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245話 ☆2『めぐすり草調達』④(介抱)

 俺は寝ているアルの両肩を掴んで、揺らして起こそうとするが、気持ちよさそうに寝ていて起きる気配はなかった。



「困ったなぁ、ここに置いて行くわけにはいかないし……」



 俺がどうすればいいか悩んでいると、後ろの方から声が聞こえてきた。



「こんな所にいたのか」



 声を発したのは、アルと草原で行動を共にしていたコールという黒髪の男だった。



「おや君は確か草原で会った……」


「シンです、コールさんで良いんですよね? そこで寝ているアルさんから教えてもらいました」


「アルの奴、勝手に俺の事を話したのか。シンだったな、アルの事を見ていてくれてありがとう。こいつは俺が街まで運んでおくから、シンはクエストを続けてくるといい」


「いえ、俺がやっているクエストは、そこの木の根の下にあるめぐすり草を採取すれば、必要な数が揃うので。俺も一緒に街に帰りますよ」



 俺は木の下に向かい、めぐすり草を採取して袋に入れた。



「そうか、それじゃあ俺たちと一緒に帰ろう」



 コールは寝ているアルの前に行くと、体を反転させてしゃがみ、アルの両腕を掴んだら、重い荷物を持つように背負うのであった。


 コールはアルを背負ってすぐに不快そうな顔をする。



「なんだこの臭いは。アル、お前何飲んだんだ?」


「うーん……むにゃむにゃ……」


「ダメだ、話にならん」


「コールさん、アルさんはそこの木の穴から手で掬って飲んでいましたよ」


「この木か、いくら酒好きとはいえ、こんな何が入っているかも分からない酒を飲もうとは思わない」



 コールは寝ているアルを睨みつつも、俺と一緒にアルンに向かうのであった。






 少しずつ森の中に太陽の光が差し込むようになり明るくなってきた。


 魔物を見つけやすくなる代わりに、こちらも魔物に見つかりやすくなるので、周囲を警戒しながら進んで行く。



「そんなに警戒するほど、ここにいる魔物は強くないはずだが?」



 俺の様子を見ていたコールが、不思議そうに聞いてきた。



「俺はまだまだ弱いので、こうやって警戒しておいた方が良いんですよ。今日だって、一回り大きいゴブリンと戦いましたが、傷は与えたものの、倒すことができませんでした」


「そのゴブリンは、あそこにいる切り傷のあるゴブリンの事か?」



 コールの見る先に、木の実を木の下の穴に投げ入れるゴブリンがいた。


 付いている傷跡も、俺が切りつけた場所と同じような所にあるように見える。そして大きさも、他のゴブリンよりも一回り大きい。


 俺が戦ったゴブリンに間違いないだろう。


 ゴブリンも俺たちに気が付いたのかこちらを見ている。



「ゴブッー!」



 ゴブリンは俺の顔を見ると、低い唸り声を上げて棍棒を取り出し、近くに落ちていた石を棍棒で打って攻撃してきた。


 俺は慌てて木の幹に身を隠して、攻撃が当たらないようにするが、コールは涼しい顔でゴブリンを見つめ、隠れようとしない。


 飛んでくる石は、軽く体を反らすだけで避けていく。



「凄い、アルさんを背負いながらなのにあんなに軽々と飛んでくる石を避けている」



 ゴブリンが石を打ち切ったところで、コールが俺の方へ走ってくる。



「この酔っぱらいの介抱を任せた」



 コールはアルを俺のそばで下ろすと、ゴブリンの元へと駆け出した。



「ゴブッ!」


「『ウォーター』」



 コールは走りながら、圧縮した『ウォーター』をゴブリンの顔に飛ばした。ゴブリンは避けることができずに顔に受け、頭を跳ね上げる。


 コールは先端が針のように尖った短剣を出すと、その短剣を逆手に持ち、ゴブリンのお腹に突き刺した。そして短剣を引き抜くと、ゴブリンは大量の血を吹き出す。



「ゴ……ゴブッ……」



 よろよろと動くゴブリンの背後に回り込むと、背中にも短剣を突き刺した。


 ゴブリンは悲鳴を上げることなく倒れ、経験値を吐き出すのだった。


 その経験値のほとんどはコールに引き寄せられて行ったが、一部俺の方に飛んできて、俺にも経験値が入るのであった。


 コールは俺たちの所に戻ると、アルを再び背負い始めた。



「これでもう大丈夫だろう。行こう」



 俺はあっさり倒されたゴブリンを横目に見ながら、森を出てアルンに帰っていくのであった。






 ■






 アルンに無事に帰ってくると、コールに背負われていたアルが目を覚ました。



「んー、良く寝た! あれ、いつの間に街に?」


「起きたなら降りろ」


「おわっ! いてて」



 コールはアルの手を離すと、背負われていたアルは、コールの背中から落ちてお尻を地面に打ち付けた。



「何すんだよー」


「俺が街まで運んでやったんだ、感謝しろ」


「分かったよ、今度酒1杯奢る」


「良いだろう」



 コールはお酒1杯で納得したようだ。


 俺たち3人は、歩いてギルドまで向かい、先にアルとコールからクエストクリアの報告をして、次は俺の番になった。



「ハンナさん、クエスト終わりました」


「シンさんお帰りなさい、それでは確認しますね…………めぐすり草10つ確認しました。クエストお疲れ様でした、こちらが報酬金となります」



 俺は300(ゴールド)入った袋を受け取り、ギルドカードには900GP(ギルドポイント)が追加された。


 俺が受付から離れると、アルとコールはギルドの出入り口で話しているようだった。



「よーし、これでまた酒が飲めるぞ!」


「俺に酒を奢ること忘れるなよ?」


「忘れてないって、さあ行こう!」



 そう言ってアルとコールはギルドを出て行って、食堂に向かったのであった。


 俺は自分の部屋に戻って、減ってきたポーションを補充するために作り、余った魔力で『サーチ』の鍛錬をして、眠りにつくのだった。

寝ているアルの所に、コールという黒髪の男が現れた。


コールは寝ているアルを背負うと、めぐすり草を回収した俺と一緒にアルンに帰るのであった。


その途中に俺が倒せなかったゴブリンが現れて、攻撃をしてくるが、俺がアルの介抱を任されている間に、コールがあっさりとそのゴブリンを倒したのであった。


アルンに戻ってクエストクリアの報告をしたあとは、部屋に戻って、減ってきたポーションを補充するために作り、余った魔力で『サーチ』の鍛錬をして、眠りにつくのだった。

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