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241話 ☆3『ゴースト討伐』⑥(脇道)

 アルンの街は見えているが、まだまだ距離がある。俺は脇道に移動してウルフたちを撒こうとするが、しっかり付いて来るようだ。


 俺が今走っているこの道は、冒険者がよく使う通り道から外れているからか走りにくい。


 朝に雨が降っていた影響もあって柔らかく、踏み込むと足が少し沈む。暗くて地面が見えにくいこともあって思うように踏み込むことができず、走る速度が遅くなっていた。


 この速度ではウルフに追いつかれてしまいそうだが、追いかけて来るウルフも、この柔らかい地面で足を取られているようで、ウルフたちの動きも遅くなっていたが、俺とウルフとの距離は徐々縮められていた。



「グルルルゥ……ガウッ!」



 俺に追いついたウルフが一気に俺の所に飛んできて、腕に噛み付いてくる。



「うっ、離せ!」



 俺はその場で立ち止まり、噛まれた方の腕を振ってウルフを引き剥そうとするが、ウルフは余計に噛み付きを強くしていく。


 腕を振るだけじゃ離れない、俺は剣をウルフのお腹に向かって突き刺して攻撃をする。ウルフはその痛みで噛む力が弱まったので、蹴とばして引き剥がした。


 ウルフの反撃に備えて剣を構えていたが、ウルフは鳴き声を出しながらどこかへ逃げてしまったようだ。俺を追いかけていたウルフは、さっきの1体だけのようで、もう魔物は近くにいないみたいだ。



「俺の所に1体だけしか来なかったってことは、アオの方に向かったのか!?」



 俺はアオを心配してアオを呼んでみるが返事がない。ウルフの声も聞こえないので、おそらく近くにいないだけだろう。


 ということは、アオは先にアルンに帰れたのかもしれない。そう信じて俺はアルンに向かって走り出した。






 アルンに向かう途中でランタンを持って移動する冒険者の2人組とギルド職員1人が、俺の方を見ている。俺がその3人の横を通り過ぎようとすると、冒険者に呼び止められた。



「お前はシンか?」


「なんで俺の名前を?」


「おおやっぱりか! お前を見かけたら助けてあげてほしいってやつがいてよ。丁度俺たちはクエストでここを通るから、見つけたら声をかけるつもりだったんだ」


「もしかして、探してほしいって言った人は青い髪をした人ですか?」


「そうそう青い髪のやつに頼まれたんだ。ウルフには追いかけられていないようだし、助けはいらないな」


「はい、ありがとうございます」


「礼なら街で待ってる仲間に言いな。それじゃあ俺たちはこれで」



 そう言うと冒険者たちとギルド職員は先に進んで行った。



「そうか、アオが俺のために助けを頼んでくれていたんだな。アオを安心させるためにも、急いでアルンに戻らなきゃ」



 俺は口元をニヤッとさせながら、走り出すのだった。






 ■






 アルンに着くと、街の出入り口の所でアオが落ち着かない様子で立っているのが見えた。


 アオも走ってくる俺に気が付いたのか、笑顔で手を振ってくるのだった。



「シンくん無事だったんだね!」


「ウルフも1体だけしか俺の所に来なかったから、大丈夫だったよ。その分アオの方にウルフが行ったんじゃない?」


「いや~、僕は必死に走っていて、気がついたらアルンに着いていたんだよ。ウルフもいつの間にか追いかけてこなくなっていたから、僕も大丈夫だったよ」


「そうなんだ、まぁお互い無事で良かったよ」


「あっ! さっきシンくんを助けてほしいってお願いしちゃった人がいたんだけど、どうしよう、シンくんが戻ってきたことどうやって伝えよう……」


「それなら俺は途中で会ったから大丈夫だと思うよ」


「あっ会えたんだね。ということは伝えなくても大丈夫そうだね。それじゃあそろそろクエストクリアの報告に行こう!」



 俺たちはお互い軽く笑うと、ギルドに向かって歩き出すのだった。






 ギルドに着くと、俺たちよりも先にクエストに行った冒険者たちが帰ってきているのか、食堂でお酒を飲んでいる冒険者たちが多くいた。


 俺とアオは、クエストの報告をしている冒険者の後ろに立って、順番待ちをするのだった。



「こちらが報酬金となります」



 受付のヨルが報酬金を出すと、冒険者はサッと受け取り、そのまま食堂に向かって行くのだった。受付が空いたので、俺たちもクエストクリアの報告をする。



「クエストお疲れ様でした。では魔石の確認をさせていただきます」



 俺は9個でアオが10個の魔石を出し、その場で確認が行われる。そして、全ての魔石の確認が終わったら、他のギルド職員に魔石を渡して、報酬金の用意をするのだった。



「確認ができました。こちらがシンくんの報酬金で、こちらがアオくんの報酬金となります」



 俺は1450(ゴールド)入った袋を受け取り、ギルドカードには2900GP(ギルドポイント)が追加された。


 アオも俺より魔石1つ分多い報酬をもらっていて喜んでいるようだ。



「やったよシンくん、いっぱい報酬金もらえた!」


「眠くなってきたし、そろそろ帰ろうか」


「うん、僕も早く帰って寝るよ」



 俺たちはギルドから出て宿に戻り、自分の部屋の扉を開ける。



「シンくん今日はありがとね、おやすみ」


「うん、おやすみアオ」



 そう言ってアオと別れた後、着替えてベッドに入るとすぐに眠るのだった。

脇道に移動してウルフを撒こうとするが、しっかりと付いて来る


噛み付いてきたウルフ1体を刺すと、ウルフは逃げ出した。


途中で冒険者2人とギルド職員1人に出会い、呼び止められる。アオがこの人たちに俺の事を助けるようにお願いしていたようだ。


アルンに着くと、アオは落ち着かない様子で出入り口にいた。


無事に合流して、クエストクリアの報告をした後、部屋に戻って眠るのであった。

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