55話 新人冒険者!(説明)
ギルドの扉を開け中に入ると色んな冒険者がいた。ギルドの中は広く、入って左側には食堂があり、冒険者たちが食べたり飲んだり騒いだりしている。
右側には道具屋があり、ポーションや魔法石などが売っているのが見える。
そして真ん中には大きな掲示板があり、そのすぐ左は2階に上がる階段があり、すぐ右側には扉があり、そのまた右側にはギルドの職員が受付をしていた。
「うわぁ、広いなぁ!」
ギーリックさんに付いて行って初めて見たギルドよりも、ここは大きくて俺は辺りをキョロキョロと見渡しながら目を輝かせていた。
「いつまでもそこにいられると邪魔だ」
「あっ、すみません」
後ろから男に声をかけられ、謝りながらその場を離れる。俺がギルドの出入り口で止まっていたせいで通れなかったようだった。文句を言われて当然である。
俺に邪魔と言った人は、大きな掲示板の方に歩いていく。張り出されている紙を何枚か見ていると、そのうちの1枚を取り、右側で受付をしているギルド職員に紙を渡していた。
「クエスト頑張ってくださいね」
男にそう告げていることから、あそこがクエストを受ける場所なんだと理解する。
そこで自分がまだ冒険者になっていないことを思い出し、受付へ向かった。
「あの、すみません」
俺は、受付をしている花の髪飾りを付けた茶髪女性に声をかける。その人はポニーテールを背中まで垂らしている胸の大きいお姉さんだ。
「初めて見る方ですね、何のご用でしょうか?」
「冒険者になりたくてここに来ました」
「冒険者を希望の方ですね。でしたら手数料に1000Gかかりますが、よろしいですか?」
「あ、ちょっと待ってください! あの、これ」
俺はしまってあったギルドカード認定書を渡した。
「冒険者学校を卒業された方だったのですね。えーと名前は……シンさんですね、すぐにギルドカードを作りますので少々お待ちください」
机の下から何かを取り出し、俺の渡したギルドカード認定書を見ながら書き込んでいく。書き終わったら、先端に長方形の何かが付いている棒を持つ、よく見ると先端部分の長方形に何かが彫られていることが分かる。
「『ファイア』」
受付の人は手のひらに火を出し、棒の先端部分の熱していく。どんどんと赤くなり、とても熱そうだった。
十分に熱したことを確認すると、さっきまで書き込んでいた紙に焼印をした。
ジューという音と紙が焦げる匂いを感じた。
「はい、これがシンさんのギルドカードです。これでシンさんは☆1冒険者としての登録が完了しました」
「ありがとうございます」
渡されたギルドカードは、触り心地は紙なのに、木の板みたいに硬かった。
「9時から冒険者の説明をしますので、それまでは自由にしていてください。5分前にはここにいてくれると助かります」
「分かりました、ところで時計はどこにありますか?」
「時計はギルドの出入り口の上にあります、見えますか?」
俺は受付の人が指さす方に目を向けると、俺と同じくらいの大きさの時計があった。今の時刻は8時となっている。1時間もどこで暇を潰そうか考えていると、受付の人から声をかけられた。
「シンさんは、もう宿を決めていますか?」
「いえ、まだです」
「でしたら、今のうちに取ってきた方が良いです。ここを出て左に宿屋があります。冒険者学校にいたシンさん分かると思いますが、シンさんが寝泊まりしていた部屋と同じ広さの部屋を1泊100Gで借りることができます。
ですが、作ったばかりのギルドカードを見せることで、1週間無料で借りることができます。ぜひ利用してみてください」
「教えてくれてありがとうございます、それじゃあ9時によろしくお願いします!」
俺は受付の人と一旦別れて、宿屋に向かうことにした。
■
ギルドから出て左を見ると横に長い2階建ての建物が見える
「あれが宿屋かな?」
入口に近づくと看板に『宿屋』と書かれていたので宿屋で間違いないようだ。
中に入ると、左右対称に装飾や柱、部屋に階段があった。真ん中には受付をするところがあり、その上に時計も設置してある。
「誰もいないのかな? あの、すみませーん」
読んでみるが誰も出てこない。疑問に思っていると受付に、箱と一緒に紙が挟まっていた。その紙には
『用がある方はこの箱を押してください』と書かれていた。俺は箱を上から押してみると急に青い光を出した。
「な、なんだ!?」
俺が慌てていると部屋の扉が1つ開き、中から太った男の人が出てきた。
「よくお越しくださいました。少々お待ちください。よいしょっと」
どうやらここの店主だったようで、俺を見かけると挨拶をして受付に向かった。
「それで今日は泊りでしょうか? 休憩でしょうか? 泊りなら1泊100G、休憩なら20Gです。
2階のお部屋なら1泊300G、休憩は60Gです」
「泊りでお願いします。あの、このギルドカードを見せれば無料と聞いたのですけど……」
俺は店主ギルドカードを渡す。すると店主がニコッと笑う。
「新人冒険者の方ですね、私の宿をご利用いただきありがとうございます。1週間の間は無料で1階のお部屋を貸すことができます。こちらがお部屋の板となります」
「これは?」
渡された板を見ると数字が書いてあった。
「この数字は何ですか?」
「その数字はお部屋の番号です。お客様が泊りになるお部屋の扉に番号が書いてありますので、その板と同じ番号のお部屋に泊まることができます。また、この宿から出るときに板は回収しますのでなくさないでください」
「分かりました、ありがとうございます!」
「ではごゆっくりおやすみください」
店主は頭を下げて俺を見送った。
「ここが俺の部屋だな」
板の番号と部屋の番号を確認してから入る。
「…………えっ?」
部屋には窓とカーテンがあった。いや、それしかなかった。俺はすぐに店主の所に向かい、部屋の状態を言った。
「お客様、あの状態のお部屋で間違いありません。家具などはお客様に揃えてもらいます。家具付きのお部屋が良いのでしたら2階のお部屋をお借りください」
「…………」
俺は渋々部屋に戻った。
「さて、この何も無い部屋をどうするか。まずベッドは絶対欲しい。でもどこに売っているんだろう?」
家具の値段は分からないが、ギーリックさんから貰ったお金をほとんど残していたので、少しくらいは家具を買うことができると思っている。
今後の計画を考えていると結構時間を使ったようだ。宿屋の受付の上に時計があったことを思い出し、時間を見ると8時50分になっていた。俺は急いでギルドに向かった。
■■
ギルドに着くと、ギルドカードを作ってくれた受付のお姉さんが俺を見つけるなり手を振り近づいてくる。
「シンさん、今日はあなたしか冒険者登録をしなかったので、少し早いですが冒険者の説明を始めましょう。こちらに付いてきてください」
俺は受付のお姉さんに付いて行く。大きな掲示板と受付の間にある扉に入り、廊下を歩いていく。どうやらここはギルド職員が通る場所のようで、食堂や道具屋の裏側が見えていた。
「こちらの部屋です」
通された部屋には大き目の机があり、10人程度が入っても余裕のあるほど広かった。
「それではシンさん、これから冒険者としての説明を始めますね」
「よろしくお願いします! 受付のお姉さん」
「私のことはハンナと呼んでください」
「分かりました、ハンナさん」
俺はハンナさんから冒険者としての説明をされた。学校でも教わった内容もあったが、教わってないことも教えてもらった。
「冒険者はクエストの報酬でGだけじゃなく、GPを受け取ります」
「GP?」
聞いたことのない単語が出てきて俺は首をかしげる。
「GPとは、ギルドが系列している店で使えるもので、Gが無くてもGPで物を買うことができます」
「そんなことができるのですね。でもどうやって使うんだろう?」
「それは、ギルドカードにGPがたまっていくので、ギルドカードを見せることで使うことができます」
「なるほど」
ギルドカードにはそんな仕組みがあったのかと感心していた。
「私が紹介した宿屋も、ギルドが系列しているので、安い値段で泊まることができます。普通なら1泊500Gくらいします」
「そんなにするんですね……でも部屋に家具とかはありますよね?」
「家具を置いている宿屋なんて高すぎて止まれませんよ。1泊3000Gとかしますよ!」
「た……高い……」
あまりの高さに思考が飛んでいた。
「ここまでが冒険者に必要な最低知識です、他に何かありますか?」
「ないです」
「分かりました。ではシンさんにやってもらいたいクエストがあります」
「俺にやってもらいたいクエスト? 俺まだ実績とか無いですよ」
「いえ、このクエストは冒険者になった方にやってもらっている簡単なクエストです。クエストの受け方や、報告の仕方、報酬の貰い方の練習だと思ってください」
「そういうことですか、分かりました。それで、どんなクエストなんですか?」
俺がハンナさんに聞くと、クエストの内容が書かれた紙を見せてきた。
☆1『薬草調達』
新キャラ紹介
・ハンナ
花の髪飾りを付けた茶髪で、ポニーテールを背中まで垂らしている胸の大きいお姉さん




