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44話 強くて授業!(経験差)

 始まったのは魔法の授業、俺がやったときと同じ内容だった。


 スキルは、魔法・技・パッシブの3つの総称。


 魔力は、火・水・雷・土・風・光・闇・星・無の9属性。


 詠唱の種類は、完全詠唱・省略詠唱・無言詠唱と3つ。


 オレンとキイロは、なるほどと理解し始めているが、ミドーは目つきが鋭くなって頭を抑えていた。今の俺は当たり前のように知っている知識だが、初めて聞いたならミドーと同じ反応が普通なのだろう。




 教室での勉強が終わると、外に出て魔力の使い方を教わる。


 隣の人と、両手を広げてもぶつからないくらい間隔まで離れて、立ったまま魔力を身体に巡らせる。



(魔力だけ巡らせるなら瞑想と変わらないね)



 みんなは目を閉じて魔力に集中しているが、俺は慣れているので周りを観察しながらでも魔力を巡らせることができた。


 オレンは魔力が安定している。キイロも少し不安定なところはあるが許容範囲内である。ミドーはかなり不安定で、ところどころ魔力が身体から離れて空へ消えていった。



(初めてのときはこんなに余裕をもって魔力を操れなかったな、あっ、今回もジーク校長は見に来てるのかな?)



 学校の屋根を見るが、ジーク校長の姿は無かった。



(今回は見に来てないんだね)


「こっちじゃよ」


「うわぁ!?」



 後ろから両肩を掴まれて、耳元でささやかれて声を出して驚いてしまった。その声でみんなは目を開け、こちらに注目をする。



「ほっほっほ! 驚いたじゃろ?」



 悪戯が成功して喜ぶ老人、すかさずランド先生が注意しに行く。



「ジーク校長、見学は構いませんが、みなさん鍛錬中ですので邪魔するのは困ります」


「それはすまないことをした」



 オロオロしだして逃げるようにその場を離れるジーク校長。普通に移動するのではなく、足の裏に魔力を固めて足場にして、空中を歩いていった。



「……なんだったんだ、あの爺さん?」



 ミドーの言ったことは、みんなも同じ気持ちだった。




 そんな感じで新しく生徒になった人たちの1日目の授業が終わった。





 ■





 2日目の授業は基礎体力を鍛えるために、朝食後から外で走っている。


 10分間、自分のペースで走るというもの。


 俺は武器も防具も装備しないで走ることは久々だったので凄く楽に感じた。


 3か月も鍛えてきた俺と、始めたばかりのみんなでは差があり、俺が先頭を走っていた。2番目はミドーで俺を追いかけてくる。



「ぜってぇ追いついてやる!」



 息を荒くしながら全力で追いかけてくるミドーにつられて、俺も追いつかれないように全力で逃げていた。それなのにミドーとの距離は変わっていない。


 そのあと10分間ミドーに追いつかれることはなかったが、全力疾走をさせられ続けてヘトヘトだった。



「はぁ……はぁ……疲れた…………」


「はぁ……はぁ……俺が追いつけないとわな…………」



 俺とミドーは大の字になって地面に寝転がる。



「……なぁ、シン」


「……あれ、俺は雑魚じゃなかったの?」



 今まで雑魚と呼んでいたミドーが俺の名前を言ってきたので、ミドーの方に顔を向ける。



「……冒険者になれないお前は雑魚だと思ってたが、俺が追いつけなかったんだから俺より雑魚じゃねぇことは分かった」


「……結構危なかったけどね……よっと」



 息も落ち着いてきたので、俺は立ち上がる。



「ミドーも疲れは取れたでしょ、立てる?」



 俺はミドーに手を差し出す。



「あぁ、立てるよ」



 そう言ってミドーは俺の差し出した手を掴み立ち上がった。



「ミドーはやっとシンと仲良くできるみたいだね」


「僕もミドーくんとシンくんは仲良くできないと思っていましたよ」



 キイロとオレンに言われたことで、ミドーは恥ずかしいからか顔を赤くして怒っていた。キイロもオレンもニコニコと笑って対応していた。




 そんな休憩時間も終わり、次の授業が始まる。




「疲れは取れましたか? これからみなさんには色々な武器を試してもらいます」



 いつの間にか運ばれてきている木製の剣・斧・槍・弓などの武器たち。


 俺は使い慣れている剣を選ぶ、最近は金属製の武器ばかり装備していたおかげで、木製の武器が軽く感じた。


 オレンはナイフ、ミドーは鎌、キイロは爪を最初に使うようだ。


 装備した武器を10回素振りして、違う武器に変えて同じことをやる。俺はここにあるすべての武器に触ったことがあったので、誰よりも早く素振りを終わらせることができた。


 全員の素振りが終わったところで、ランド先生が簡単な技を披露してくれる。



「『ドン・ストーン』」



 縦2メートルの石を用意して、装備している武器に薄っすらと魔力を込めて石に攻撃する。木で石を砕くというありえないことを、魔力を使うことによって可能にしていた。



(改めて見ると、武器に魔力を流すって強いんだな)



 強いと思ったと同時に、俺を瀕死にまで追い詰めたベアードという魔物は、金属製の武器に魔力を流して強化した一振りに耐えた硬さが分かった。


 そんなことを考えている間に、次は俺たちもランド先生がやっていたように武器に魔力を流す鍛錬だ。



(まだ武器に魔力を流すことはできるけど、留めることができないな……)



 俺の武器からは魔力が外に漏れだしていた。眩暈がしなかったのは成長した証だろう。魔力操作が上手いオレンも苦戦して額に汗が流れている。キイロは眩暈がしているようだ。ミドーは魔力が漏れすぎて膝をついている。



「はいそこまで、みなさん朝からよく頑張ってます。お昼も授業をやるので、身体を洗い、昼食後に教室に来てください」



 それを聞いて座り込んで休む生徒たちがいる中、俺は武器を片付け、ミドーに肩を貸しながらお風呂に向かった。





 ■■





 身体も綺麗にして、食事も楽しく取り、教室で授業開始を待っている。


 お昼の授業では魔物についての本を渡され、魔物の見た目や生息地、攻撃方法やパッシブスキルを教えてもらっている。


 これも聞いたことのある内容なので知っている情報ばかりだった。


 ただ、今回は俺が強個体の魔物に襲われたからか、強個体や突然変異種についてランド先生が教えていた。



「魔物にはたまに強い個体のものが現れます。それを私たちは『強個体』と呼んでいます。強個体は数百体に一体の感覚で出ることが確認されています。また、それ以上に強い『突然変異種』というのも数千体に一体現れたりします」



 俺が前に本を読んだときに軽く流していた情報を説明してくれる。



「突然変異種の恐ろしさは強さだけでなく、攻撃方法や弱点が通常個体と違うところです。今まで通じていた戦い方が通用しなくなりますので、戦う際には十分気を付けるようにしてください」



 こうして魔物に関しての授業は終わった。




 最初は険悪な雰囲気だったミドーとの関係も、今では力を認められ名前を呼ばれるようにまでなった。

 そんな日だった。

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