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50話 強くて『スマッシュ』鍛錬!(3発)

「……あれ? 俺さっきまで走っていたはずなのに、どうして部屋で寝ているんだ? うっ……身体が動かない」



 起き上がろうとすると、まるで壊れた機械みたいにギギギっといった感覚で、思うように動かせなかった。代わりに頭はスッキリとしている。



「…………あ、シンくん起きたのですね!」



 俺の出した物音で目を覚ましたオレンは、自分のベッドから出て俺の方に駆け寄ってきた。



「昨日倒れてから目を覚まさなかったので凄く心配しましたよ」


「そうだったんだ……オレンたちが俺をここまで運んでくれたの?」


「僕たちではないですよ。ランド先生がシンくんを運んでくれました」



 首を横に振ってオレンは教えてくれた。



「そうなんだ、後でお礼を言っておかなきゃね。ところで、今から朝? それともこれから夜? 窓から入ってくる光が薄暗くてどっちか分からないんだ」


「朝ですよ。もう少ししたら明るくなります。シンくんはそれだけ長く眠っていたんですからね」



 そういうとオレンは「ふぁぁ」と口を開けてあくびをして「僕はもう少し寝ますね」と言い、自分のベッドに戻って眠ってしまった。



(俺は眠くないしどうするか……)



 窓から入る光が明るくなるにはまだまだ時間がある。俺は目を閉じ瞑想をして時間を潰すことにした。






 ■






「おーいシン、朝だよ」



 身体を揺らされたことで目が覚める、瞑想をしていたら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。



「…………キイロおはよう」


「オレンの言った通り本当に寝てるだけだったか、心配したんだよ。ミドーとオレンは先に食堂に行っているから、僕たちも行こう」



 俺は布団をはがされて、無理やり手を引っ張られ立たされた。オレンと話していた時よりも身体は楽になっていたが、動かし辛いと感じている。


 俺が服を着替えようとすると「手伝おうか?」と言われたが、これだけ身体が動かせれば1人で着替えることはできるので「大丈夫! キイロは先に食堂に行っても良いよ」と言って先に行かせた。


 俺以外いなくなった部屋で、黙って着替えをしていると、だんだん身体が動かしやすくなっていく。部屋を出るころにはいつも通り動くようになっていた。




 食堂に着くと、ミドーとオレンは先に食べ始めていて、キイロも自分の食事を運んでいるところだった。


 俺もすぐに自分の分の食事をもらってくる。昨日の夜に食べていなかったので、珍しく大盛にして、みんなのいるテーブルに向かった。



「シン、昨日は悪かった」



 席に着くとミドーが急に謝ってきた。どうやら俺が昨日倒れたのは、ミドーが追いかけまわしたせいだとキイロに言われて。俺が目を覚ましたら謝ろうと思ったみたいだ。



「謝ってくれたからもう気にしないよ。俺も自分の体力の限界を超えて、倒れるまで走り続けたのが悪かった。俺こそ、ミドーが悪者みたいにさせちゃってごめんね」



 お互いに謝って、昨日あったことは水に流すことになった。



「シンくんもミドーくんも、これでいつも通りに過ごせますね」


「そうだね。ミドーとシンの関係がすぐに直って良かったよ」



 こうしてまた仲良くできるようになったので、朝食を楽しんだ。






 ■■






 その後の朝と昼の鍛錬は、ミドーが追いかけてくることはなく、自分のペースで走ることができた。ランド先生に部屋まで運んでもらったお礼も伝えた。


 今は訓練所に来て、今日も『スマッシュ』を鍛えていく。



「今日は的も用意してもらったから、当てていく鍛錬をするぞ」



 スライムとほとんど同じ大きさの的から10メートル離れた位置で魔法の完全詠唱をする。



「『スマッシュ!』」



 1発目は圧縮しないで、完全詠唱だけの威力で飛ばした。魔法は的の真ん中に当たり小さな穴を開けることに成功する。



「よし! 圧縮しなくてもダメージが少し入るようになったんだね」



 2発目は5割ほど圧縮した『スマッシュ』を飛ばす。的の真ん中から少し右に当たると、的の半分が壊れた。


 3発目は左側を狙って飛ばすと、的は一部を残して壊れた。



「『スマッシュ』の威力は前よりも上がっているね。後は残った的の欠片にちゃんと当てられるかどうか……」



 俺は集中力を高めて狙いを正確にしていく。圧縮しない方が狙いやすいが、1発目のように小さく穴を開ける程度になりそうなので、狙いにくくなりつつ、大きさも小さくなって当たりにくくなる圧縮を今回も選択する。



(あと少ししか残ってないから高威力は必要ない……壊せる威力さえ出せれば狙いやすさを優先しても良い)



 4発目は6割ほどの大きさの『スマッシュ』で飛ばした。これなら残りの的を壊せる威力を出しつつ、さっきよりも正確に狙った場所に飛んでいく。



「どうだ!」



 飛ばした魔法は的に命中し、残っていた的の欠片は壊れていた。



「よし! 圧縮した『スマッシュ』を3発当たればスライムは倒せそうだな。希望は手の届くところまで来ている。最後の5発目を使って今日は終わりだ!」



 そう意気込んでみたものの、的はさっきの1つしか用意していなかったので、的に向かって魔法を使うことはできない。


 色々考えた結果、魔法を維持しながら移動して飛ばし、今日の『スマッシュ』鍛錬は終わった。






 ■■■






「ランド先生!」



 訓練所から部屋に戻っている間にランド先生を見かけたので話しかける。



「シンくんじゃないですか、身体は大丈夫ですか?」


「はい、今は朝の不調が嘘のように元気になりました」


「それは良かったです。ところで、こちらから来たということは、訓練所を使っていたのですか? 最近はシンくんの鍛錬に付き合えなくてすみません」



 俺の魔法鍛錬に来られないことを申し訳なさそうに謝るランド先生。



「いえ、ランド先生だって忙しいのに俺の鍛錬を気にしてくれるだけでもありがたいです」


「私のことを気遣ってくれてありがとうございます。また暇ができればシンくんの様子を見に行きますので、私にできることがあれば遠慮なく言ってください」



 そう笑顔で言ってランド先生は去っていこうとするので、俺は呼び止めた。



「あ、待ってください! 実はお願いがありまして…………」



 俺はランド先生に、とある物があれば用意して欲しいとお願いしたところ「明日の魔法鍛錬までには用意しますね」と言って、今度こそランド先生は去っていった。


 俺のお願いが通って、明日の魔法鍛錬が楽しみになった。






 今日は朝から身体が動かなかったり治ったり、

 的を圧縮した『スマッシュ』3発で壊せたり、

 いつもと変わった1日だった。

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