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237話 ☆3『ゴースト討伐』②(幽霊)

「あそこが墓地か……」



 お墓が見えてきたので、もう少しで墓地に到着する。


 まだ離れているとはいえ、ここからでもお墓の石が等間隔に配置されていることが分かる。お墓以外は何もないはずなのに、近づくにつれて空気が重たく感じていた。


 緊張で頬から冷や汗を垂らすと、背中を何かに引っ張られる感覚がして、驚いて体が跳ねる。俺はすぐに後ろを振り向くと、アオが俺の服を掴んで震えていた。



「シンくん、早くゴースト見つけてここから離れようよ」



 アオは声を震わせながら、俺の服を更に強く掴んだ。



「そうだね、俺も早くここから離れたいから、ゴースト見つけてさっさと倒しちゃおう。俺が見つけたら場所を教えるから、アオはそこに向かって『ヒール』を使ってね」


「う、うん!」



 俺は深く息を吸い、完全詠唱で『サーチ』を唱える。


 視界は灰色に変わり、右を見たり、左を見たり、後ろを見たりと、ゴーストを探すが、この目には何も映らない。


 やはりこの位置だと、墓地から離れすぎていて、俺の『サーチ』じゃ見つけられないようだ。



「シンくん、ゴーストは見えた?」


「全然見えない。やっぱりもっと墓地に近づく必要がある」



 俺は『サーチ』を解いて、墓地に向かって歩き出す。



「うぅ、やだなぁ……」


「このクエストにしたこと後悔してる?」


「うん、めちゃくちゃ後悔してるよ」



 アオは遠くを見つめながら俺に答えた。



「とにかく、さっきの場所からじゃゴーストは見えなかったし、もっと近づかないとゴーストは見えないはず。できれば『サーチ』の範囲内にお墓が入るくらいまで近づきたい」


「うぅ……何も出てきませんように……」



 俺たちはゆっくりと墓地に歩いて行った。一歩進むごとに、嫌な感じが強くなっていく。


 何もいないはずの場所に何かがいるような感覚がするが、まだ『サーチ』の範囲外なので見ることはしない。


 もっと、もっと近づいてから…………






 そうやって墓地に近づく事ばかり考えていると、俺の首に冷たい何かが触れる。その直後、アオの叫び声が聞こえた。



「うわぁぁぁ! シンくん右に白いのがぁ!!!」


「右? ……っ!?」


「ケケケ」



 右に振り向くと、上が丸くて太いのに、下に行くとどんどん細くなっている。黒い目をした幽霊みたいな白い何かが浮いていて、俺の首を触っていた。見た目はあまり怖くなく、むしろ可愛いと思えるこいつがゴーストなのだろうと思っていると、俺は攻撃されて横に吹っ飛ばされた。


 俺の背中の服を掴んでいたアオも一緒に飛ばされて、2人とも地面に倒れる。



「っ……いったぁ! アオ、大丈夫!?」


「うん、僕は攻撃されてないから大丈夫。でもシンくんは首のところが……」



 アオに指摘されて首を触ってみると、首に氷が付いていた。俺は首に付いた氷を手で払う。



「ケケケ」



 ゴーストは、俺たちの方を見ながら後ろに下がっていくと、どんどん体を透明に変えていき、完全に姿が見えなくなった。



「シンくん、あれがゴーストで良いんだよね?」


「うん、姿も見えなくなったし、あいつがゴーストだよ。俺は『サーチ』でゴーストを探すから、アオはさっきみたいにゴーストが出てきたら攻撃して!」


「うん!」



 俺は『サーチ』を完全詠唱で発動させて周囲を見る。すると、目の前の視界には2体赤い魔素の反応があった。


 その2体の赤い魔素は、こちらに近付いてくる。



「アオ、あそことあそこに反応がある!」


「分かった、『ヒール』!」


「ォォォ」



 アオが俺の教えた場所に『ヒール』を使うと、1体のゴーストは苦しみだして姿を現し、そのまま魔石を落として経験値を吐き出した。


 続けてもう1体近づいてくるゴーストに向かってアオが『ヒール』を使うと、あっさり倒されてゴーストは魔石を落とすのだった。



「シンくん、他にゴーストはいないの?」


「うん、他は見えないかな」


「ふぅ、良かった。ゴーストって『ヒール』で簡単に倒せるんだね。それにもっと怖い魔物だと思っていたけど、意外と可愛かったね。ぬいぐるみが売っていたら欲しいよ」


「あんなに怖がっていたのに、もう全然怖がってないね」


「うん! あんなに可愛いならゴーストは怖くないよ」


「それは頼もしいな。じゃあ魔石を回収したらもっと奥へ進もう」



 俺はアオが倒して出てきた魔石を袋に入れて、新たなゴーストを探しに移動する。



「ちょっと待ってよシンくん! ゴーストは怖くないだけで、他は怖いままだから僕から離れないで!」



 アオは急いで俺の後を追いかける。



 少し進んで、ここで『サーチ』を使おうと完全詠唱をしていると、首に冷たい何かを感じた。振り向くと別のゴーストが姿を現していた。



「ケケケ」


「くっ、このぉ!」



 俺は剣を振って攻撃する。それでゴーストの体を2つに分けたと思ったが、何事もなかったかのようにもとに戻って、俺に氷の魔法をぶつけてくるのだった。



「シンくん今助けるよ、『ヒール』!」


「ォォォ」



 アオが『ヒール』を当てたことで、ゴーストに姿を消される前に倒して魔石にすることができた。



「はぁ……思ったより見つけるのは厳しいな。俺はまだ完全詠唱でしか『サーチ』が使えない、それだと時間がかかって、唱える前にゴーストに攻撃されちゃう」



 俺はこの後どうやってゴーストに攻撃されずに『サーチ』を使えるか考えるが、良い案は思いつかないのであった。

アオに背中の服を掴まれながら『サーチ』を使うが、何も映らなかったので墓地へもっと近づいた。


墓地に近付くことばかり考えていたからか、ゴーストに接近を許してしまい、氷の魔法攻撃を受ける。


ゴーストが姿を消したので『サーチ』で探すと2体見つける。アオが『ヒール』を使うことで簡単に倒せて魔石を出した。


他のゴーストを見つけようと、完全詠唱をしている途中で襲われる。


攻撃される前に『サーチ』を使う方法を考えるが、良い案は思いつかないのであった。




魔物の紹介


・ゴースト


上が丸くて太く、下に行くと細くなっている。目が黒くて幽霊みたいな魔物。


普段から透明で、攻撃する時は姿を現す。攻撃方法は、攻撃対象に触れて氷の魔法を使ってくる。


ゴーストは幽霊なので『ヒール』などの回復魔法で大ダメージを与えられる。


ゴーストがいる場所の魔素を濃くするので、周辺の魔物に影響を出す。

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