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29話 模擬戦トーナメント!②(勝敗)

 1回戦は簡単に負けてしまった。これで俺は逆トーナメントに参加が決まった。試合が終わったので座って観戦していたアオたちのところに戻る。


「シンくん、血が……」

「このくらいの傷なら大丈夫だよ」


 アオが俺の傷を見て顔を青くしていた。アオだけじゃなく周りのみんなも顔色が少し悪くなっている。


(少し血が出て傷ができたくらいで……そうか、この世界では加護のおかげで血や傷をめったに見ないから……)


 そう気づいた俺は布で傷を隠した。そうしてまだ終わってない試合を観戦する。どうやら俺の試合が1番早く決着がついたようで、武器と武器がぶつかる金属音が響いていた。


 戦っているところを観察すると、武器で弾いたりガードしたりと身体を使って避ける人は少なく感じた。決着がついた試合でも、負けた人の身体に傷は無かった。普通なら10回程度の攻撃では傷つかないことが分かる。


「アオくん、前へ」

「アオ呼ばれたぞ」

「は、はいっ!」


 アオは名前を呼ばれて勢いよく立ち上がると、俺がさっき試合をした場所に移動した。対戦相手も呼ばれ、すぐにでも試合を始めるのかと思いきや、他の試合が終わるまで待機するみたいだ。


 次々に試合が終わり、次の試合を始められるようだ。アオは槍を持って構える、相手は剣だ。リーチの差で有利だが、距離を詰められれば剣が有利、自分の得意距離に持っていくことができた方が勝つだろうと予想された。


 準備が整いスタートの爆発が鳴った。2回目だからか驚く人はいない、みんな目の前の相手に集中している。アオも相手に槍を向けていつでも攻撃できるようにしていた。


「うおぉぉぉ!」

「えい!」

「うっ……」


 剣を振りかぶって真っ直ぐ迫ってきた相手に対して、アオは槍の刀身が無い方を前にしてお腹を突いた。相手はその場で動きを止め、お腹を勢いよく突かれたため手でさする。


 すぐに痛みは無くなって今度はアオの周りを移動しながら近づいていった。アオはこれに対して槍を横に振ることで攻撃する。しかし、相手は剣でガードして槍の動きを止めた。


 そのまま槍を掴んで引っ張る。力負けしたアオは体勢を崩して前に倒れそうになる。そこを狙われて剣で切られる。


「うあっ! っ……このっ!」

「あっ!」


 アオは咄嗟に相手の顔を殴り攻撃を中断させた。掴んでいた槍も離してアオは槍が自由に使えるようになる。今度はアオが槍を振りかぶって叩く。相手は両手でしっかりと剣を持ち、槍を横に弾いた。


 弾かれた槍は地面に叩きつけられる、持ち上げようとしたところ、槍を踏みつけられて思わず槍から手を放してしまう。その隙に相手に体当たりをされてしまい数メートル飛ばされてしまった。


「いたぁ……ま、まいった」


 アオは負けを宣言した。自分の武器は相手の足元にあり数メートルも離れている、武器を持っている相手の攻撃をかいくぐって取り戻すのは難しいと判断したからだった。




 ■




「僕負けちゃった……」

「アオは俺より良い戦いしてたと思うよ」


 俺は落ち込んでいるアオを慰めていた。


「……上手く武器を使いこなせなかったことが敗因だろうな……相手の捌き方が上手かったとも言えるが、アオの槍が機能したのは最初の1発……と言ったところか。アオは接近戦得意じゃないからしょうがないか」


 ハクが丁寧にアオの戦いを分析していた。


「ユカリさん、前へ」

「はい」

「次はユカリか、頑張れー!」


 違うところで座っていたユカリが移動する、俺の応援を聞いてユカリはこちらに向かって手を振った。ユカリは細身の剣を装備している、ヒット&アウェイをするなら武器を軽くするのは効果的と言えた。

 ユカリの相手は俺が使っているような普通の剣だ、武器同士がぶつかるなら相手の方が有利だろう。


「ハクくん、前へ」

「……ユカリの戦いを観察できないのは残念だが、俺の戦いも見られないと思えば良しとしよう」

「ハクくん頑張ってね!」

「……あぁ」


 アオからの応援にハクは背中を向けたまま手を上げて答える。ハクは弓を背負い、腰にナイフを装備していた。遠距離もできて近づいてきた相手にはナイフで対応と、状況に応じて使い分けるのだろう。

 ハクの相手は斧を担いでいる、パワーは高そうで、剣でのガードは厳しく、ナイフならガード不可能であろう。


 次の試合の準備も整い、スタートの爆発が鳴った。


 ハクの試合を見てみると、弓を使ってガンガン攻撃をしていく。


「っ……クソ! 近づけない!」

「…………」


 パシュンパシュンと風を切るような音とともに矢が放たれる。足やお腹や頬にどんどん当てていく。避けようと移動すると目の前に矢が地面に刺さる。立ち止まったところを狙われて矢が当たる。


 そういったことが繰り返されて相手はハクに近づくことができないでいた。そして音が急に止む、どうやら矢をすべて使ってしまったようだ。


「やっと近づけるぜ! っ!」


 ハクは矢を使い切ると武器をナイフに持ち替えて、素早く相手に近づき攻撃をした。


「あのくらいの攻撃なら耐えられる!」

「そこまで!」


 審判をしていた先生に試合を止められる。ハクは疑問に思っていないようだが、相手は状況が分からないのか混乱していた。


「え!? 俺はまだやれます!」

「今の彼の攻撃で当たった数が10回目だ、きみの負けだよ」


 そう言われた相手は顔を青くして膝から崩れ落ちた。




 ■■




「おめでとうハクくん! あんなに一方的に勝っちゃうなんて凄いね!」

「おめでとうハク!」

「……ありがとう、相手の耐久力が高かったから、10回攻撃を当てるルールじゃなかったらどうなっていたか分からなかった」


 俺たちがハクの勝利を喜んでいるとこちらに誰かが歩いて来る。


「ハクくんおめでとう、私も勝ってきたわ」

「……ありがとう、まだみんな戦っているのに早いな」

「私とハクくんはこのルールに合っているのかもしれませんわね」


 ハクの試合を見ていたら、いつの間にかユカリは勝って終わらせてきたようだった。そして、ハクとユカリは今回の模擬戦の話しで盛り上がっていた。これが1回戦を勝った者同士の楽しさなのだろう。


「アオはこれからどうする? 明日のためになにか対策するの?」

「んーそうだね、もうちょっと槍の扱いに慣れようかな……」


 アオは「あはは」と笑いながら槍を撫でながら俺に答えてくれた。


 今戦っているみんなの試合も終わって次が今日最後の試合みたいだ。特にこれといった出来事も無く、勝って喜ぶ人、負けて悲しむ人がいただけだった。




 ■■■




「みなさん今日はよく頑張りました。魔物には通じた戦法も、相手が変われば通じなくなることが分かった方も多いと思います。勝ちパターンを持つことも大事ですが、それが崩れたときどう動くかもしっかり考えておきましょうね。また明日お昼にここに集合でお願いします」


 ランド先生はそう言うと一呼吸おいて追加で話し出す。


「教室でも言いましたが、この後は自由ですので鍛錬するも良いですし、部屋に戻って休んでも構いませんよ」


 そういって先生たちは帰る準備を始めた。

 俺たち生徒はみんな部屋に戻って休まずに、明日に備えて鍛錬するようだ。




 俺やアオは負けて、ハクやユカリは1回戦を勝った。今日はそんな1日だった。

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