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31話 模擬戦トーナメント!④(違和感)

 俺は自分の試合が終わって、観戦しているみんなのところまで戻った。座って応援していたアオから今回の試合について話しかけられた。


「魔法止められちゃったね」


「俺もまさか試合前の握手で魔法の準備を無駄にされると思わなかったよ。次は同じ失敗をしないように先に握手しようかな」


「ふふっ、そうだね」


 アオは俺の次の策を聞いて、口を押えて軽く笑った。


「アオくん、前へ」


「あ、呼ばれたみたい。行ってくるね」


 アオはここから一番遠いところで戦うようだ。遠いから細かい駆け引きは分からないだろう。


 準備が整いスタートの爆発が鳴った。アオは武器で相手の攻撃を防いでいる、それでも防ぎきれずに身体がよろける。それでも槍を支えにして体勢を立て直して、すぐに槍を横に薙ぎ払って反撃をする。


 そのとき、近くで戦っている人たちが、俺とアオの間で激しく戦い始めた。


(アオの戦いが見えない!)


 俺は身体を大きく横にずらしたり、立ち上がってみたりしたがアオの戦いは見えない。しばらくすると、やっとその場から離れて戦い始めた。しかし、そのころにはアオの試合は終わっていた。


 こちらに近づいて来るアオはしょんぼりとした表情をしていた。結果を聞かなくても負けたことを察した。


「アオ、次頑張ろう」


「……うん……」


 俺は立ち上がり、アオの肩をぽんぽんと軽く叩いて励ましたが、とぼとぼと観戦する場所まで歩き、周りに人が少ないところに座り込んでぶつぶつ何か言い始めた。


(……あれは、そっとしておいた方が良いかな。それにしても……)


 俺はアオを叩いたときの手の感触に少し違和感を覚える。


(気のせいかな? アオに触れたとき、服を多く着込んでるみたいに感じた)


 俺は自分の手を握ったり開いたりしたり、手の平を指で突いたりして感覚がおかしくなってないか確認したが、おかしなことは特に無かった。




 ■




 今日の逆トーナメントは全員分終わり、次はユカリやハクが参加しているトーナメントが始まった。


「ユカリさん、前へ」


 ユカリが移動を始める、対戦相手は斧を持っている、

 ユカリは細身の剣だけなので近距離で戦う必要があり、攻撃を受けるリスクがある。


「どんな戦い方なのか楽しみだね、ハク」


「……そうだな、やっと観察できる」


 ハクは試合に呼ばれなかったため、ユカリの試合を観戦できるようだ。


 準備が整いスタートの爆発が鳴った。その直後にユカリは相手に一直線に突進していく、かなりの速さがあり、相手のすぐ横を、速度を落とさず通り過ぎる。


「っ!」


 相手の身体が一瞬跳ねる、どうやら横を通ったときにユカリの細身の剣が胴を切っていたみたいだ。そして、ユカリはある程度距離を取ったら相手の方を向き止まった。


 今のユカリの攻撃に対して、相手は斧を振り上げる構えをとることもできずにいた。相手は苦い顔をしながら額から汗が頬に流れていく。威力が高い代わりに動作が遅い斧と、速さがあるユカリとでは相性が悪いと察したようだ。


 相手は斧を身体の真ん中に構える、ユカリはまた一直線に突進していく。どうやら相手から見て右側にユカリは横切ろうとしている、相手は斧を右側に寄せて少しでもユカリと斧との距離を近づけて攻撃が当たりやすいようにした。


 するとユカリは相手の少し手前でジグザグに跳ねる、そして相手は左側の胴を切られる。


「くっ! このぉ!」


 相手は身体をひねって斧を横に振るが、ユカリはもうそこから離れていた。相手は斧では攻撃が当たらないと判断して、武器をその場に置き拳で戦うようだ。


 ユカリは最初からジグザグに動いて翻弄する。相手は近づいて来るのを、両手を広げて待っている。ユカリが攻撃をしようとしたタイミングで相手は前進しながらユカリを捕まえるために両手を閉じる。それをユカリはスライディングで回避して相手のお腹を切る。そして立ち上がり、がら空きになった背中に何度も切りつける。


「うあっ!」


「そこまで! 10回攻撃を与えたことにより、ユカリの勝利!」


 審判をしている先生から勝敗が告げられる。ユカリは攻撃を止めて後ろに下がる。




 俺はユカリの戦いを見て口が開きっぱなしだった。少しして我に返ってハクに話しかける。


「……ユカリ凄いね……一方的だったよ。ハクはなにか勝つ方法思いつく?」


「……あの速さは厄介だな……普通の戦いだったら勝つ方法はある、ユカリは速度があるが細身の剣の攻撃力が低い、耐えていればいずれ体力を消耗して動きが鈍くなる……だが……」


 この模擬戦は10回攻撃を受けると負けてしまう、ユカリの体力切れを狙うには受けて良い攻撃が少なすぎた。


「ハクくん、前へ」


「……呼ばれたから行ってくる、まだユカリとは戦わないだろうから、それまでには策を考えるさ」


 そう言ってハクは試合に向かった。ハクと入れ替わりでユカリがこっちに来る。


「シンくん私また勝ったわよ」


 にこにこしながら勝利を告げ、俺の隣に座った。


「ユカリの戦い見てたよ、前一緒にパーティー組んだときは分からなかったけど、あんなに早く動けたんだね」


「シンくんとパーティー組む前はそうでもなかったわ、急に早くなったと言った感じですわね。そろそろ試合が始まりますわ! ハクくんの戦いをまだ見てませんので楽しみですわ」


 ユカリにそう言われて俺もハクの試合に集中する。




 ■■




 準備が整いスタートの爆発が鳴った。ハクは開始位置から弓を使って相手に矢を放つ。相手は避けたり、剣で矢を叩き落とす。相手はハクに近づこうとしない、どうやら矢をすべて使わせてからの近距離戦を狙っているようだ。


 ハクは矢を2本持つ、それを同時に放つ。2本も矢が来ると思って無かった相手は1本を避けることができても、もう1本を避けることができずに当たってしまう。


「いっ!」


 ハクは続けて2本同時に放つ、相手は避けたと同時にもう1本の矢を剣で叩き落そうとするが、上手く叩き落とせず当たってしまう。


「うわぁ!」


 ハクは矢を1本に変え、今度は力を溜めて矢を放った。風を切る音はいつもより大きい、さっきまでの矢とは威力や速さが違うことを、音が証明していた。相手は急いで避ける、無理な避け方をしたせいか足がもつれて転んでしまう。


 そんな隙をハクが見逃すはずがなく矢を放つ。相手は転がって矢を回避するが、転がる先を予測されて当てられる。


 矢を使い果たしたハクはナイフに武器を変える。相手はその間に立ち上がり体勢を直した。ハクが突進する、相手は反撃しようとしたが上手く身体が動かないのか、動きが鈍くなっていてハクに反撃できずに攻撃を受けた。


「ぐはっ!」


 相手はナイフで切られて今度は体当たりで倒される。その拍子に武器も手から離れてしまう。これをチャンスと見たハクは馬乗りになって、相手をナイフで何度も切りつけた。


「そこまで! 10回攻撃を与えたことにより、ハクの勝利!」


 ハクも一方的相手を倒してしまった。




 俺とアオが負けて、ユカリとハクが勝った。今日の模擬戦はこんな感じで終わった。

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