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45話 強くて授業!②(森)

 次の日の朝、俺たち生徒と先生たちは街の外に出ていた。


 今回の外出は実戦訓練ではなく、魔物を観察するために集団で草原を移動している。俺は魔物との戦闘経験があるが、他の生徒は魔物を実際に見たことがない者も多いみたいだ。



「魔物といつ会えるんだ!」



 ミドーが声を荒げて言う。その気持ちはミドーだけでなく俺やみんなも感じていた。いくら歩いてもスライム1体も見当たらないのだ。



「魔物はこんなにも現れないものなのでしょうか?」


「俺もあまり街の外には出ないから詳しくは分からないけど、実戦訓練をするときは多くの魔物と会ったし、観察だけのときでも、もう会ってるころかな」



 オレンの疑問に俺の経験したことを話す。もう森の近くまで移動しているのに、誰も魔物を発見できない。平和と言えば聞こえは良いが、ここまでなにも無いと、かえって不安である。


 魔物を見逃していないか注意深く周りを観察していると、ランド先生の指示が聞こえた。



「みなさんは他の先生方とここで待っていてください、私は安全確認のため森の中に入ってきます」



 そう言って森に入っていく。みんなは歩き続けて疲れたのか、座って休憩をしている。先生たちも合わせて座る、周りの警戒を緩めずいつでも行動できるようにしていた。


 最初はいつ魔物が出てもおかしくない状況に、話し声1つ無かったが、時間が経つにつれて徐々に緊張も解け、この状況に関係ない雑談をする人も現れ始めていた。



「みんな緊張も取れてきてるね、まだ終わってないけど初めての魔物観察の感想はどんな感じ?」



 俺は、ミドー、オレン、キイロに聞いてみる。



「どうもこうも、魔物と会ってないからクソとしか言えないな」


「そうですね、このまま1体とも会えないというのは、何も学べず困ります」


「本だけでしか見たことないから、早く実物を見てみたい」



 しばらく雑談もしながら休憩をしているとランド先生が戻ってきた。先生たちを集めて話しているが、遠くてなにも聞こえない。



「みなさん、本来であればもう帰るところですが、1体の魔物にすら会えていないので、予定を変更して森の中まで観察範囲を広げようと思います」



 どうやら話し合っていた内容は、森の中に入るかどうかのことみたいだ。



「森の中は草原よりも見晴らしが悪いので、今まで以上に固まって行動をしてください。先頭は私がやります。先生方は最後尾に1人、残りは生徒たちの間に入って行動してください」



 森に入る準備が進んでいく。さっきまでは好きなように歩いていたが、2列で行動をするらしい。


 右が俺、その左にミドー、俺の後ろにオレン、ミドーの後ろにキイロという配列になった。


 俺たちはランド先生のすぐ後ろを歩くことが決まる、俺は他の生徒に比べて戦闘経験もあるから危険が多い前のところに配置されることは予想できていた。





「並びましたね、では出発します」



 俺たちはランド先生の後を付いて行く。


 森の中は視界が悪い、木の背は高くなく、木の間隔も空いているが、奥にまた木がありそのまた奥も木で埋め尽くされている。


 似たような景色が続き距離感が分からない、そのうえ木が隠れるための障害物にもなっている。草原のときに比べて暗くもなっていた。



「あれはなんだ?」



 俺が目を凝らして周りを確認していると、進行方向からは外れる位置に赤い布が木に巻かれていた。



「シン、なにがあったんだい?」


「あっちの奥の方に赤い布が見えない?」


「あ? どれだ?」



 キイロに聞かれ、俺は赤い布の方に指をさす。ミドーは俺の指さした方向をキョロキョロと探している。俺たちの声が聞こえていた他の人は、目で周りを探って赤い布を見つけようとしている。



「あ、赤い布見つけました」


「僕も見つけたよ。あと見つけてないのはミドーだけだね」


「だー! どこにも赤い布なんか無いぞ!」



 俺たちの中で見つけけられていないのはミドーだけ、移動しながらも探し続けるミドーだったが、結局見つからず、赤い布から俺たちも離れすぎて見えなくなった。



「あの赤い布はなんだったのでしょうか?」


「俺も初めて見たから予想でしかないけど、目印みたいなものじゃない? 同じような光景ばかりで、自分のいる場所もよく分からないし」



 オレンの疑問に俺が答える。するとランド先生から答えを教えてもらった。



「シンくん、目印というのは正解ですね。あの布は魔物の痕跡があった場所に設置される布です」


「痕跡があった……ということはもう残ってないってことですよね?」


「その通りです。持ち帰って調査したり、時間が経つと他の魔物に荒らされたりして痕跡が無くなってしまうので、しばらくの間は、ああして布を近くに設置しているそうですよ」



 俺はそういうことかと納得をした。こうやって知識が増えていく、そうして布に意識がいっていた間にかなり歩いたのか、先が明るくなっている。


 木が伐採されているのか、その空間だけ切り株がいくつもあり、木製の小屋がぽつんとあった。



「ここは……」


「ここは冒険者用の簡易ベースキャンプですね。小屋の中にはベッドとランタンと荷物入れしかありません」



 俺が質問する前にランド先生は教えてくれた。そして、全員がここに来るまで待機するようだ。


 最後尾の先生もここに到着して、生徒がいなくなってないか名前を呼んで確認する。全員無事に付いてきていることが分かったので、ここに来た理由を説明し始めた。



「みなさんをここに連れてきた理由は、ここに魔物が潜んでいることを確認したからです。今もいるので見つけてみてください」



 魔物が近くにいる、そう言われて周りを見渡す。しかし魔物は見つからない。しばらくみんなで探していても見つからないので、ランド先生がヒントを出してくれた。



「みなさんはここに来てから魔物を見ているはずですよ。今も視界に入っているはずです」



 ニコニコしながらそう教えてくれる。



(今も視界に入っている……ということは俺たちが魔物と気が付いていないだけか?)



 そう気が付いてから視界に入るものを注意深く観察する。するとあることに気が付いた。いくつもある切り株のうち1つだけ変なのだ。その変な切り株だけ年輪が無いのである。


 疑い始めたらいくつも変なところが見えてくる。まず切り株の間隔が変な切り株だけ他と近い、周りと比べて少し暗い色をしている。



「もしかして、あの切り株ですか?」



 俺が指をさして聞いてみるとランド先生の口角が上がる。



「その通り、シンくん正解です。本当に魔物かどうか確認してみましょう」



 そう言ってランド先生は切り株を撫で始める、すると切り株は震えだし森の中へと移動していった。




 今日は森に入ったり赤い布のことだったりと新しいことが起きていた。

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