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38話 模擬戦トーナメント!⑪(優勝)

 模擬戦が終わった俺とアオは観戦している人たちのところに移動する。


 次はハクとユカリの決勝戦だ。


「ハクくん、前へ」


 ハクは背中に弓矢、腰にはナイフを装備している。


「ユカリさん、前へ」


 ユカリは腰に細身の剣を装備している。


 移動する2人を見ている俺たちにも緊張が伝わってくる、空気がピリピリとしていた。


「この試合、私が勝たせてもらいますわ」


「……望むところだ」


 お互いに距離を開けて、試合が始まるのを待っているユカリとハクの意気込みに歓声が凄い。


「これが最後の戦いです、いきます!」


 審判の先生がそう宣言して石を高く上げ爆発させる。試合が開始早々ユカリは横に飛んだ。


「っ! 危ないわね、爆発の音で矢の音を隠すなんて……っ!」


「……」


 ハクは無言でユカリに矢を放ち続ける、ユカリは最初こそいきなり矢を放たれて体勢を崩していたが。だんだんと立て直して、少し横に避けるだけでよくなっていた。


 ユカリはハクに向かって突進する。ハクもそれに合わせて矢を放つ、ユカリは矢の射線上から少し身体をずらすだけで、矢は髪をかきわけながら通過していく。


 しかし、ユカリの目の前には矢が迫っていた。ハクはユカリが避ける場所を予測して、

 もう一本放っていた。


 これにはユカリもたまらず、横に飛びながら身体をひねって避けようとする。

 しかし、足に矢がかすってしまった。


「っ! えい!」


「うっ……」


 足にかすったとはいえ、そのまま次の攻撃が来る前にハクを切る。すぐにハクはナイフに持ち替え反撃するが、もうユカリは離れていた。


「初めて攻撃当てられちゃいましたわ……」


「……随分と余裕だな」


 矢が当たった足をさするユカリに矢を2本同時に放つ。当然ユカリの速さなら楽々避けていく。


 今度はジグザグに移動してハクの方に向かって来た。それに対してハクは3本同時に矢を放ってきた。


「この速度の攻撃でしたら避けるまでもありませんわ!」


「いっ!」


 自分の方に飛んできている矢だけを剣で叩き落としてどんどんハクに近づき、今度は腕を切りつける。ユカリが振り向く前に矢を放つが、ハクが予測してた場所より手前で止まって振り向いた。


「ひぃゃ!」


 ユカリは、矢が顔の横を通りすぎたことで変な声を出し、通りすぎた矢を目で追ってしまった。すぐに気を取り直し、ハクの方を向くが、3本以上はある矢が目の前に迫ってきていた。


 その場からすぐに逃げ出したが、広い範囲で矢が放たれていたこともあり、そのうちの1本がユカリに当たってしまう。


「ん! 大した威力ではないですが、このまま受け続けるのはまずいですわ」


 ユカリはハクの周りを回りはじめ、攻撃の機会をうかがう。ハクは空に向かって大量の矢を何度も放った。


「いったいなにを……うあっ!」


 足元近くに矢が刺さる、そこから雨のように矢が降ってくる。ユカリに当たらない矢もかなりあったが、重力に従って落ちてきた矢は地面に刺さるほど威力が上がっていた。


 しかし、ユカリは上を見ることはできない。上を見ればハクが横から射抜くからだ。それに、刺さった矢が邪魔で速い移動に制限をかけていた。


 避けることに徹して、なんとか矢の雨を一度も攻撃を食らわずに耐えた。


「はぁ……はぁ……もうこれでハクくんの矢は無くなりました……わ!」


「ぐっ!」


 ハクはナイフで反撃するも、ユカリの速さに追いついていなかった。


「えい! えい! やぁ!」


「…………っ!」


 ハクは地面に刺さった矢を拾いながらユカリに反撃する、しかし、ユカリの攻撃が入るばかりで、ハクのナイフは空を切って当たらなかった。


「はぁ……はぁ……えい!」


「っ! かなり疲れているようだな」


 肩で息をしながらもハクに攻撃を当てていく。


「はぁ……はぁ……そうですわね、いつもより疲れましたわ……」


 ハクは拾った矢を1本使い攻撃する。


「疲れていても、1本なら避けられますわ……!?」


 ユカリは避けようとしたが、急にめまいのような感覚に襲われてその場で転んだ。転びはしたものの、矢は頭上を通り過ぎ当たらなかった。


「……そろそろ毒が回ってきたようだな」


「毒? そんなものどこかにあったかしら……まさか!?」


 ここでユカリはハクがなにをしたか気が付いたようだった。


「……そうだ、俺の矢には毒が仕込まれている」

「そんな……毒を使うなんて……」


 ユカリは悲しそうに言った。


「『パラシス』」


 ハクのナイフに魔力が集まっていく。


「……俺は麻痺の効果がある『パラシス』という魔法を矢に使っただけだ」


 そう言ってナイフを一振りすると、ナイフについていた魔力は消え去った。


「……ユカリ、俺はお前に勝つために図書室から魔法書を借りて覚えたんだ。それを卑怯だと思われたら悲しい」


 ハクの表情は変わらないが、悲しそうな雰囲気が出ていた。


「……そうなのね、私に勝つために……覚えた魔法……」


 ユカリは立ち上がりハクと目を合わす。ユカリの目は先ほどの悲しさは消えていた。


「なら、私はこの状態でハクくんに勝ってみせるわ!」


 震え始めた手を抑えてハクに向かっていく。麻痺の毒が身体に回りはじめて動きが鈍くなったとはいえ、かなり速い。


 向かってくるユカリに矢を放つ、ユカリは大きく避けながらもハクに向かって進んでいく。


「えい!」


「うっ! はぁ!」


「ぐっ!」


 ユカリの攻撃も当たるが、ハクの攻撃も当たるようになってきた。


「やぁ!」


 下から上に向かって細身の剣を振り上げるユカリ、これをハクは弓を使ってガードする。すぐにナイフで突き刺そうとするが、ユカリは後ろに飛ぶことで回避していた。


 ハクは矢を使ってユカリを動かしていく、時間を稼ぎ動かしていけば麻痺が回りやすくなり、どんどん有利になっていくからだ。とはいえ、拾えた矢は少ないので、矢が当たるまでユカリの動きが鈍くなることはなかった。


「……はぁ!」


「うぁ!」


 矢を使い果たしたハクは自分から攻めていく、ナイフをガードすることは難しいので、ユカリは避けて対応するが、ちょっとしたふらつきの隙をつかれて攻撃を受けてしまう。


 反撃で細身の剣を振るが、また弓でガードされている。


「いっ! どうせ動けないのでしたら……えい!」


「ぐっ!」


「あぁ! うっ! いっ!」


 ユカリは逃げずに攻めてきた。これにはハクも驚きユカリの攻撃をガードできなかった。そのあとナイフで何度も反撃をしていく。いつも避けていたユカリはまともに何度も攻撃をくらう。


 ユカリの必死の猛攻を弓でガードして、合間にナイフで反撃を入れていく。そんなことを繰り返していると……


「そこまで!」


 審判の先生によって試合終了の声がかけられる。観戦していた俺らも優勝者の宣言を待っていた。















「優勝は、ユカリさんです!」




「「「わぁぁぁ!!!」」」


 歓声で凄くうるさいが、俺も気分が良かった。


「ハクくん、私が勝ったわよ」


 ユカリは満面の笑みでピースをしてハクにアピールをした。


「……あぁ、悔しいがユカリの勝ちだ」


 ハクはユカリを称えた。


「ふふふ……悔しそうな顔を見れて良かったわ…………」


 ユカリは目を閉じ倒れた。近くにいた先生がユカリを支える。


「ユカリ! 大丈夫か!」


「ユカリちゃん!」


 俺とアオはユカリのそばまで近づく。ユカリはスースーと寝息を立てていた。


「眠っただけかー、良かったぁ」


「倒れたときはすごく焦ったよ」


 俺もアオも、ユカリが無事で良かったと安心した。ユカリは先生に抱えられながら校内に帰っていった。




 模擬戦トーナメント、凄く長く感じたこの1週間は、

 俺の全敗とユカリの全勝で終わった。

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