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26話 『スマッシュ』鍛錬!②(威力)

 あれから1週間、俺は毎日『スマッシュ』を的に当て続けた。最初に比べれば大量の傷が的に付いているが、こんな程度ではとても次の実戦訓練まで間に合いそうに無かった。


「ふぅ……今日もこれだけの傷しかつけられないか。ランド先生、なにかアドバイス貰えませんか?」

「そうですね、1週間たって4発目も安定して撃てるようになってきましたし、明日から威力を上げる鍛錬をしましょう」

「お願いします!」


 俺たちは部屋に戻り明日に備えた。




 目が覚めて起きる、今日は小雨が降っていた。新しいことをやる日の雨、体調を崩さないように気を付けながら朝と昼を乗り越え訓練所に向かった。


「あれ? こんなに暗かったっけ? 天井がある」


 空が見えるように天井が無い訓練所に天井ができていた。的のあるところと、出入り口のところに天井は無く自然な明るさが入ってきていた。


「ランド先生、これはいったい……」

「雨が降っていますので簡易的な石の天井を付けました。ちょっと暗いかもしれませんが、雨で集中できなくなっても困りますからね。終わったら私が片付けるのでシンくんはなにも気にしなくて大丈夫ですよ」


 どうやら俺のために用意してくれた天井のようだった。俺が「ありがとうございます!」とお礼を言うと、訓練所は暗いのにランド先生の顔は明るくなった気がした。


「それではいつもの位置に立ってください」


 印の付けられた位置に俺が立つ、少しするとランド先生が威力を上げる方法を話し始めた。


「魔法の威力を上げる方法を3つ紹介します。1つは大量の魔力を使う、2つは魔力の純度を上げる、3つは魔法を圧縮するなどです。今のシンくんにはこれらの方法が有効でしょう」

「他にも魔法の威力を上げる方法があるのですか?」

「ありますよ、魔法陣を作って魔法を使ったり、相性の良い属性同士の魔法を使ったり、逆に相性の悪い魔法を融合させたりなどですね」


 俺の質問にランド先生はすらすらと答えていく。


「魔法陣を使えばスライムを倒せそう」

「魔法陣を使えれば今のシンくんでもスライムにダメージを与えられるようになりますが、魔法陣は作るのに時間がかかりますし、その場所でしか効果が無いので移動の激しい魔物との戦闘では使えないです。無属性に相性の良い属性も悪い属性も無いのでこれも今は覚える必要は無いです」

「なるほどー」


 俺が顎に手を置き教えられたことを考えていると、ランド先生は咳払いをして俺の注意を引く。


「話しが脱線してしまいましたね、シンくんにできることは大量の魔力を使うこと、魔力の純度を上げること、魔法を圧縮することですね」

「分かりました、それぞれどんな効果があるのですか?」

「そうですね、言葉で説明よりも見てもらった方が分かりやすいかもしれませんね」


 俺からランド先生が俺から少し離れた。


「『ドン・ストーン』!」


 ランド先生が魔法を唱えると、訓練所に2メートルほどの大きさの石が3つ現れた。


「ではあの石に向かって試してみますね、まずはこれが普通の魔力」


 ランド先生は手に魔力が集まる、普通と言っているが量も純度も俺より遥か上をいっていた。


「大量の魔力を使うとは、ここに集めた魔力を増やすだけのことです。簡単にできるかわりに量が増えれば制御することが難しくなります」


 魔力の大きさは1メートルほどの大きさにまで成長していた。それを石に向かって投げると、石が砕けて衝撃もこちらに伝わってきた。


「……凄い!」


 あまりの衝撃に俺は開いた口が塞がらなかった。そんな状態でいる間にランド先生は次の説明を始めるために、さっきと同じように手に魔力を集めていた。


「シンくん、次の説明をしますよ。次は魔力の純度です。魔力の純度が高いほど魔法の威力や制御が上がります。これは簡単でもあり難しくもあります、鍛錬をすれば自然に身に付くことでしょうが、一生終わりが見えません。やればやるほど自分の未熟さを思い知ります。これも魔力を余計に使ってしまうでしょう。」


 手に集まった魔力は、大きさは変わらないのに集まった魔力がどんどん濃くなっていくことが見える。それを石に向かって投げると、石の表面で小刻みに動いていた。徐々に石にヒビができてきて、石が壊れるまで純度を上げた魔力は消えなかった。


「これで最後です、次は魔法を圧縮すること」


 手に集まった魔力がどんどん小さくなっていく、今にも爆発しそうなほど中で魔力が暴れていた。


「私は魔力を圧縮しましたが、本来は魔法に使用することです。シンくんの『スマッシュ』を圧縮すれば……」


 圧縮された魔力を最後の石に投げる、石は障害物と思われていないかのようにスッと穴を開け、石の真ん中辺りから爆発した。どうやら石にぶつかった衝撃で圧縮に揺らぎができ、途中で爆発したようだった。


「これなら魔力を余計に使わず、威力を上げることができます。ただ、制御に失敗すると自分の近くで暴走するリスクがあります」


 どれも魔法の基礎なのに、それを鍛えるとここまで威力を発揮することに俺は感動していた。


「シンくんはどの方法で威力を上げますか?」

「……俺は…………」


 俺がどの方法にしようかとかなり悩んでいた。色々考えて数秒が何分にも感じられるほど頭が回っていた。考えがまとまらず、訓練所に入る光を見たり、腕を指でトントンと叩いたり、少し歩いたりと長考していた。


 あまりの長さに、笑顔で俺の答えを待っていたランド先生が口を開く。


「随分悩んでいますね、見せてしまったからここまで悩んでしまったと思うので私が決めます。シンくんは魔法を圧縮することをやりましょう」


 ランド先生が俺に進む道を示してくれた。


「ありがとうございます! もう俺じゃなにを選んだら良いか分からなくなっていたので助かりました」


 このまま何時間も悩み続けていただろうから本当に助かったと安心した。


「それは良かったです、今日から『スマッシュ』を圧縮して使ってみてください」

「はい!」


 俺はいつもの位置に移動して、完全詠唱までする。あとは魔法名を言うだけで良い状態まで来た。


「魔法名を言う前に圧縮を意識してください、外側の魔力を内に押し込むのです」


 言われた通りに『スマッシュ』を圧縮する、少し小さくしただけでかなり反発を感じていた。歯をギリギリとさせながら無理やり圧縮を試みる。


「うっ……うっ……!」

「無理だと感じたら的に向かって投げつけてください。やり過ぎると暴走して怪我をします」

「うっ……もう……無理……だっ……『スマッシュ』!」


 撃ち出された『スマッシュ』は、的とは関係のない地面にぶつかった。土には穴が少しできていた。


「少し圧縮したおかげで、前に地面に当たったときよりも穴が大きくなった!」

「良いですよ、この調子でいきましょう」


 この後残りの3発すべて的には当たらず、地面や壁に当たった。圧縮も制御もまだまだだけど、これからなにをすればいいか決まった。今日はそんな1日だった。

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