくないんですよねぇ……」


「そうですよね、他の冒険者の人たちも、雨になるとほとんど休む人ばかりなんですよ。昨日のゴブリン調査で、ゴブリンの数がこれから多くなっていることが分かったので、ゴブリン討伐のクエストを増やして安全にするつもりでしたが、雨のせいで冒険者は来てくれません……


 ゴブリンも、この雨で活動を控えるでしょうが、巣穴では今もゴブリンたちは増え続けていると考えると……」



 ハンナは、ため息交じりに落ち込んでいた。俺がゴブリンを倒せればすぐにでもクエストを受注するのに、(ほし)1クエストにはゴブリンの討伐クエストは無いし、俺がゴブリンを倒せるだけの力があるかも分からない。


 そう考えていると、ギルドの扉が開いてこちらに誰かが近づいてくる。俺より少し背が高いが、フードを被っていて顔は見えない。



「ハンナさん、今日はミズクラゲのクエストありますか?」


「その声はカイトさんですね! クエストを今から貼りますので少々待っててください」



 ハンナさんは受付の方に走り出してクエストを持ってくるようだ。ハンナの姿が見えなくなったところで、フードを脱いで素顔を晒すと、濃い青色の髪のカッコいい男だった。



「君、知らない顔だね。新人かい?」


「はい! 最近冒険者になったシンって言います」


「シンね…………君って、もしかしてリクって名前に心当たりは無いかい?」



 久々に耳にする名前に一瞬身体が跳ねる。



「もしかして、冒険者学校にいたリクのことですか?」


「そのリクだね。リクから話は聞いていたから会えて嬉しいよ。俺はカイトって名前さ」



 カイトは口角を少し上げて笑った。



「カイトさんは、リクとはどういう関係なんですか?」


「俺のことはカイトでいいよ、あと、リクにもしていたような口調で話してくれると俺も話しやすいかな」


「……分かったよ、カイト!」


「ありがとう。で、リクとは同じ部屋で冒険者を目指していた仲で、今は俺とパーティーを組んでいるんだ」



 なんとカイトは、冒険者学校にいた頃はリクと同じ部屋にいた。つまり、俺と入れ違いで部屋を出て行ったことになる。



「もっとシンと話してみたいけど、そろそろ時間のようだ」



 そうカイトが言うと、クエストの紙を持ってきたハンナさんが掲示板にクエストを貼り始めた。貼られた中で、目当てのクエストを選ぶと、すぐに受注を済ませた。



「シンが雨の中でクエストやるなら、俺が着ているようなレインコートを買うことをオススメするよ。それじゃまたどこかで」



 カイトはギルドから出て行く前に俺にアドバイスをしてからクエストに向かった。





「レインコートか、ハンナさん、レインコートってどこに売っているんですか?」


「それでしたら、隣の道具屋に売っていますよ」


「ありがとうございます!」



 俺は道具屋まで移動した。棚には何に使うか分からない物や、魔物の身体の一部を取り扱っているのか、各部位の名前が書かれたプレートが置いてあった。



「魔物の一部なんて何に使うんだ? えっと、レインコートは……あっちか」



 防具などが置かれている所に、カイトが身に着けていたレインコートがあった。



「話は聞いていましたよ、レインコートに興味があるんですね」


「おわっ! ビックリした!」



 音もなく背後から声をかけられて叫んでしまった。



「おっと失礼、私はここの道具屋を任されている者です。それにしてもお客様はお目が高いですね。レインコートの価値に気がつかれる冒険者様は少ないのですよ」


「そんなにこれは良い物なんですか? ただ雨の日でも活動できるようになるだけじゃ?」


「ノン、ノン、ノン」



 人差し指を左右に振って解説を始めた。



「雨の日でも活動できるからこその価値ですよ。雨の日こそ絶好のクエスト日。調達のクエストは晴れた日に比べて何倍も簡単! 魔物も雨の日は外に出たがりませんから」


「は、はぁ?」


「さらに、雨の日でしかできないクエストがあり、そういうのは報酬が高いのに受注する冒険者が少ない。お得だと思いませんか?」


「まぁ、ライバルが少ない分、楽だとは思いますが……」


「ですよね、ですよね! さぁお客様もレインコートを買ってクエストに役立ててください! 今ならレインブーツもお付けして、お値段は1000(ゴールド)です」



 レインコートとレインブーツを持ち俺に勧めてくる。サイズも図っていないのに、俺に合いそうな大きさを一瞬で持ってきたようだ。


 (ゴールド)はまだあるが、雨の日にしか活躍できない物を買うべきか悩む。



「ちなみに夏は、雨の日が多いので、すぐに使った(ゴールド)以上の利益は出ますよ」



 悩んでいた俺の耳元でそう囁かれて、気がついたら買ってしまった。買ったら店の裏に通されて、いつの間にか着させられていた。レインコートもレインブーツも俺にピッタリのサイズで着心地は良かった。



「うんうん、可愛いですね」


「ぅ……」



 可愛いと言われて顔が赤くなり、それを隠すためフードを被った。



「次は効果を体験してもらいますね、さぁ、一旦外に出て雨に当たってきてください」



 俺は背中を押されて、雨が降る中、外に出された。



「うわっ、濡れ……てない」



 ポツポツと雨の衝撃は伝わってくるが、雨粒は服に染み込まずに弾き飛ばされていく。レインコートの中に雨が入って来ても染み込まず、手を下に向ければ雨水は外に出ていった。



「どうですか、凄さが分かりましたか?」



 ギルドに戻ると道具屋の人に言われた。



「なんとなく分かりました。それにこれ水が付かないんですね。さっきまで雨に当たっていたのに、どこ触っても濡れてない」


「その場で水を弾き飛ばす優れものです。雨くらいの強さの水しか弾けませんが、それだけでも十分でしょう」


「ありがとうございます! これでクエスト頑張ります!」


「いえいえ、これもお客様のためですから。また何か必要なものがあれば、ぜひ私の道具屋を利用してくださいね」



 こうして俺は掲示板に向かいクエストを探して、道具屋の人は、自分の店に戻っていった。






 今日は雨で人が少ない中、リクとパーティーを組んでいるカイトと出会い、

 道具屋でレインコートとレインブーツを買った。

 これからは雨の日でもクエスト頑張るぞ!

新キャラ紹介


・カイト

背はシンより少し高く、濃い青色の髪のカッコいい男。


リクとは同じ部屋で冒険者を目指し、今はリクのパーティーメンバーの1人だ。

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