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238話 ☆3『ゴースト討伐』③(背中)

「シンくん、僕が前に出てゴーストを引き付けるから、その間に『サーチ』を使って!」



 体を震わせたアオが俺の前に出て、『サーチ』を唱えるための時間を稼ごうとしている。アオのためにも、俺は1秒でも早く完全詠唱をするために動き出す。



「我が魔力を一つに、魔素の輝きを強め、大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる。サンラ、オルク」


「ケケケ」


「うわぁ、背中が凍る!」



 ゴーストは俺の背中に触ると、俺の背中を凍らせてくる。


 俺の叫び声を聞いて後ろを振り向いたアオは、すぐに駆け付けてくれた。



「シンくん今助けるよ! 『ヒール』!」


「ォォォ」



 俺を攻撃していたゴーストの体は消え魔石が地面に落ちる。


 アオがゴーストを倒したはずだが、俺の背中にはまだ冷たい感覚が残っていて、体が思うように動かせなくなっていた。


 首は動くので、自分の背中を見てみると、服に氷が張り付いていた。



「シンくん大丈夫? あっ、服に氷が……今取ってあげるからね」



 アオは後ろに回り込むと、手で氷を払い落とそうとするが、氷は服にくっ付いていて剥がれなかった。払うだけじゃ取れないと分かったアオは、氷の端に指を付けて、そこから氷を引っ張って剥そうとした。



「うっ、冷たい! ふんっ……!」



 アオは指の冷たさに耐えながら氷を引っ張ると、付いていた氷は剥がれた。剥がれた氷が地面に落ちると、魔素に変わって消えていった。


 アオのおかげで、背中に感じていた冷たさが無くなり、体も思い通りに動くようになった。そのあとすぐに首に冷たい感触が伝わってくる。



「ケケケ」


「っ!? 『ヒール』!」


「ォォォ」



 アオが俺の後ろにいたため、俺の首を攻撃してこようとするゴーストを見つけることができ、ゴーストに攻撃される前にアオが倒してくれた。



「シンくん、一旦ここから離れようよ。ゴーストが多くて大変だよ」


「分かった、今のままじゃ厳しいみたいだ」



 俺とアオは、倒したゴーストの魔石を回収すると墓地から走って逃げる。何かが追いかけてきているような感じがするが、後ろを見ても何もいない。


 俺たちは逃げている途中でゴーストに襲われることなく、墓地から離れることができた。






「ふぅ……なんとか墓地から離れられたようだね」



 逃げた先の周囲を警戒してもゴーストが現れないので、ここにはゴーストはいないと安心する。俺とアオは、マジックポーションを飲んで、墓地で使った魔力を回復させていく。


 マジックポーションを飲み終えた俺は、追加でポーションを飲んで、ゴーストから受けたダメージを回復させていく。


 ポーションを飲んで口が塞がっている俺に、アオが話しかけてくる。



「でも困ったね、シンくんが『サーチ』を使う前に攻撃されちゃうんじゃ、シンくんの回復にも『ヒール』を使わなくちゃいけなくなるから、僕の魔力が足りなくなるかもしれない」


「その心配はいらないよ、ほら、俺にはポーションがあるからこれ使って回復するよ。だからアオはゴーストを倒すのに魔力を使って」



 俺は飲み干した空のポーションのビンをアオに見せた。



「うーん、シンくんがそれでいいならやるけど……ゴーストと戦ってもアイテムいっぱい使っちゃうことになるね」


「そうだよな、ゴースト1体を倒して落す魔石が1つで50(ゴールド)と100GP(ギルドポイント)だもんな。たくさん倒して報酬を上げても、それと同じくらいアイテム使っていたらもったいないよね」



 俺たちは持ってきたアイテムを確認してため息を吐いた。マジックポーションの残りは2本、暗視ポーションも1本しか残っていない。俺が自室でコツコツ作っているポーションも、さっき飲んで残り4本だ。


 このアイテムたちでどこまでゴーストと戦っていられるか。


 アオの袋の中も、俺と入っているアイテムは同じくらいだろう。アオもどうやって戦うか考えているようだった。


 そんな時、アオを見ていた俺の視界がだんだんと暗くなっていく。暗視ポーションの効果が切れてきたようだ。


 俺とアオは、持って来た最後の暗視ポーションを飲んで、視界を明るくする。



「シンくん、もう暗視ポーションが無くなっちゃったから、行くなら早く行って帰ろうよ」


「そうだね、じゃあそろそろ墓地に向かおうか」



 俺とアオは、空になったビンを袋にしまうと、墓地まで向かって行くのだった。






 墓地のそばまで来たので一旦足を止める。



「俺は今のうちに『サーチ』の詠唱をするから、アオは俺の背中や首を注意しておいて。ゴーストたちは、なぜかそういう所ばかり狙っているみたいだから」


「うん、分かった」


「じゃあいくよ」



 俺は誰にも邪魔される事なく完全詠唱をすると『サーチ』を唱えて視界を灰色に変えていく。



「どうシンくん、ゴーストはいる?」


「いや、ここにはいないみたい。もうちょっと進むよ」



 俺は『サーチ』が解除されないように慎重に前に進んで行く。解除されてしまえば、また発動させるまでに時間がかかり、ゴーストたちに邪魔されてしまうので、このまま発動したままの方が良いのだ。



「あ、いたよ! あそこが赤く見える。こっちに近付いてきているよ」



 俺は近付いて来るゴーストを指で差し続けて、アオに場所を伝える。



「そこだね! 『ヒール』!」


「ォォォ」



 俺が指差す方向にアオが『ヒール』を使うと、ゴーストが苦しみながら現れて、魔石を落として消えた。



「や、やった! 今回は攻撃される前に倒せたね!」


「うんそうだね、アオ、次はあっちにゴーストがいるよ」


「任せて! 『ヒール』!」



 アオが『ヒール』を使った瞬間、ゴーストが進む方向を変えて『ヒール』を避けた。



「ォォ……」



 ゴーストは体の一部に『ヒール』が当たったようで、苦しみだしたが、倒すことはできなかった。ただ、ダメージを受けているからか、姿が完全に消せてはいないようで、薄っすらとゴーストが見えていた。


 見えているなら簡単に当てられるので、アオがきっちりゴーストを狙って『ヒール』を使うのだった。



「ォォォ」


「良い調子だね」


「アオごめん、もう俺の『サーチ』が続かないみたいだ……」



 俺の視界は元に戻り、ゴーストが見えなくなった。ここから俺たちはまた、見えないゴーストと戦うのであった。

『サーチ』の完全詠唱をする前にゴーストに攻撃されて、『サーチ』が使えない。


背中を凍らされて、アオに氷を剥してもらった。


一旦墓地から離れてポーションやマジックポーションを使って回復する。暗視ポーションも効果が切れたので、最後の1本を飲んだ。


もう一度墓地に向かい、早めに『サーチ』を使うことで、ゴーストに攻撃される前に発動できた。これにより2体のゴーストをダメージを受けずに倒すことができたが、そこで『サーチ』が解除され、見えないゴーストとまた戦うのであった。

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