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244話 ☆2『めぐすり草調達』③(熟成)

 俺は隠れていた木の下から顔を出して辺りを警戒する、スライム1体すら近くにいないようだ。



「いくら待ってもゴブリンは来ないから、もうここを動いても良いよね?」



 ポーションを飲んで受けたダメージを回復したら、隠れていた木の下から出て森の奥へ移動する。


 倒されている魔物を回収しているギルド職員に出会う以外は何も起こらず、無事に暗い森の奥まで来ることができた。


 しかもここは、俺と戦ったゴブリンがいた場所よりも葉や枝で影ができている。ここならめぐすり草も見つかるかもしれないと思い、木の下を探し始める。


 暗くて見えないので『ファイア』を使い明るくしてから探してみるが、ここには無いようだ。



「これだけ暗いのに生えてないのか、そういえば、光が少しだけ差し込む場所に咲きやすいってクエストの紙に書いてあったし、そういう場所を探してみるか」



 俺は葉や枝の隙間から差し込む光がある場所を探す。そこだけ明るいので見つけるのは簡単だった。


 その光がある場所の近くにある木の下を覗いてみると、周りは暗いのに、青紫色の花びらを生やした草だけは明るくなっていて、見つけることが簡単だった。


 俺はめぐすり草の近くまで行き、採取する。



「めぐすり草ってこんなに明るいのか、これなら他のめぐすり草も簡単に集まりそうだ」



 俺はめぐすり草を袋に入れると、他の木の下を探し始める。


 視界に青紫色が見えたら、そちらを向いて近づくとめぐすり草を見つける。俺はめぐすり草の見つけ方を覚えたので、クエストに必要な数の10つのめぐすり草のうち9つまで集めることができた。






「あと1つでクエストクリアだけど、もうこの辺りには生えてなさそうだな」



 俺は他の場所に移動していると、変な臭いが鼻を刺激してくる。



「何この臭い……また近くに食べ捨てられた木の実でもあるのか?」



 もしそうなら、この近くにもあのゴブリンみたいなのがいるかもしれないと思い、剣を抜いて辺りを警戒する。


 すり足で移動しながら、聞こえる音に集中していく。



(『ファイア』で明るくすれば周りは見えるけど、魔物が離れた位置にいた場合、俺が先に魔物に見つかるリスクがある。こんな時に『サーチ』が使えれば良いんだろうけど、まだ近くしか見えない『サーチ』を使うより、今の状態の方が見やすい)



 俺は戦いに備えて『パンプア』を唱えて自分を強化して、いつでも戦闘できるようにした。


 そして、いびきをしている音がどこからか聞こえてくる。


 魔物が寝ているのかもしれないと思い、いびきが聞こえる方へ向かって行く。その場所に近付くほど、変な臭いも強くなっていく。



(ここか……)



 いびきをかいて寝ている何かが、木の下の所にいる。そこにはめぐすり草も1つ生えているみたいだ。


 俺は無言詠唱で『ファイア』を唱え、小さい火の球を出し、寝ている何かに向かって優しく投げる。


 火の球はゆっくりと落ちて、俺はその間に両手で剣を構えて、すぐに攻撃する準備を整えた。


『ファイア』がいびきをかいて寝ている何かに当たると「熱っ!」という声を出して起き上った。


 剣を構えていた俺は、すぐに攻撃できるようにしていたため、声を上げた瞬間に剣を振り下ろし始めていたが、寝ていた何かが明らかに人のような声を発したので、無理やり体を横に回転させて剣の軌道を変えて、剣は木の根に当たり、食い込むのであった。


 人の声を発して何かは、今の剣が食い込む音で俺の存在に気が付いたようだ。



「あれ? 誰かいるのか?」



 持っていたランタンに明かりを点けると顔がはっきり分かる。


 俺が草原で出会った冒険者の茶髪の男のようだ。草原で会った時よりも顔が赤く火照っているようだ。



「お! あんた草原でコールと話していた少年か! 名前はえーと……酒を飲んでいたからか名前が思い出せない」


「あの、俺はシンって言います」


「そう、シンだシン! やっと思い…………出せない!? どういうことだ?」


「自己紹介はいましたのが最初ですから、思い出せないのも仕方がないですよ」


「っ! そう言うことか。通りでいくら思い出そうとしても出てこなかったんだ。それじゃあ俺の名前は知らないだろ? 俺はアルだ。そして、俺と一緒にいる飲み仲間はコールだ」


「草原で一緒にいた黒髪の人の事ですよね?」


「そうそう!」



 茶髪の男の名前はアルで、今はいないが、草原でアルと一緒にいた黒髪の男はコールという名前のようだ。



「アルさんはどうしてここに?」


「この木から酒の匂いがして、寄ってみたらあって、それを飲んでいたら眠くなってここで寝てたった感じだな」


「こんな所にお酒が?」



 俺は辺りを見渡すが、お酒の入ったビンなどはどこにも見つからない。



「ははは、酒はそこじゃねぇよ。この木の裏に行ってみな」



 アルは立ち上がり、木の下から出て木の裏に回った、俺もアルについて行く。


 木には頭が入るくらいの穴が開いていて、そこにアルが手を突っ込むと変な臭いのする液体を掬い取っていた。



「うっ……何ですかそれ?」


「これか? 酒だよ」


「え?」



 アルはニヤッと笑うと手にある変な臭いの液体をゴクッと飲んだ。



「はぁ美味ぇ……まだ熟成が足りないからか。味に深みは足りないが、その分果実の甘さが強い」



 アルは美味しそうに飲んでいるが、俺には美味しそうに見えなかった。


 そしてアルは木に寄りかかりながら座り、いびきをかいて眠るのであった。

ゴブリンは追って来なかったので別の場所に移動する。


葉や枝の隙間から差し込む光の近くにある木の下を探すと、周りは暗いのにめぐすり草だけ明るかったので簡単に見つけられた。


クエストクリアに必要な10つのうち9つを見つけることができたが、もうめぐすり草を見つけられなかったので、場所を移動する。


移動した先で変な臭いがして、いびきが聞こえたので近づくと何かが木の下で寝ていて、そこにめぐすり草が生えていた。


寝ていたのは、草原で出会った茶髪の男で、アルという名前のようだ。そして今はいないが草原でアルと一緒にいた黒髪の男はコールという名前のようだ。


アルがここにいたのは、この木の裏に酒があるからで、木にある穴から手で液体を掬い取り、これが酒だと言う。それをアル美味しそうに飲んで眠るのだった。

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