39話 3回目の実戦訓練!(悪寒)
今日は、俺とアオとハクの3人でスライムを倒す実戦訓練だ。
俺たちは朝の鍛錬を終えた後、昼食を済ませて街の外まで出ていて、今はスライムを探しながら草原を歩いている。
「まさか模擬戦終わった次の日に実戦訓練があるなんて……しかも今回は3人で戦うのか……」
「シンくんも怖いよね、僕も怖いよ。でも、ハクくんがいるからなんとかしてくれると思う。僕も後ろで支援するよ!」
「……前線には俺が出るが、2人を守れるほど強くは無いぞ」
魔物がいる街の外なのに話ながら進んでいた。
「それにしても今日は暑いなぁ」
お昼の暑い時間帯とはいえ、今までで一番熱く感じている。
「僕たちが入学したのが春で、もうそろそろ3か月になるから夏が近いのかもね」
アオがそんなことを教えてくれた。
「そっかぁ。もうそんなに学校にいたのか」
俺はみんなと過ごした時間を思い出しながら、うんうんと首を縦に振っていた。
「…………! いたぞ、スライムだ」
ハクの言葉に俺とアオは身構える。ハクの視線の先にスライムがいた。俺はその周りを見渡すと別のスライムが1体見えた。
「ハク、目の前にいるスライムの右奥にもう1体スライムがいる。どうする?」
「……さすがに2体同時は厳しい、それに俺たちが倒すのは1体でいい。スライムが1体になるまで待とう」
「分かった。アオもそれでいいよね?」
「うん、それでいいよ」
俺たちは屈んで様子を見る。しばらく待ってもスライムは減るどころか、別のスライムも合流して3体になっていた。
「これだけスライムが集まると1体だけになるのを待つより、引いて別のスライムを探した方がいいかも」
俺は2人にそう提案する。2人とも俺の話に乗ってくれた。スライムたちを刺激しないように、静かにこの場から離れた。
スライムが見えない位置まで離れることに成功して、俺は「はぁ」と大きく息を吐いた。さっきまでの緊張なのか、それとも外の暑さなのか分からないが、額から汗が出ていた。
「2体いるときに戦わなくて良かったぁ」
「……俺だけしかまともに戦えるやつがいないことが幸いだったな。もしユカリが一緒だったら戦っていたかもしれない……」
「そうだね、もし戦っていたら僕とシンくんとハクくんが、スライムと1対1で戦うことになっていたと思う。そうなっていたらハクくんは大丈夫でも、僕とシンくんは危なかった……」
俺たちは逃げて正解だったと自分たちの行動をよしと考え、さっきとは別の場所に移動してスライムを探し始めた。
スライムを見つけても2体や、多いときには4体いることもあった。どんどん先に行き、しばらく歩くと森との距離も近くなっていた。
「さすがに森も近くなってきたし、スライム以外の魔物が出ても困るから、進むのは止めて戻ろう」
俺が森に背を向け、来た道を戻ろうとする。
「……そうだな……! あそこにスライムがいるぞ。しかも1体だ」
「周りにも他のスライムはいないみたいだよ」
ハクが1匹で行動しているスライムを見つけた。アオも周りを確認して他のスライムがいないことを報告する。
「……アオ、俺に魔法を頼む」
「分かった『アームド』! シンくんも『アームド』! そして僕にも『アームド』!」
アオが魔法を使うと何かに包まれたようになった。
「アオ、これはなに?」
「それは防御力を上げる魔法だよ。自分の身体を触ってみて」
「これは!?」
アオに言われた通りに自分の身体を触ると、服を多く着込んでいるみたいな感覚が手に伝わってくる。
(これは模擬戦トーナメントでも感じたことのある感触だ! ということはあのときにはもうアオはこの魔法を使えていたのか)
俺はそんなことを思い出していた。
「魔法だから重さは無いよ。だから動きに影響は出ないはず」
「本当だ!」
腕を振ったりしてみるが全く重さを感じなかった。
「……準備はできたようだな。俺は矢で攻撃する、その後にシンとアオは魔法で攻撃してくれ。あとは各自の判断に任せる」
「「分かった!」」
俺は完全詠唱をして『スマッシュ』を作る、これでいつでも攻撃できる。ハクも矢を持ち魔法を唱える。
「……『パラシス』」
矢に麻痺毒魔法が付与される。そしてスライムに狙いを定めて放った。その間に俺は『スマッシュ』の圧縮を始める。
「スラ!」
スライムに矢が当たった。それを見て俺とアオが魔法を唱える。
「『スマッシュ』!」
「『ウォータ』!」
圧縮して威力の上がった魔力の塊と、水の塊がスライムを襲う。
「スラ!?」
アオの魔法が当たった衝撃でスライムが飛ばされ、ゴロゴロと転がっていく。俺の魔法は変な方向に飛んで行った。
すぐにハクが矢を放つ、スライムに当たるがあまりダメージにが入っていない。俺は魔法を当てるために、矢の射線上に入らないように回り込みながらスライムに近づく。
俺が移動している間も、ハクは矢を放ち、アオは魔法で攻撃をしている。
ある程度スライムに近くなったので完全詠唱をして魔法を作る。そして圧縮して『スマッシュ』を使った。
「スラ!」
今度はスライムの頬にかすった。かすっただけだがスライムの身体には傷ができた。
スライムが俺の方に向かって体当たりをしてくる。俺は腕を使ってガードする。
「うっ!」
体当たりの衝撃が来るが、思ったよりも痛みは少なく、その痛みもすぐに引いていった。
(アオの魔法のおかげでスライムの攻撃にも加護が耐えられた!)
すぐにナイフに装備を持ち替えたハクが援護に来る。スライムを何度かナイフで切り、俺の前に立った。
「……シン、大丈夫か」
「あぁ、アオの魔法のおかげで痛みは無いよ」
ハクの攻撃に怯んだのかスライムが森の方に逃げ始める。
「スラ……」
「逃がすか!」
麻痺毒が効いてきたのか、スライムは逃げる速度が遅く、簡単に追いつけた。
俺は剣で攻撃をしてスライムに攻撃するが、剣での攻撃ではスライムにダメージを与えられなかった。その間にもスライムは森に近づいていく。
「剣じゃまだ無理か! だったら魔法で」
俺は完全詠唱をして圧縮。アオは魔法を使って攻撃をして、ハクも弓矢に持ち替え攻撃をする。
「『スマッシュ』!」
圧縮された魔法が当たったが、その衝撃でスライムは森に近づいてしまった。
(あと少しで森に入られて逃げられる!)
俺は急いでスライムの前に移動しようとしたら、スライムが動きを止めた。
俺の身体にも寒気が走った。
スライムは森を見つめている、俺もそこに視線をやる。
「グルルゥゥ……」
そこには赤く目を光らせた魔物がいた。




