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25話 『スマッシュ』鍛錬!(目的)

 いつものように窓から入る光で目が覚める、今日は晴天のようだ。昨日は1ヶ月ぶりの実戦訓練で疲れたはずなのに身体の調子が良かった。それでも朝の鍛錬でみんなに追いつけない、むしろどんどん離されていった。どうやら調子が良いのは俺だけではなく、みんな調子が良いみたいだ。


「はぁ……はぁ……今日はみんな速いね……」

「そうだねシンくん、今日は僕も身体が軽く感じるんだよ! ハクくんとユカリちゃんもそうでしょ?」

「……そうだな、今日はやけに身体が軽いな」

「前の実戦訓練の次の日も、今日みたいに身体が軽く感じたわ」


 鍛錬が一段落して、アオとハクとユカリと話していた。前は10人、今回は5人、戦っていた人たちに経験値が分散してもこれだけ強くなれる、もしこれが1人で戦っていたらと考えると、経験値を得ることで手に入る力が高いことを再度認識した。


 ――


 お昼の授業を終わらせて魔法を鍛えるためにランド先生と訓練所に来ていた。


「2回目の実戦訓練お疲れ様です、遠目で見てましたが、ここでやってきたことは出せたようですね」

「出せました、そして……まだまだ飛距離が短くて威力も低いことも分かりました……」


 実戦訓練で得られた俺の魔法を反省すると課題点が見つかってくる。かすり傷を与えて浮かれていたが、1人で戦うには力が足りていない。まだまだ仲間に助けられないとスライムすら倒せない自分を情けないと思っている。


 ただ、色々と鍛錬を積み重ねることで成果は出てきているので、「いつかはできるようになる」と前向きに考えるようにはなってきていた。


「そうですか、シンくんはスライムと戦って、飛距離と威力のどちらが大事か分かりますか?」

「…………どちらも大事に感じます」


 俺はしばらく考えたが答えは出ず、当たり障りのないことを答えた。


「なるほど……では、あそこにある攻撃をしてこない的には飛距離と威力のどちらが大事か分かりますか?」

「攻撃してこないならいくらでも近くから使えるので威力ですね……あっ……そういうことか」


 的とはスライムのことと言っているようだった。スライムはこちらが攻撃するまで攻撃してこないから、最初の1発だけは威力が大事、その1発で倒せるなら距離は関係ない。


「そういうことです、スライムを相手にする場合1発は確実に当たります……と言いたいところですが、スライムも生き物なので動きます。でもそのくらいは冒険者になるなら乗り越えてもらわないといけません。私くらいの強さの冒険者なら近づいただけで怯えられて逃げられてしまうでしょうが、それまではスライムと有利に戦うために威力重視と覚えておきましょう」


 スライムの戦い方を学んだところで、ランド先生はスライムくらいの大きさの的を持ってきた。そんなに上手くは無いがスライムのような絵が描かれている、それを壁に設置した。


「シンくん、この的を本物のスライムだと思って近寄れるだけ近寄ってください」

「分かりました」


 俺はスライムに見立てた的に近づく、実戦訓練のときよりも更に近づき、10メートルくらいで足を止めた。


「そこで良いですか?」

「はい、ここがスライムとの距離の限界な気がします」


 俺がそう言うとランド先生がこちらに向かい、俺の足元に印を付けた。


「シンくんはこの印を付けたところから『スマッシュ』であの的を壊してください」

「あの的を壊す……いつも魔法を当てている的には傷一つ付かないのにできるとは思えません、いつかはできるでしょうけど……」

「いつも使っている的は魔法耐性の高い素材を使った的ですが、あの小さな的は特別製でスライムより脆く作られています。そう遠くない日に壊せるようになりますよ」


 ランド先生は俺の肩に手を置く。


「大丈夫、今まで通り少しずつ強くなれば良いのです。あれはただの通過点、これからもっと厳しい課題を考えているのでここで根を上げてもらっては困ります」

「……そうでしたね、俺頑張ります!」


 ランド先生はうんうんと首を縦に振り、俺から少し距離を取った。


「では始めてください」

「はい」


 俺は完全詠唱をして『スマッシュ』を使った。昨日よりも魔力が扱いやすくなっていた、これも経験値のおかげだろう。


 放たれた『スマッシュ』は的に命中する、的の表面に傷ができた程度で壊れる気配は無かった。


「魔法石に魔力を送り続けたように何度も撃って的を壊すのです。それが今回の課題です」


 俺はそれを聞いて体勢を直し、もう一度『スマッシュ』を使う。傷がついただけで壊れない、だからもう一度『スマッシュ』を使う。


「……どうだ!」


 俺は顔から出る汗を拭き的を見つめる。表面の傷が増えたくらいでやっぱり壊れなかった。やる前から分かっていたので落ち込まない。


「……シンくん、もう1発『スマッシュ』を使えませんか? 今のシンくんの様子を見ている感じですと、あと1発使える魔力があるように見えます。どうですか?」


 俺は目を閉じて身体に残る魔力を確認する、あと1発使えそうなくらいに魔力があるように感じられた。


「確かにまだいけるような気がします、やってみます!」


 俺は残った魔力すべてを使い完全詠唱をする。詠唱の最後の方でふらつきそうになったが、なんとかこらえて今日4発目の『スマッシュ』を発動させることができた。しかし、的には届かず地面に当たってしまった。


「使えても的に当たらないのか……」

「使えるようになっただけで成長してる証拠ですよ。これからどんどん使って慣れていきましょう」

「そうですね、ランド先生」


 こうして今日の魔法鍛錬は終わって、部屋に向かっている途中でランド先生に質問をする。


「次の実戦訓練はいつやるのでしょうか?」

「予定が変わらなければ1ヶ月後にやるはずですよ、時間はいっぱいあります。魔法も4発に増えましたし、焦らずコツコツやりましょう。それではまた明日」


 そう言ってランド先生は自分の部屋のある方向へ歩いて行った。




 今日の成果は『スマッシュ』が4発使えるようになったこと、たかが1発でも、3発から4発は約1.3倍の成長なのでかなりの成長と言えるだろう。今日はそんな1日だった。

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