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34話 模擬戦トーナメント!⑦(予測)

 今日は模擬戦の4回戦、勝った人8人、負けた人8人の合計16人しか残っていない。


 朝に昨日やった色々な武器の対応の鍛錬をして準備はできていた。


「シンくん、前へ」


 呼ばれたので前に行く、参加する全体の人数が少ないからか、俺と同じく負け続けているアオだけじゃなく、勝っているユカリやハクも前に出て戦うようだ。


「参加している16人全員いますね、先生方も準備ができているみたいなので始めたいと思います」


 スタートの爆発が鳴った。

 俺が前に出てから模擬戦開始までの時間が凄く短かったこともあり、対戦相手をちゃんと確認していない。当然魔法の準備もしている暇は無かった。戦いながら作戦を考えるしかない。


 相手が俺に向かって攻撃をしてくる、咄嗟に避けて当たらずにすんだ。俺のいた場所にはへこみができていた。


 相手から距離を取り、武器を確認する。相手は鉄球を持っていた。


(ここにきて新しい武器か……そして、当たったら痛そう。どう戦うか……)


 戦ったことはもちろん、使ったところを見たことが無いので対応の仕方が分からないでいた。


 相手はこちらを向き、鉄球をへこんだ地面から出し、平らな地面に鉄球を置く。鉄球に繋がれた鎖を持ち、いつでも攻撃ができるように身構えていた。


 俺も剣を抜き、いつ攻められても良いように身構える。武器の形から剣でのガードは無理、相手がどんな行動をしてくるか分からないので、どんな攻撃が来ても避けられるように集中する。


「うぉぉぉ!」


 その場から動かない俺に痺れを切らした相手が鉄球を持ち上げ攻めてくる。俺に目掛けて鉄球を振り下ろすが、動きが遅いので、避けることに集中していたら簡単に避けることができた。鉄球が当たったところはへこみ、相手は俺を睨んでくる。


(動きが遅いけど、地面にへこみができるほど威力があるのか……)


 俺が分析している間に、相手は鉄球をへこんだ地面から平らな地面に置き直して、次の攻撃の準備をしている。


(鉄球を宙に浮かせたままの方がすぐに行動できて良いはずなのに、それをしないのはどうしてだ? 攻撃した後しばらく動かないし、もしかして鉄球が重くて連続で攻撃できない? だったらそこを狙えば!)


 俺は相手が攻撃したタイミングに隙ができると読んだ。


「はぁっ!」


 相手が攻めてくる、振り下ろされた鉄球を避けて相手の背中を剣で切る。


「うぁっ! このっ!」


「いっ!」


 相手から拳の反撃を顔に受ける。すぐに後ろに下がって距離を取ると、俺のいた場所を鉄球が横切った。


(危なかった、あのままあそこにいたら当たっていた)


 連続で動いたからか、相手は呼吸が少し荒くなっている。


(まずいな……鉄球は避けられても、その後の拳の反撃が避けられるかどうか、もし相手の方が早く俺に攻撃を当てたら負けてしまう、なにか他にいい方法を考えないと!)


 そうこうしている間に相手は疲れが取れたのか再び鉄球を振り下ろして攻撃してくる。さっきと同じように避けて剣で切りつけるが相手に当たらない、どうやら攻撃した後も前に出て、俺の攻撃範囲から外れたようだ。


 相手は鉄球を軸にして回り、走る速度をあまり落とさずに俺の方へ向いた。そのまま鉄球を持ち上げ、振り下ろしてくる。いきなりのことなので避けるではなく剣で叩くことを選んでしまった。


「うあっ!」


 鉄球の軌道は剣に当たったことで少しずれたが、腕や肘に攻撃が少し当たってしまった。足が下敷きにならなかったのでその場から離れることができた。


(かすっただけなのにかなり痛かった、直撃を受けたらまずいな……)


 加護のおかげで痛みは無くなっているが、当たった部分をさすった。鉄球の威力を身に受けて、これ以上攻撃を受けることはできないと感じている。


 今のままの戦い方じゃ確実に負けることは分かっていた。相手の方が当てた回数が多くなっている。もし切って殴られる、これを繰り返しても先に10回攻撃を受けるのは俺だ。


(そうだ、これでいこう!)


 俺は相手から離れる、相手は不思議そうにしつつも、疲れているためその場から動かない。ある程度離れたところで、俺は魔法の詠唱をする。


「我が魔力を一つに、球へと型作り、大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる……サンラ・ルンボ・アイド・ケブン・バイタ」


「あっ!」


 相手も状況が分かったようで、鉄球を持ち上げて急いで俺のところまで攻めてくるが、動きが遅いので、俺の詠唱が終わる前に攻撃できなかった。


「『スマッシュ』!」


「うっ!」


 俺の『スマッシュ』が当たり相手は体勢が少し崩れ、鉄球を地面に落とす。圧縮をしていないからダメージをあたえることはほとんどないが、身体を揺らして鉄球を持てなくすることはできた。


 相手が武器を持ち直している間に、俺は距離を取り魔法の詠唱を始める。


 相手は俺をじっと見ているだけでその場から動かず、鉄球に繋がる鎖を軽く握っていつでも離せるようにしていた。


(『スマッシュ』を使ったと同時に武器を捨てて避けるつもりだな、そっちが動かないなら俺は威力を高める!)


 相手が動かないので圧縮までやる。的と違っていつ攻撃してくるか分からない相手が目の前にいると、思うように圧縮が上手くいかず、2割圧縮するくらいで制御が難しくなっていた。


「今はこれでしょうがない! 『スマッシュ』!」


 相手目掛けて放たれるが、武器を捨てて避けていた。圧縮された『スマッシュ』は空に向かって消えていった。


(動かない的には当てられても、動く相手には当てられない。魔法を使っているときに一歩も動けないから近づいて狙いやすくすることもできない)


 魔法の新たな課題を見つけるが、今は模擬戦中なので気持ちを切り替える。相手は武器から離れている、攻撃するなら今がチャンスなので攻めに行く。


 相手はすぐに自分の武器を拾いに向かう、手に取っても鉄球なのですぐには攻撃できず、俺の攻撃を何度も受けた。


「うっ! あっ! えいっ!」


「くっ!」


 拳で反撃される、鉄球を振り回しているからか、殴りの威力が高くけっこう痛い。また距離を取り魔法の準備をする。


 さっき魔法を使ったときよりも相手との距離が近く、攻めに来られたら魔法の発動まで間に合わない距離であるが、相手は避ける方に意識が向いていて、そのことに気が付いていない。


(この距離なら動いても当てられるはず!)


「『スマッシュ』!」


 完全詠唱してすぐに放つ、しかしギリギリ避けられてしまった。すぐに剣で切りかかる。相手もそう来ると分かっていたのか、さっきよりも武器を拾うのが早い。


 嫌な予感がして攻撃を止めて少し離れると、相手は自分を軸にして鉄球を振り回している。


(あのまま突っ込んでたら危なかった)


 俺が近くにいないことを確認した相手は、鉄球を振り回すことを止める。目が回っているようでふらふらしていた。肩で息をして、膝を付いて休んでいる


 相手の様子を見ながら少しずつ間合いを詰めて攻撃のチャンスをうかがう。俺がかなり近づくと鉄球を振り下ろしてくる。


 遠くから攻撃したいが、魔法はもう3発も使っている。あと1発使う魔力はあるが、圧縮に手間取ったことを考えると、魔法を使った後に不調がでる可能性があるかもしれないと頭によぎったので使えなかった。


 相手が鉄球を引きずりながら近づいて来る。俺は剣を構えながら後ろに下がる。


「うあぁぁぁ!」


 相手が今日見せる中で一番の気合いの入った声を出して攻撃してくる。これはまずいと一歩下がると、あると思っていた地面が無く仰向けに倒れてしまう。


(え?)


 後ろに一歩下げた足を見ると地面がくぼんでいた。


(!? 鉄球でできたくぼみに足が引っ掛かったのか! 早く起き上がらないと!)


 起き上がろうとしたが、相手の方が早く鉄球が俺のお腹に振り下ろされる。


「かはっ!」


 あまりの痛さに目に涙が溜まる、加護のおかげで痛みは一瞬で引いたが、鉄球が邪魔で起き上がることができない。さらに相手に馬乗りにされ、顔を殴られる。


 殴られた衝撃で俺の鼻からは血が出ていた。


「そこまで!」


 審判の先生に止められて試合終了、血が出たことで俺の負けが決まった。




 俺が戦っている間にアオたちの試合も終わっていた。

 アオは負けて、ハクとユカリは勝った。

 今日はそんな1日だった。

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