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57話 ☆1『毒消し草調達』(勇気)

 コンコンコン、扉をノックする音で俺は目を覚ました。



「お休みのところ失礼します、朝食の準備ができましたので、食堂までお願いします」



 部屋の外からそんな声が聞こえ、眠い目を擦り布団から出て扉を開ける。すると、自分の部屋の前にいた店主が食堂まで案内してくれた。



「ここの宿屋は食堂もあるのですね」


「入口からは見えませんが、奥に食堂があります。お客様は新人冒険者としてこの宿をお借りしているので、ここの朝食も1週間は無料で利用できます。朝食はお部屋代に50(ゴールド)の追加料金でサービスさせていただきます。気に入っていただけましたら、無料期間が終了次第ご利用していただけると私共は嬉しいです。では、ごゆっくりおくつろぎください」



 店主は頭を下げるとその場からいなくなった。



「無料で食べられるなら貰っとかないとね」



 俺はこうして宿屋の食堂で食事をした。




 朝食を済ませた後、ギルドに向かう。クエストを受けるために、掲示板から俺にできそうなクエストを探す。



「『スライム討伐』に『ゴブリン討伐』か……スライムの方は5体討伐しなきゃいけないし、ゴブリンは戦ったことが無いけどスライムより強いのは間違いない。別のクエストを探さなきゃ……あれ? これってもしかして……」



 別の所に貼られているクエストを確認していると、難易度や種類によって貼ってある場所が違うことに気が付いた。


 掲示板の外枠を見ると、(ほし)1から(ほし)3までの3つ大きく難易度が区切られていて、その中に『討伐』『調達』『調査』『その他』などの種類が分かりやすくされていた。


 さっきから俺が眺めていた所は『討伐』のスペースだった。



「この掲示板、こんなに見やすかったんだね。とりあえず『調達』か『調査』のクエストを探してみよう」



 (ほし)1には『調査』のクエストは貼り出されていなかったので『調達』のクエストの中からできそうなものを探す。



「今日はこの(ほし)1『毒消し草調達』をやってみるか」



 クエストの紙を取り、受付に向かった。




「ハンナさんおはようございます。このクエスト受けたいのですけど良いですか?」


「シンさんおはようございます! このクエストですね、分かりました。クエスト内容を確認します」


 ――


 (ほし)1『毒消し草調達』


 クリア条件:毒消し草を5つ納品


 報酬金:50(ゴールド) 150GP(ギルドポイント)


 参加条件:(ほし)1冒険者1人


 ~依頼内容~


 森に生えている毒消し草を5つ採取して、ギルドまで納品。

 葉が10枚で毒消し草1つとする。


 ――


「このような内容ですが、クエストを受けますか?」


「はい、受けます」


「それではクエストを受注します。クエスト頑張ってくださいね」


「行ってきます!」



 準備はできているので、早速森に向かって歩き出した。






 ■






 森に着くまでにスライムを何体か見かけただけで、変わったことは無かった。森に入る前に毒消し草の見た目を確認する。



「毒消し草は根元から青い花が見える植物で、花には毒があるけど、葉の方は毒消し草になっているみたい。ギルドでは、10枚の葉で1つの毒消し草と扱っているみたいだから気を付けないと……」



 毒消し草の絵と説明を見ながら、知識を入れていく。


 入れていくほど、前回の薬草調達で青い花など見たことも無いので、探すのに苦労すると覚悟した。



「昨日行ったところをもう一度探ってみよう。もしかしたら見逃しているだけかもしれないし」



 俺はそう思って森の中に入っていった。


 前回は警戒しながら歩いても魔物はほとんど出てこなかったから、今回は毒消し草を探すことに意識を集中させている。しかし、ここら辺には青い花などはどこにも咲いていなかった。



「もっと奥に行かなきゃ見つけられないな……」



 こうして俺は森の奥へと進んでいく。奥に行くほど暗くなってくる。魔物もスライムだけじゃなく、ゴブリンも見かけるようになってきた。



「ん? あれは青い花だよな?」



 木の陰に隠れながらゆっくり近づいて行く。絵と見比べても変わらないので毒消し草と確定する。



「これの葉っぱを取れば良いんだよね」



 プチプチと千切って葉を集めていく。ここだけで2つ分の毒消し草を手に入れることができた。


 一度見つけると簡単で、少し進むだけで別の毒消し草を見つけることができる。ただ、スライムにゴブリンに、木に化けた魔物のウッドォも毒消し草の近くにいる。


 安全のために別の毒消し草を狙う必要があった。



「……俺が強ければ、あいつらを倒して楽にクエストクリアできるのに……」



 目の前に目的の物があるのに手に入れることができない自分に悔しさを感じつつ、その場から離れた。




 その後、色んな所で毒消し草を見つけるが、どこも魔物が複数いて手を出すことができないでいた。そんな中、1ヵ所だけ狙いやすいところがあった。


 スライムが1体、毒消し草の上で眠っているのだ。周りにも他の魔物は見当たらなく、今なら1対1で戦うことができる。そう思った自分を冷静にする。



「いや、わざわざ攻撃する必要はない。起こさないようにどかすことができれば、戦わずに毒消し草を取ることができる」



 俺は寝ているスライムにゆっくり近づく。目を閉じてその場から動かないスライムを見ていると可愛いと感じる。でも、起きて敵対すれば可愛さに似合わない体当たりを見せてくる。油断はできない。


 俺は唾を飲み込み、勇気を出してスライムに触れる。ズシリとした重さを感じるのに、身体は柔らかく冷たい。ハリがあるのか、手のひらが少し包まれる程度で反発が強くなった。


 スライムに触れるときは、攻撃されるときか、防御しているときなので、触っていて心地良いと感じることに驚いた。



「起きないでくれよ……」



 優しく持ち上げて、毒消し草の上からどかす。持ち上げたときにプルプルとスライムが震えて、俺は心臓が止まりそうになるほどビックリして固まった。


 起きてしまうと思ったが、しばらく固まっていると。スライムは動かなくなった。どうやら眠りは覚めていないようだ。


 心臓に悪いのでさっさとスライムは別の場所に置いて、毒消し草を回収することを急いだ。




 スライムが寝ていた場所には毒消し草がたくさんあり、パッと見ただけでクエストクリアに必要な数があることが分かった。



「よし、これで毒消し草5つ分調達できたな…………!?」



 横を見ると、さっきまで眠っていたスライムが起きていて俺を睨んでいる。



「スラ! スラ!」



 どうやら、俺が毒消し草を取ったせいで、寝床がぐちゃぐちゃになっていたようで怒っているようだ。



「スラ!」


「うっ!」



 体当たりしてきたのでとっさに腕でガードする。



「戦わずに帰りたかったが、やるしかない!」



 俺は剣を抜いて戦闘に思考を切り替える。


 まずは木に向かって隠れる。スライムからは隠れている所を見られているので、そこに目掛けて体当たりをしてくる。


 体当たりで直進している間に、別の木に隠れて様子を窺う。



「スラ?」



 スライムが俺を探して辺りを見渡している。俺は隠れている間の魔法の準備をする。



「我が魔力を一つに、球へと型作り、大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる、サンラ・ルンボ・アイド・ケブン・バイタ」



 完全詠唱をして準備完了、後はスライムが後ろを向けば…………



(今だ!)



 後ろを向いたと同時に俺は隠れるのを止め、魔法を飛ばした。



「『スマッシュ』!」


「スラ!」



 スライムは衝撃で森の奥に消える、こんな程度じゃ倒せないことを知っているので、次の準備に取り掛かる。


 森の奥に飛んで行ったせいで、どこにいるか分からないが、スライムは俺の方に戻ってくると読んで、木を背にして見晴らしの良い場所で待ち伏せる。


 完全詠唱を終わらせ、いつスライムが戻って来ても良いように待つ。



「来た!」



 青い物体がのそのそと近づいてくる。俺は魔法の圧縮を始めて、威力を高めていった。



「スラ!」



 身体にかすり傷を付けたスライムが俺に向かって体当たりをしてきた。見晴らしの良い場所なのでスライムとの距離は十分ある。更に直進で向かって来ているので、狙うのは簡単だった。



「『スマッシュ』!」


「スラ!」



 血を吹き出しゴロゴロと転がっていくスライム。すぐに体勢を立て直し、体当たりをしてくる。



「スラ」


「っ……この!」



 さっきまでより元気が無くなり、スライムの動きが少し鈍くなっている。それでも体当たりの威力は衰えていない。腕に鈍い痛みが走るが、加護が残っているので痛みは消える。


 この距離じゃ魔法は使う暇が無いので剣で切りつける。



「スラ!」


「あれ?」



 相手の力を利用してやっと傷を付けることができたスライムに、普通に攻撃したら傷を付けることができた。



「そうか、あのときよりも強くなっているんだ! これならいける」



 スライムを何度か剣で攻撃して、体当たりは剣でガードしてカウンターをする。想像以上にスライムにダメージが入ったようで、身体を震わせて血をドバドバと垂れ流している。



「スラ……」


「逃がすか!」



 逃げようとするスライムに回り込み逃げ道を塞ぐ。反対側に逃げようとしたので、完全詠唱と圧縮をした『スマッシュ』でトドメを刺す。


 身体を引きずるように逃げるスライムは遅いので簡単に当てることができた。



「ス……ラ…………」



 スライムから経験値が出て俺の身体に入っていく。



「はぁ……はぁ……勝った…………うっ」



 緊張が解けたことで疲れが一気にやってきた。木に寄りかかり体力を回復させる。


 少し休んでから街に帰ることにした。






 ■■






 無事に街に到着して、ギルドへ向かう。受付にいるハンナさんにクエストクリアの報告をする。



「確認しますね。10、20、30、40、50……毒消し草を5つ確認しました。クエストお疲れ様でした。こちらが報酬金となります。ギルドカードにもGP(ギルドポイント)を入れときました」



 報酬金の50(ゴールド)と150GP(ギルドポイント)を受け取り宿屋で戻った。


 その日は疲れていたからか、部屋に入って安心して眠気が襲い、布団を敷く前に横になって眠ってしまった。




 今日は毒消し草のクエストをして、

 スライムを1体倒すなどの1日だった。

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