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36話 模擬戦トーナメント!⑨(休日)

 校庭に残っているのは、アオとハクとユカリと俺の4人。


「まさか俺とアオが戦うことになるなんて……」


「僕も驚いたよ、どこかで勝てるかなーと思ってたのに全部負けちゃった……」


 負けたのに落ち込まない俺とは反対に、アオはめちゃくちゃ落ち込んでいて、喋っているうちにどんどん声が小さくなっていった。


「私もハクくんと決勝で戦うと思わなかったわ、どこかでぶつかると思っていたもの」


「……俺も最後の相手になると思ってなかった」


 ハクもユカリもお互いを横目で見ながら話している。


「最後まで残ったからには良い戦いをするように頑張るよ!」


「うん、僕もシンくんとの試合を良いものにしたい」


「私も悔いの残らない戦いにしたいわ」


「……俺も恥ずかしくない戦いをしよう」


 それぞれの思いを言い、鍛錬を始める。




 ■




「今まで相手が誰か分からなかったけど、相手がアオと分かればかなりやりやすい」


 アオの武器は槍、見たことも対策もやったことのある武器だ。イメージの相手に槍を装備させる、見た目もアオに似せていった。


「1回しかまともにアオの戦いを見てないから詳しく分からないけど、相手に怪我をさせないような戦い方をしていた」


 槍で攻撃するときも、刀身が無い方で攻撃をしていた。でもここで考えを改める、もう何度も模擬戦をしたことで、戦いに慣れて普通に攻撃してくるかもしれない。俺も含めて、みんなこの模擬戦でやってこなかった戦い方をしている。当然アオだって1回戦とは違う戦い方をしてるだろう。


「アオだって俺の戦いを見てるし、対策を考えてきてるはず。でも、対策の対策をしている余裕は俺に無い」


 まだやったことのない戦い方をしようにも、今の俺は剣を振ること、魔法1つと選択肢がかなり少ない。他のみんなは魔法を使ってないからもっと選択肢は少ないはずなのに、工夫して戦って対策されないようにしている。


「とりあえず、槍の戦い方は前にも鍛錬したから、別のことをやってみよう」


 そこで俺は完全詠唱をして『スマッシュ』を作り、それを維持して歩きだす。


「っ!」


 一歩踏み出したら維持していた『スマッシュ』が揺れた。立ち止まり形を戻してから、もう一度歩き出す。歩くごとにどんどん崩れていき、10歩目くらいで魔法が解けてしまった。


「圧縮するのとは違う難しさ、歩くことによって魔法に使う集中力が落ちている。それが魔法を維持できなくなった原因かもしれない」


 もう一度完全詠唱をして維持しながら歩くと、また10歩目くらいで魔法が解けた。


「今度は解けるギリギリで使ってみる」


 8歩目あたりで「『スマッシュ』!」と唱えて使う。形を崩した魔法が放たれるが、真っ直ぐ飛ばずに空に飛んで行った。


「ギリギリだと狙ったところに行かないのか、よし次だ……っ!」


 完全詠唱をして魔法を出そうとしたら、途中で魔法が解けて、めまいがして膝を付いた。


「……そうだった、今日の模擬戦で1回魔法を使っているから、魔法が使えないほど魔力を消費していたのか……」


 魔法がもう使えないことが分かったので、少し休んでから槍と戦うときの立ち回りを確認して、今日の自由鍛錬を終えた。




 ■■




 部屋で寝ているところを、アオに「朝ご飯食べに行こう」と声をかけられ起こされる。俺は眠い目をこすり上体を起こす。太陽の光が今日は眩しく感じた。




 アオと一緒に食堂に行く、人はかなり少なかった。


「昨日までかなりいたのに今日は人が少ないね」


「みんな休みだから、街の方に遊びに行ってるよ」


 食堂に人が少ない理由を教えてもらったところでユカリが俺たちに手を振りながら呼んでいる。


「シンくん、アオくん、こっちですわ」


 ユカリの正面の席にはハクが座っていた。2人は先に食べているようで、パンが半分食べられていた。俺たちも急いで食事を取りに行き、俺はユカリの隣に、アオはハクの隣に座った。


 俺たちは談笑をして楽しく食べていた。


「昨日噂を耳にしたのですけど、数日後に豪華な食事が出ると聞きましたわ。それで、シンくんたちが来る前に、ここのシェフが大金の入った袋を持って外に行くのが見えましたのよ。これって街に行って食材を買ってくるということですわよね? 楽しみですわ」


 ユカリは頬を赤くしながらそんなことを言った。


「それは楽しみだね、みんなはどんな食べ物が来て欲しいの?」


「そうですわね、私は甘いものが欲しいですわ」


「僕も甘いものが欲しいなー」


 アオとユカリは甘いものを欲しがったが、ハクは黙ったままだった。


「ハクはなにが来て欲しいの? 俺は肉が食べたいな」


「……今のままで満足しているが、魚は食べてみたいな」


「魚か良いね、俺も食べたい」


 ここの食堂で出る料理は美味しいが、魚や肉を使った料理が少なかった。甘いものもほとんど出ないことから、俺たちからこんな言葉が出たのだろう。食事もすべて食べ終わり食器を片付けると、調理場にいた他のシェフに苦笑いされた。人が少ない食堂では、普通の声の大きさでもシェフたちに聞こえていたようだった。




 みんなも食器を片付けて鍛錬をするために部屋に戻り準備をする。アオもハクも武器の他に布に包まれたものを持っていくようだ。俺は好奇心から、つい聞いてしまった。


「ハク、それはなにに使うの?」


「……悪いがこれは決勝まで隠しておきたいんだ」


 ハクは申し訳なさそうに言った。


「……分かった、ならこれ以上聞かないよ。ということはアオも……」


「うん、ごめんね。僕の場合は相手がシンくんだから教えないってところかな」


「アオはなんとなくそんな答えだと思ってたよ。俺がアオの立場だったら同じこと言うと思う」


「そう言ってもらえて気が楽になるよ。じゃあ僕は鍛錬に行ってくるね」


 アオは槍と布に包まれたものを抱えて部屋を出ていった。俺とハクも続いて鍛錬に向かう。




 ■■■




 外にでるとアオは俺の視界から完全に外れるように移動した。どうしても俺に見られたくないのだろう。


「アオは俺の知らないことをしてくることは確定だな。何をしてくるかなんて予想もできない……昨日の魔法の続きでもするか」


 分からないものに時間を使うより、伸びるかもしれないことの鍛錬をする。俺は完全詠唱をして『スマッシュ』の維持、今度は5歩目で使ってみる。


 かなり横に飛んで行った。5歩目でも狙ったところに行かないことに落ち込む。もっと簡単なことから試してみる。


 再び『スマッシュ』を出して歩く、形が崩れて不安定になるが、止まって球体が安定してから歩き出す。すると、10歩目で魔法が解けていたのに先に進めるようになった。


(形を元に戻せば歩く距離を伸ばせる、これで魔法を使いながら歩くことに慣れていかないと)


 しかし、やっていくうちにどんどん魔法が崩れていく速さが上がっていった。仕方なく新しい『スマッシュ』を出して歩く鍛錬をする。さっきよりも歩く距離が長くなったように感じた。


 限界になるまで歩き、いよいよ今日4回目の魔法。5歩目まで歩き魔法を使う、真っ直ぐ飛ばなかったが、大きく外れることもなく飛んで行った。


「明日の模擬戦に使うにはまだまだ未完成だけど、やれることは増えたはず」


 もう魔法が使えないので、槍を持ったイメージの相手と戦い、立ち回りを1日中鍛錬していた。




 明日の模擬戦が楽しみである、そんな1日だった。

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