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54話 俺の冒険はこれからだ!(卒業)

 ランド先生と一緒に草原から街に帰る途中で、オレンがいるパーティーを見つけた。俺は今ランド先生に抱えられている状態で、これが見つかると恥ずかしいので下ろしてもらった。



「うっ……」



 地面に足を付けると、その衝撃がお腹に響いて痛みが来る。かなり痛みはマシになっているが、お腹を押さえて軽く前かがみになる。



「あまり無理をしない方が良いですよ、まだ辛いようでしたらもう1本ポーションを飲みますか?」


「すみません、もらいます……」



 差し出されたポーションを飲みほし、気にならない程度の痛みまで回復した。



「ぷはぁ、ありがとうございます。楽になりました」



 ランド先生にお礼を言って、オレンたちと合流した。




「おーい!」


「あっ、シンくん。スライムとの戦闘は無事に終わったのですね」


「最初の1体だけはね。後からやってきたスライムにはボコボコにされちゃったよ。ランド先生に助けてもらわなかったら危なかった」


「そうなのですね。僕の方も大変でしたが、なんとかスライムを倒すことに成功しました」



 みんな初めて魔物と戦ったからか、服が汚れていたりする人は多かった。しかし、身体に傷は無く、加護が無くなる前にスライムを倒したようだ。


 そうやって話しながら街に帰っていると、ミドーのいるパーティーとキイロのいるパーティーを見つける。


 ミドーたちのパーティーは、ほとんどミドーのおかげでスライムを倒せたみたいだ。


 キイロたちのパーティーは、時間はかかったが、スライムに攻撃されない立ち回りをしていたこともあり、どのパーティーよりもダメージを受けている人が少なかった。


 こうして他のパーティーも合流し、俺以外は怪我無く街に帰ることができた。






 ■






「やっと街だ」



 そんなつぶやきが聞こえてくる。街に着くと、魔物の心配がなくなるので、スライムから攻撃を受けてしまった生徒たちは安心し始めた。ここまでくれば学校までは安全なので張っていた気を緩める。




 学校に帰るとみんなお風呂で身体を綺麗にしていく。その後は自分たちの部屋に行くが、俺だけランド先生と一緒に別の部屋に向かうことになった。


 キイロたちに「また後で」と伝え、ランド先生の後を付いて行く。


 しばらく廊下を歩いていると、目的の部屋に付いたようで扉をノックする。



「ランドです、シンくんを連れてきました」



 扉越しから「入れ」と声をかけられ俺たちは部屋の中に入る。


 部屋は教室と同じくらいの広さだ。高級そうな机やソファーなどがあり、ジーク校長がいた。どうやらここは校長室のようだ。



「まぁ2人とも座りなさい」


「は、はい!」



 ランド先生がソファーに座ったので、俺も一緒に同じソファーに座る。とてもふかふかして、座り心地と触り心地ともに今までで1番の物だった。


 ソファーの感触に夢中になっていると、目尻は下がり口角も上げている笑顔のジーク校長が話しかけてくる。



「そのソファーはなかなか良いものじゃろ。貴族たちが使う物とほぼ同じ物だそうじゃ。どうかの?」


「とっても気持ちいいです」



 俺が手で押したりして感触を確かめていたからか、ソファーについて聞かれたので素直に答えた。



「ほっほっほっ、それは良かった。ところで、ここへ連れてこられた理由はもう分かっておるな?」


「……いいえ、分かりません」


「おや? ランドから聞いておらんのか?」


「え、ランド先生は知っているのですか?」



 ランド先生の方に視線が集まった。


「シンくんが冒険者になれるかどうかですよね」


「そうじゃ。ランドは実戦訓練でずっと見ていたのじゃろ、彼は冒険者としてやっていけるかの?」



 鋭い眼光でランド先生を睨みつけるジーク校長。俺に向けられていないのに凄まじい圧を感じる。



「…………シンくんは、スライム1体を1人で倒したことをこの目で確認しました。その後、複数のスライムに囲まれ大怪我をしましたが、冒険者をするには問題ないと判断しました」


「……なるほどのぉ…………シンとやら、おぬしは大怪我を経験してもまだ冒険者になりたい気持ちは変わらんか?」



 俺には優しく問いかけてくれる、こんなに辛い思いをしているなら冒険者にならない道もあるだろう、でも、あんなに弱かった俺がこんなに強くもなれたし、これからもどんどん強くなっていく未来がぼんやりとだが見えて来ていた。


 だから、俺の答えは決まっている。



「俺は、冒険者になりたいです!」




 場が一気に静まり返る。ジーク校長がうんうんと頷くと、引き出しから書類を取り出し判子を押した。



「これを受け取ると良い」


「! これはギルドカード認定書! 俺の名前が書いてある」


「これでおぬしは明日から冒険者じゃ。なくさぬようにの」


「シンくん、認められて良かったですね」


「ジーク校長、ランド先生、ありがとうございます!」



 俺は2人に深々と頭を下げ、そんな俺をみた2人は、にこにこ笑顔だった。



「明日は朝の鍛錬が始まる前にここを離れギルドに向かうことになるからのう、自分の部屋で休んできなさい」


「はい!」



 こうして俺は『ギルドカード認定書』を貰い、ランド先生と別れ自分の部屋へ帰っていった。






 ■■






「シンくん、おかえりなさい。どうだったの?」


「明日から冒険者になることになった!」


「そうなんですね、おめでとうございます!」



 オレンに聞かれたので『ギルドカード認定書』を見せて伝えた。みんなこの紙を見たことがないからか、俺が見せてもいまいち反応が悪かった。



「ふーん、こんな紙切れで冒険者になれるのか」


「シンやったね、おめでとう。ミドーも紙切れなんて言ってないで『おめでとう』くらい言いなよ」


「うっ……おめでとう…………」


「3人ともありがとう、嬉しいよ」



 ミドーは恥ずかしいのか顔を赤くしてそっぽ向いているが、全員から祝福されたので満足だ。


 そこからは寝る時間が遅くならないように最後の談笑をして次の日を迎えた。






 ■■■






 朝になると、学校の正門前で俺を見送るためにオレンとミドーとキイロとランド先生が来ていた。


「ミドーとは最初仲が悪くてどうしようかと思っていたけど、なんだかんだこうして仲良くなれて良かったよ。オレンとキイロも、こんな俺と仲良くしてくれてありがとう。


 ランド先生、今までありがとうございました! ランド先生がいなかったら、俺が冒険者になるのはもっと先になっていたかもしれませんし、実戦訓練で死んでいたかもしれません。本当にお世話になりました!」



 最後に俺からオレン、ミドー、キイロの3人に別れを告げる。



「みんなが冒険者になったら、俺とクエスト一緒に行こうね! それじゃまたね」



 俺は手を振りみんなに背を向け、ギルドに向かって歩く。後ろからみんなの声が聞こえてくる。



「シンくん、また会いましょう」


「シン! 今度会ったらまた勝負しよう!」


「シン、君といるのは楽しかったよ」



 懐かしい別れ方をして歩き続ける。曲がり角を曲がるとみんなの声が聞こえなくなって、本当に別れたんだなと実感した。



「……寂しくなるけど、冒険者を続けていればいつか必ずみんな来るさ。それまでの辛抱」



 しばらく歩くと大きな建物が見えてくる。



「あれがギルドか……」



 俺は期待に胸を膨らませてギルドの扉を開いた。










 俺の冒険はこれからだ!




みなさんお疲れ様でした!


これにてシンくんの冒険者学校編が無事に終了して、

次回から新章突入です!


途中でリアル2年の間が空きましたが、なんとかここまで書くことができました。


「俺の冒険はこれからだ!」

このセリフは、この作品を投稿する前から言わせたかったセリフなので、

言わせることができてとてもうれしいです。


今後ともよろしくお願いします!

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