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56話 ☆1『薬草調達』(初回)

 ハンナさんから渡された紙に目を通す。


 ――


 (ほし)1『薬草調達』


 クリア条件:薬草を5つ納品


 報酬金:50(ゴールド) 100GP(ギルドポイント)


 参加条件:(ほし)1冒険者1人


 ~依頼内容~


 森に生えている薬草を5つ採取して、ギルドまで納品。


 ――


 紙にはクエストの内容が書いてあり、薬草の絵も描かれていた。


「このクエストを俺がやれば良いんですね」


「はい、この絵と同じ薬草を取ってくるだけの簡単なクエストです。それではクエストを受注しますね」


「お願いします!」



 俺は初めてクエストを受けることになり、ハンナさんからは「クエスト頑張ってくださいね」と言われ、準備をするために宿屋の自分の部屋に戻った。






 ■






「部屋に戻ってきたけど、本当に何もないな……とりあえず持っていくものだけ決めて、明るいうちにクエストを終わらせよう。ベッドを買うのはその後でいいや」



 俺は剣と薬草の絵や説明が書かれた紙を持って行くことにした。



「ポーションもまだ持ってないし、最初はこれだけでいいかな? よし、出発だ」



 宿屋を出て少し歩くと街の外に出られる。


 学校にいた頃は、街の外に行くまでに結構な時間がかかったが、冒険者は頻繁に外に行くので、街の出入り口に近いところにギルドも宿屋もあって便利だ。



「えっと、薬草は森に生えているから、森に向かわないとね」



 俺は紙に書かれた説明を確認して、街の外に出た。




「あ、馬車だ」



 道を歩いていると、前から馬車がいくつも来るのが見えた。どうやら荷物を運んでいるようだ。俺は端まで避けて道を譲る。荷台には冒険者のような恰好をした人が乗っていて、護衛をしているようだった。


 馬車から目を離し先へ進む、しばらく歩くと森が見えてきた。俺は道から外れて森に向かって歩き出す。草は膝が隠れるくらいの高さまで伸びているので、スライムなどの小さい魔物を警戒しながら進んでいった。


 森に向かう途中に冒険者を遠目で見つけることができた。俺以外の冒険者がいたからか、魔物には出会わなかった。



「やっと森の目の前まで来たぞ。ん、あれが薬草かな? 森に入らなくても見える位置に生えていたりするんだね」



 森に入って薬草の目の前まで移動する。草と紙を見比べて特徴が一致しているかを確認する。



「見た目は一緒だし、生えている場所もこの紙に書かれた説明通り……薬草で間違いないね」



 薬草と分かり採取していく。採取の方法は、薬草を根から千切って持って行くやり方だ。葉だけで薬草として機能するが、それだと数時間で鮮度が落ちていく。根から千切って採取することで、数日の間そのままでも鮮度が落ちにくいようだ。


 また、根を地面に残すことによって、同じ場所に薬草が生えてきやすいということも紙に書かれていた。



「まずは1つ、袋に入れて……次の薬草は……」



 辺りを見渡すが薬草は見当たらない、どうやらこの近くにはもう薬草は生えていないようだ。


 俺は森の奥に進んでいく。後ろを振り返ると、草原は木で隠れて見えなくなっていた。



「そういえば、1人で森にいるなんて最初の頃以来だな。1人だから何かあっても誰も助けに来てくれない、いつも以上に警戒して移動しなきゃ……」



 安全な木を背に、周りを警戒しながら薬草を探す。木のおかげで後ろから不意打ちをされることは無い。しかし、木に同化している魔物もいる以上、背中を預ける木が魔物じゃ無いかの確認は必須だ。


 幸いにも、葉の無い木は周りに無いので、そういう魔物は近くにいないようだ。



「薬草ばかりに気を取られていると、地面ばかり見て視野が狭くなっちゃうからね。ときどき上を見て視野を広げないと。次はあそこを探す」



 こうして、魔物じゃ無いと分かった木に向かって歩き出し、木を背にして周りを警戒する。



「薬草あった、これで2つ! あっちにも薬草が!」



 順調に採取ができている。次々と薬草を見つけていっては採取した。



「あそこにも薬草が……? あれは魔物かな?」



 薬草の生えている近くの木には葉が生えていなかった。周りの木にはちゃんと葉が生えているので、ほぼ魔物で間違いないだろう。



「もし魔物だったら、倒せる保証は無いし、ここに生えている薬草は諦めて別の所を探そう」



 俺はその場から離れようとすると、警戒していた木の近くにスライムがやってきた。スライムが薬草に近づき食べようとすると、木がバサバサと動き出した。スライムはそれに驚き逃げて行った。



「やっぱりあの木は魔物だったか。近づかなくて良かった」



 俺の警戒は正しかったと分かったところで、場所を変えて薬草を探しに行く。それから魔物とは遭遇しないで薬草を5つ採取することに成功した。



「あとはこれをギルドまで届けるだけだ、けっこう奥の方まで進んだから、ちゃんと帰れるかな?」



 警戒しながら森の出口に向かって歩く。魔物は現れることなく森を抜けることができた。



「ここまでくれば、何かあっても街まで走り続ければ何とかなるね」



 俺は街に向かって歩き出す。草原から道に変って、何度か見た景色が広がる。馬車や人がちらほら見えるようになってきた。






 ■■






 街に到着して、ギルドへ向かう。ギルドの扉を開け、受付にいるハンナさんにクエストクリアの報告をする。



「確認しますね。1、2、3、4、5……薬草5つ確認しました。クエストお疲れ様でした。こちらが報酬金となります。ギルドカードにもGP(ギルドポイント)を入れときました」



 袋を渡され、中を確認すると50(ゴールド)入っていた。少ない金額だが、初めて自分で稼いだお金でとても嬉しかった。ギルドカードにも『GP(ギルドポイント)100』と書かれている。



「あのハンナさん、家具を売っている場所って知りませんか? 部屋に何も無いからベッドを買いたくて……」

「家具を扱っているお店はギルドの更に奥に行った場所にありますよ。ただ、ベッドは持ち家ができてから買った方が良いと思います。運ぶのも大変ですし、シンさんは宿屋に住んでいるのですからいつ追い出されるか分かりません。買うなら運びやすい布団をオススメします」


「分かりました。参考にしてみます。教えてくれてありがとうございます!」



 俺はギルドを出て宿屋に戻り、部屋に置いて行った(ゴールド)を持って家具屋に向かった。




 家具を扱っているからか、店の何もかもが大きい。高さ3メートルはありそうな扉があった。その横に普通の扉もあり『入口』と書いてあった。大きい扉は、家具を出し入れするための扉なのだろう。


 家具屋に入ると店主が話しかけてきた。



「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で」


「寝るための家具を探しているのですけど、ありますか?」


「はい、ございますよ。しかしお客様、ご予算の方は大丈夫でしょうか?」


「え? もしかして高いのですか」



 俺は持ってきた(ゴールド)が少ないのかと焦った。



「いえいえ、高い物もあれば安い物もございます。ですが、お客様の装備を見ますと、冒険者を始めたばかりの方と同じ装備に見えます。ここで家具を買ってしまうと、生活ができなくなってしまうことがありますので」


「そういうことですか。でも今は買えなくても、いつかは買いたいので見ても良いでしょうか?」


「えぇ、構いませんよ。さぁこちらへどうぞ」



 今回は買わないかもと言ったのに、それでも店主の人は笑顔を崩さずに対応してくれた。



「こちらが寝具となっています」


「おぉぉ! 布団にベッド、大きさや色まで違いがある」



 白はもちろん、黒や緑やピンク色まであった。



「値段は……っ! 3万(ゴールド)!」


「そちらは当店1高いベッドでございます。持ち家がある方が極稀に買っていただけますね」


「さすがにこれは買えないな……安いの探さなきゃ」



 ベッドを一通り見てみるがどれも値段が高くて手が出ない。持ってきた予算で買える物もあるが、今後の生活に支障が出ることが分かる値段だった。



「ベッドは高くて無理だ。じゃあ布団は……お! これ良さそう!」



 大人が寝むれるほどの大きさだが、1000(ゴールド)とベッドに比べれば安かった。



「すみません、これください!」


「かしこまりました。こちら1000(ゴールド)になります。この街にお住まいでしたら2割の追加料金をお支払いいただければ、お部屋まで我々がお運び致しますが。どうなさいますか?」


「1000(ゴールド)の2割だから200(ゴールド)か、すみません、自分で部屋まで運びたいと思います」


「かしこまりました」



 買った布団を丁寧に袋に詰めて荷台に詰めてくれた。



「こちらの荷台をお使いください。お部屋までの移動が楽になります。お手数ですがお部屋まで運び終わりましたら、ここに荷台を返してもらえると助かります」


「分かりました、ありがとうございます!」


「こちらこそありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」



 こうして部屋に布団を置き、荷台を店に返して宿屋に戻った。



「あぁ疲れた。荷台があったとはいえ、大人用は持ち運ぶのが大変だった。これでギーリックさんから渡されたお金は4000(ゴールド)未満になっちゃった」



 残りのお金を数えて、これからどういう生活をしようか考えているとお腹から「ぐ~」と鳴る。



「そういえばまだお昼ご飯も食べてなかった。ギルドの食堂で何か食べるか」




 ギルドの食堂に着くと、メニューが置かれている。料理名の横に値段が書かれていて、GPも使えるようだった。



「今日やったクエストで100GP(ギルドポイント)貰ったから、それで食べられる料理を注文してみるか」



 俺は食堂の受付で注文をする。ギルドカードを渡すことで注文が通った。



「ご注文ありがとうございます。残りのGP(ギルドポイント)は0です」


「本当に買えた! やった」



 料理と一緒に俺のギルドカードを返してもらった。



GP(ギルドポイント)100』と書かれていた所には『GP(ギルドポイント)0』と書き直されていた。


 俺は席について料理を食べていく。出されたものは大きなパンとスープとミルクだ。それらをすべて平らげて食器を片付け、自分の部屋に戻った。




 布団を敷いて、明日からのことを考える。



「今回のクエストで得たお金は50(ゴールド)。今のままじゃ、いずれお金が無くなってここを出て行かなきゃならない、明日からもクエスト頑張らなきゃ」




 こうして冒険者生活1日目が終わった。

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