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30話 模擬戦トーナメント!③(情報)

 1回戦の模擬戦が終わり、みんな自由に鍛錬をしていた。


「えい! そい! はぁっ!」


 俺は剣を縦や横や斜めなど色々試しているが、すぐには成長しない。


「んー、素振りをしてても戦いになったらほとんど鍛錬通りにはならないんだよな。ハクはどうしたら良いと思う?」


 いつの間にか用意されていた的に向かって矢を放つハクに話しかける。20メートルは離れている的に何本も当てていく。


「……中心から大きくズレたな……」


 中心に1本、少し外に数本、今回の矢は的のギリギリに当たっていた。弓を背負い的に刺さった矢を回収すると、俺の目の前まで来る。


「……シン、どうしたら良いと聞かれても、何もヒントが無ければ教えられないぞ」

「そうだよね、じゃあ今日分かったことなんだけど、俺は武器同士をぶつけると力負けして弾かれるみたいなんだ。もしハクが力負けして弾かれると分かったらどうやって戦うの?」


 ハクは少しの間考えてから口を開いた。


「……俺だったら相手と同じやり方はしないな。負けに行くようなものだろう。それなら別の戦い方をしている方が勝ちの目も見えてくる……」

「なるほどね」


「……近距離で戦ってくる相手には遠距離から攻撃が良いだろう、魔法は使わないのか?」

「戦闘中に魔法は使う暇がないかな。完全詠唱してると時間かかっちゃって」


 魔法が使えることを知っているハクは当然魔法を提案してくる、俺はそれに対して軽く笑いながら話す。


「……模擬戦のルールだと、当たれば1回の攻撃として見てもらえる。だから威力は気にしなくても良いんじゃないか?」

「言われてみれば確かに、ちょっと試してみようかな」


 俺はハクから離れて空に手を向けて魔法を使う、なにも意識をしないでただ魔法名を唱える。


「『スマッシュ』!」


 爪くらいの大きさの『スマッシュ』が発動して、地面に落ちる前に消えていった。


「…………模擬戦の間に攻撃手段として使えるようにするには無理だな」


 ハクの言ったことに、俺も全く同じことを思って今日の自由鍛錬は終わった。




 ■




 太陽の暖かな光で目が覚める、アオやハクはもう起きていたみたいで、部屋には俺しかいなかった。


 食堂に向かうといつもより生徒が多い、会話をしながら食べていて遅い人や、食べ終わったけど話しをするために残っている人もいた。模擬戦が始まってから鍛錬は自由になっているので、鍛錬を休んで身体を癒しているのだろう。


 俺はすぐに食事を終わらせて校庭に向かった。その途中の廊下でアオとハクがランド先生と話しているのを見かけて足を止めてる。なにを話しているのかはこの距離では分からず、一歩踏み出すと話しが終わったのかランド先生は去ってしまった。


「アオ、ハク、おはよう。ランド先生と話してたみたいだけどなに話してたの?」

「シンくんおはよう、模擬戦のことで分からないことがあったから二人で聞いてたんだ」

「……試合が始まる前から魔法を使うことができるのか聞いていた」

「試合前なのに使っていいのか?」


 俺は試合が始まってからしか魔法を使っちゃいけないと思っていたので、試合前から使うという発想は無かった。


「『相手に使っちゃいけない』ってランド先生に言われたよ」

「……つまり、シンの『スマッシュ』を予め準備していても良いと言えるな」

「もしかして、アオもハクも俺のために聞いてくれたの?」

「…………そうだな、そういうことにしておくよ」


 ハクは俺から目を逸らしながらそう言った。アオは後ろに手を組み「あはは」と笑っている。2人とも照れていると俺は思った。


「俺はこれから鍛錬に行くけどアオとハクはどうするの? 一緒にやる?」

「僕はシンくんと対戦するかもしれないから、手の内を隠すために1人でやろうと思ってるよ」

「……俺も1人でやるつもりだ」

「分かった! また後でね」


 俺は2人を置いて校庭に向かった。人はほとんどいない、俺はその人たちから距離をとって邪魔にならない位置で鍛錬を始めた。




「まずはこれからやってみるか」


 俺は完全詠唱をして『スマッシュ』を手の平に作る。それを撃たずに1分維持していた。そして空に手を向けて魔法名を言う。


「『スマッシュ』!」


 空に飛んだ『スマッシュ』は自然に落下してきて地面に少し穴を開けた。


「圧縮しなければ1分は大丈夫そうだな、これだけ維持できれば試合が始まる少し前から準備すればいいね」




 そうして魔法の確認が終わったら剣の鍛錬を始める。


「えいっ! やぁ! とうっ!」


 片手で剣を振ったり、両手でしっかり握って振ったりと色々試す。こちらが攻めている間に来そうな反撃をイメージして、そこを剣でガードしたり避けたりも試す。


「縦からの攻撃なら横に避けることで避けられる、横からの攻撃なら剣でガード。昨日のことを考えると、俺がガードしたら防戦一方になる……なにか良い案はないかな?」


 不利な状況から打開する方法が無い俺は、休憩も兼ねて座って目を閉じ考える。考えているとアオの試合を思い出す。


(確かアオは武器を掴まれてガードできなくなっていた時に、相手を殴っていたよな)


 俺は目を開け立ち上がり、剣でガードした体勢になる。


(ガードするために両手を使っているから殴ることはできない、だったら!)


 俺はイメージで作った敵に向かって蹴りをする。敵のお腹に足が届き敵は飛ぶイメージができた。


「とりあえず不利な状況からの打開策はこれで良いか」


 一段落着いたところで「ぐぅー」とお腹が鳴った。周りを見ると鍛錬をしていた人たちは、校内に戻っていた。


「シンくんお昼ご飯食べよう!」


 アオが俺に向かって手を振りながら誘っている。もうそんな時間かと思い、

 服に着いた砂や土を払い、アオと一緒に食堂に向かった。




 ■■




 食事も終わり模擬戦の2回戦が始まる。まずは1回戦で負けた人たちが参加する逆トーナメントから始まるみたいだ。


「シンくん、前へ」


 俺は呼ばれて前に出る、俺の対戦相手も呼ばれたようだ。

 持っている武器は俺と同じ剣、早速今日試した鍛錬が役に立つ。


 完全詠唱をして試合が始まればすぐに『スマッシュ』が使える状態までにした。準備を終えたちょうどで相手が「よろしく」と言いながら右手を差し出す。予想外のことに俺は混乱した。俺の『スマッシュ』は右手に集まっているので、握手をするには魔法を解かなきゃいけなかった。


(やられた……狙ってたな!)


 俺は『スマッシュ』を解除して握手に応じる。


「他の先生方も準備ができたようです、私の持つ石が爆発したら始めてください」


 握手してから数秒でそのようなことが告げられる、すぐに距離を取る。そして次の『スマッシュ』を準備する前にスタートの爆発が鳴った。


「うおぉぉぉ!」

「っ!」


『スマッシュ』の準備をしようとしたことが仇となった。俺はまだ剣を抜いていない、剣を抜き終わると相手は振りかぶって攻撃をしてきた。俺は思わず剣でガードをする。


(縦振りなら横に避けるって鍛錬してたのにできなかった!)


 相手がグイグイと剣を押し付けてくる、力を入れた俺の両手が震えてる。

 足に力を入れ相手のお腹に蹴りを入れる。蹴りは決まったが少しよろける程度だった。


(くそっ! イメージ通りにはいかないってことか!)


 相手は突然の蹴りに驚いて剣で何度も俺を叩いてきた。縦斬りのときもあれば横斬りもあり、次第に攻撃を受けるようになり、血は出なかったが10回攻撃を受けてしまって負けてしまった。




 模擬戦1日目と同じく、2日目も俺が1番早く負けてしまったようだった。

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