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35話 模擬戦トーナメント!⑧(攻撃力)

 模擬戦の4回戦が終わった。馬乗りになって攻撃をしていた相手は、俺からどいて手を差し伸べる。


「すまない、立てるか?」


「ああ、大丈夫だよ」


 俺は相手の手を掴み立ち上がる。立ち上がったのを確認して相手は帰っていった。そして、俺たちの試合の審判をしていた人が近づいて来る。


「今拭きます」


 無地の布を出して、血の付いた俺の顔を拭く。


「これで綺麗になりました」


「ありがとうございます」


 俺は先生にお礼を言ってアオがいるところに帰った。




 アオは顔を青くして震えている。


「シンくんまた血が出たみたいだけど大丈夫?」


「血も止まってるし大丈夫だよ!」


「そっかぁ……良かった……」


 アオはホッとしたように安心していた。


「俺はこれから鍛錬するけど、アオは今日も休むの?」


「そうだね、今日も休むよ」


「わかった。ハクとユカリは……」


「ハクくんとユカリちゃんはもう鍛錬に行ってるよ」


「もう鍛錬してるのか、俺もすぐやらなきゃ! じゃあまた後で」


 俺はアオに手を振り別れ移動する。アオも部屋に戻っていった。




 校庭には生徒はほとんどいない、遠くの方で4人が見えるだけだ。何をしているか分からないが、ハクやユカリたちだろう。俺の位置からギリギリ見えるが、お互いが反対方向にいるので、俺よりも更に遠く見づらいことが予想できる。


「負けていても鍛錬しているのは俺だけか……早くみんなのように強くならなきゃ!」


 自由鍛錬前に気合いを入れる。


「相手がどんな武器を使うのか分かっていれば対策できるんだけどなぁ」


 そう考えるが、分からないものはしょうがないので諦める。


「武器の対策もほとんどやってこれ以上進展はなさそうだし、何やるかなぁ……うわぁ!」


 歩きながら考えていると地面に足を引っかけて転びそうになる。


「危なかった……ん? この地面のくぼみは俺がさっき戦ったときのへこみ。そうだ! 今日はイメージの相手じゃなくて、環境の対策をするか」


 そうと決まったら周りの地面を集中して見る、地面のくぼみが見えてくるようになった。


「こんなに俺の周りにくぼみがあったのか」


 くぼみが見えてからさっきの試合を思い出すと、くぼみに引っかかって転ぶ前の、相手の動きに違和感を覚えた。


 鉄球を引きずることなんてしてなかったのに、なぜあそこでやったのか。なぜ俺が下がったタイミングで攻めて来たのか。


「……くぼみのあるところまで誘導された?」


 一歩下がったらすぐに転ぶ位置にくぼみがあったことが偶然とは思えなかった。


「おそらく俺が初めてだろうな……この罠に引っかかったのは。そうじゃなかったらもうとっくに勝っているだろうな」


 悔しいと感じた、しかしそれは俺がもっと強くなるために必要だとも感じた。まだまだ強くなる方法があることに気が付けた。今日の負けは意味があったと思った。


「鍛錬を休んでいたらこのことに気が付くのが遅れていたな」


 次にこんな状況が来るか分からないが、くぼみの位置を意識しながら攻撃をしたり回避したりの自由鍛錬をして今日は終わった。




 ■




 今日は模擬戦の5回戦、準決勝である。


 昨日の傷もすっかり治って、加護も復活している。体調は問題ない。


「シンくん、前へ」


 俺は対戦相手を待つ、来たのは長方形のような形をした大きな盾を持った相手だ。早速挨拶をしに近づく。


「よろしく」


「こちらこそよろしく」


 お互い右手で握手をする。そのとき相手は盾を地面に置くが、左手は盾を掴んでいた。


(地面から肩まである大きな盾……盾の表面には棘のようなものが付いている。武器は……)


 握手をしながら相手の持ち物を確認する。なんの武器を使うか確認したかったが、そろそろ試合が始まるということで離れてしまった。


 十分距離を取ったところで魔法の準備をする。


「これより準決勝を始めます」


 そう宣言されて、スタートの爆発が鳴った。


「『スマッシュ』!」


 俺の放った魔法を、相手は盾でガードする。


(あんな大きな盾があるんじゃガードされて当然か! 相手はどう来るんだ?)


 剣を構えて待つが相手が攻めて来ない。いや、一歩ずつこちらに詰めてきている。盾で身体をほとんど隠している。鼻から上と、膝から半分下くらいしか相手が見えなかった。


(正面からじゃ分からないな、回り込んで確認だ)


 相手の周りを回るが、相手は足を止め俺の方にずっと盾を構えて身体が見えないようにしている。


 このまま移動していても埒が明かないので攻めてみることにする。


「えい!」


 カンッ! と金属のぶつかる音が響く。相手に難なくガードされてしまった。そしていきなり盾がこちらに迫ってくる。


「うわっ! そういう戦い方か!」


 身体に刺されたような痛みがした。盾の表面にある棘が身体に刺さったからである。


(盾で体当たりか、それなら攻撃と防御を一緒にできて便利だが……)


 今度は相手の近く回り始める。近くで回ることで相手は速く俺の方に向かないといけないが、盾が大きいこともあって、近くで回る俺についてこれなかった。


「そこ!」


「っ!」


 相手は切られてすぐに殴りで反撃してくる。今まで反撃で殴られてきたので簡単に予想がつき、避けることができた。


(まずは1発!)


 相手は盾を地面に置きこちら見ている。俺は回り込んでみるが、相手はこちらに盾を向けようとしない。チャンスと思い攻め込むと、相手が振り向きナイフを突き刺してきた。


「いっ!」


 俺は攻撃を中断して後ろに下がるが、その前にナイフが当たって攻撃を受けてしまった。相手の盾は支えがなくなったので地面に倒れる。そのとき盾の裏側にはナイフが仕込まれているのが見えた。


(そこに武器を隠していたのか)


 相手は盾に仕込まれたナイフだけを持ち、俺に向かってくる。剣で戦うが、相手はナイフを2本装備している。こっちが1回攻撃を当てる間に2回も攻撃を当ててくる。


(なんでこんなに捨て身で攻撃できるんだ!? 俺の攻撃は受けても大丈夫な威力だとでも言うのか?)


「あぁぁ!」


 俺が思いっきり力を込めて相手に切りつける。すると相手の服が破れてその奥が見える。服の下から防具が出てきた。


(俺の攻撃をこれで守っていたからダメージが少なかったんだな!)


「そこまで!」


 相手の捨て身の理由に気づいたところで試合が終わる。

 10回攻撃を受けてしまったようで俺の負けが決まった。今回は俺の攻撃力の無さが、相手に攻め込ませる隙となってしまった。




 準決勝の試合はすべて終わり、決勝で戦う相手が確定する。




 トーナメント決勝で戦うのは、

 ハクとユカリ。


 逆トーナメント決勝で戦うのは、

 アオと俺となった。


 明日は休みで、明後日は決勝。

 俺はアオと戦うことが決まったので、今日の自由鍛錬と明日1日使って対策を考えようと思った。

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