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47話 強くて授業!④(無事)

 次の日の朝になった。


 俺は普通の鍛錬をしたかったのだが、またミドーに追いかけられて全力で追いつかれないように逃げていた。



「なんでまた追いかけてくるんだー!」


「シンに勝つためだー!」



 俺は今日もなんとか逃げ切った。俺とミドーは肩で息をしているが、この前追いかけられたときよりもミドーの呼吸が荒くなっていないことに気が付く。



(このままだと近いうちに追いつかれるな……)



 朝の鍛錬はミドーとのじゃれあい以外は変わったことなく終わった。





 ■





 お昼は教室で授業、ランド先生が入ってきて早速授業が始まる。



「ランド先生無事だったのですか!?」



 いきなり叫んだ俺にみんなの視線が集まる。昨日帰ってこなかったランド先生が普通に授業を始めようとしていたので、つい言葉に出てしまった。


 オレンとミドーとキイロはハッとした表情をしているが、他のみんなは不思議そうな顔をしている。



(そうだった、俺たち以外はランド先生が列から離れていたことを知らないんだ)


「ランド先生、なにかあったのですか?」



 他の生徒からそのような質問が飛ぶ。ランド先生は少し考え質問に答えていく。



「そうですね、今日やる予定の授業に取り入れられそうなので話しましょうか。昨日みなさんを森から帰らせるときに獣の咆哮を聞いたと思います」



 みんなはうんうんと首を縦に振り、横の人に「そんなことあったね」と話している。



「私はみなさんから離れて、咆哮を出している魔物がこちらに来ないように警戒していました。そして魔物姿が見えるほどの距離まで近づくと、青い体毛の熊の魔物だと判明しました」



 俺はそれを聞いた瞬間、つい最近出会ったあの魔物のことだと分かった。



「ここに来たばかりのみなさんは知らないことでしょうが、少し前にギルドから調査依頼が出されていた強個体の魔物です。しばらくは隠れていたのか、魔物の痕跡だけしか見つかっていなかったのですが、私がたまたま見つけたので、これ以上被害が出る前にその場で討伐することに決め、帰ってくるのが遅くなったということです」


「じゃあもしかして、ランド先生はあの魔物を!」



 俺はそう聞く、すると少し言葉を溜めた後に「無事に討伐完了しました」と返ってきた。


 教室にはみんなの賞賛の声が響き渡る。ランド先生はみんなを静かにさせて咳払いをして授業を再開させる。



「ではここから授業の話をします、今日のテーマは冒険者やクエストについてです」



 ランド先生は黒板にクエストのことを書いていく。俺は1度やったことがあるので簡単にまとめる。


 冒険者には『下位・上位・最上位』のランクがあり、クエスト難易度は(ほし)の数で決まり、

『☆1~☆3』が下位で、『☆4~☆6』が上位で、『☆7以上』が最上位である。



「冒険者は自分と同じランクのクエストしか受けることができません。私が先ほど話した魔物は、ギルドから☆3の調査クエストとして出されていました」


「というとランド先生は下位クエストをクリアしたってことですか?」



 俺は質問してみた。



「いえ、私の冒険者ランクは☆4なので上位冒険者となります。ですので、本来はこの☆3のクエストを受けることはできないのです」



 みんなランド先生の言っていることが分からないのか、困ったような顔をしている。教室もざわざわとしてきた。



「みなさんが困惑する理由は分かります、今からちゃんと説明しますので静かにしてください。☆3は調査クエストでしたが、私が受けていたのは☆4の討伐クエストなのです」


「あれ? それじゃあクエストは2種類あったということですか?」


「いえ、ギルドに貼られていたクエストは☆3の調査クエストだけです。しかし私は、ギルドから直接クエストを依頼されていました。こういうクエストのことを緊急クエストと呼びます」



 ランド先生はこれから説明することを黒板に書いていく。



「クエストは冒険者が依頼を受注するまでギルドは待つ必要がありますが、緊急クエストはギルドが冒険者を指名してクエストを受注させます。普通のクエストより報酬は高いです。もちろん断ることもできます」


「調査クエストがあるのに、なぜランド先生には討伐クエストを緊急で依頼したのでしょうか?」


「それはですね、魔物の実力をギルドが把握できていなかったからです。強個体や突然変異種のクエストに多いのですが、魔物のデータが少なく、通常個体と生態が変わるので行動範囲や弱点などが変わり、正確な情報を持っていないからです。


実力が正確にわかるまでは討伐クエストを出すことが難しく、最悪を想定して、信頼できる冒険者に緊急クエストとして依頼してきます。私は上位冒険者だったので、クエストを☆4まで上げる必要があったということです」


「なるほど」


「調査クエストで十分に魔物のデータが集まれば、討伐クエストがギルドに貼りだされるので、みなさんが緊急クエストを受注しても無理をしなくて大丈夫ですよ」



 ランド先生は笑顔で場を和ませた。



「あ、でも夕方になっても帰ってこなかったということは、苦戦したってことですよね? あのときよりも強かったということでしょうか?」



 俺はランド先生が魔物と戦っていた光景を思い出しながら聞いてみた。



「はい、あのときよりも強くなっていました。あのまま発見が遅れていれば私も危なかったです。みなさんがクエストを受注するときは、クエスト通りに動いてください。調査クエストでは調査だけに専念してください、仮に戦闘することになっても逃げることを優先してください。分かりましたか?」


「「「はい!」」」


「よろしい、では授業の続きを始めます」



 その後、軽く勉強をして明日テストをすることを伝えられ授業は終わった。




 今日はランド先生が無事に帰ってきたことがなにより嬉しかった。

 そんな1日だった。

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