234話 『サーチ』鍛錬!②(透視)
ドコォォォン! っと大きな音で目が覚める。窓を見ると、外は雨が大量に降り雷まで鳴っていた。
朝のはずなのに誰も外に出ていない。レインコートとレインブーツを装備して、外に出てみるが、俺以外誰も街を歩いていなかった。
俺は風に煽られながらもギルドに向かった。
この天気だからか、ギルドに着くまでにレインコートを着た冒険者が1人ギルドから出てきただけで、ギルド内も冒険者はおらず受付にもギルド職員がいなかった。
掲示板を見てみると、クエストが1枚も貼られていないことを見つける。
「え? クエストが、無い……とにかくギルド職員さんに話を聞かなきゃ」
俺は受付に向かって歩き、奥にも聞こえるような声でギルド職員を呼んだ。
「誰かいますか!」
「……ちょっと待っていてくださーい! うわぁ」
ドンっと物がぶつかる音と共に、ギルド職員の叫び声が聞こえた。
だが、ギルド職員は何事もなかったこのように受付のある所まで歩いてきた。
「あの、さっき大きな音がしましたが、大丈夫なんですか?」
「荷物整理をしていたら荷台を壁にぶつけちゃっただけなので大丈夫ですよ」
「それは良かったです。あの、今掲示板を見て来たのですが、クエストが1つもなくて……もしかして今日はクエストできないんですか?」
俺は何も貼られていない掲示板を指差しながらギルド職員に聞いた。
「ああ……実は今できる下位クエストは無いんですよ。先ほどクエストに向かった冒険者さんで最後です」
「そうですか……次のクエストはいつ頃貼りだされますか?」
「天気次第になりますが、この感じですと、夕方か夜くらいに貼りだされると思います」
「分かりました、ありがとうございます。また夜にでも見に来ようと思います」
「はい、いつでもお待ちしております!」
ギルド職員はそう言うと、荷物整理をしに奥の方へと行ってしまった。
誰もいなくなったギルドにいても仕方がないので、俺はギルドから出て自分の部屋に戻ることにする。そして部屋に着くと、レインコートやレインブーツを脱いで、夜まで『サーチ』の鍛錬をすることに決めるのだった。
雨の音と雷の音が耳に入ってくる。だけど慣れて来たからか、驚かなくなってきた。魔法書を読んで詠唱の復習をして。完全詠唱で『サーチ』を唱える。
灰色になった視界に自分の手を入れる、
青く見える手をしばらく見つめていると、徐々に視界に色が戻り始めて『サーチ』が解けた。
再び『サーチ』を使おうと詠唱するが、ピカッと光った空に意識を取られて、詠唱が中断されてしまう。
俺は、雷の光が集中の邪魔をしないように、窓が見えない壁側に体を向けて、目に光が入りにくくする工夫をした。
雷の光に邪魔されることなく完全詠唱をすることができ、『サーチ』を唱える。
目の前の壁は灰色になり、自分の手を視界に入れようとしたら、壁の向こうから青い何かが見える。それは人の形をしていて、座っているような体勢で、両手で何かを持っているように見えたが、いきなり見えた事で、俺は何が起きているのか分からなくなっていた。
そして、視界は元の色に戻って『サーチ』が解ける。
「今のは何だったんだ? 魔法書に書いてあるかな」
俺は魔法書を開いて、『サーチ』の効果を改めて確認する。すると魔法書には、壁などの遮蔽物を越えて魔素を見ることができると書かれていた。
「『サーチ』って使い方によっては透視できるような能力でもあるのか。ってことはさっき見た青い魔素は、隣に住むハクが見えたって事かな? そうなると、ハクがやっていたことを考えるなら本を読んでそうだけど……本人に確認してくるか」
俺はハクに何をしていたか確認するために、ハクの部屋をノックする。少ししてから扉が開けてハクが出てきた。
「……シンか、何の用だ?」
「ハク、ちょっと聞きたいんだけど、さっきイスに座って本を読んでなかった?」
「……そうだが、なんで分かったんだ」
「やっぱりか。実は今新しく『サーチ』って魔法の鍛錬をしていて、その魔法を使っていたらハクの姿が見えちゃって……」
「……なるほど、シンは俺の事を覗き見していたってことだな」
「そこは本当にごめんなさい! 見るつもりはなかったんだよ」
「……まあいい、悪気はなさそうだしな。それにしてもその『サーチ』って魔法は凄いな。俺は見られていた気配なんて感じなかったぞ。どこまでそれで見えるんだ?」
俺は『サーチ』で見える範囲や、何が見えるかをハクに伝えた。
魔物は赤く見えることや、人は青く見えることなど。そして形はぼんやりとしているが、ある程度の形が分かることを教えた。
「……そう言うことか。じゃあ俺は一旦扉を閉めるから『サーチ』を使って俺が立てている指の本数を当ててくれ。見えたらノックして俺を呼んでいいぞ」
ハクはそう言うと扉を閉めた。
俺は完全詠唱で『サーチ』を使い、ハクの部屋の中を見る。
扉の近くには青い魔素が見えた。人の形をした青い魔素は、肩と同じ高さに両手を持ってきていることが分かる。
だが、その両手をジッと目を凝らして見ても指が立っているようには見えなかった。いくら見ても指の立っている本数は分からないまま『サーチ』が解け、仕方なくハクを呼ぶために扉をノックする。
「……どうだ? 俺が何本指を立てているか見えたか?」
「ごめん、全然見えなかった。両手が肩の高さにあるようにしか見えなかったよ」
俺は見えなかったことに落ち込んでいたが、ハクは感心したような表情で俺を見ていた。
「……本当に見えているんだな」
「え?」
「……実は、指を立てないで、手を握ったまま肩の高さまで両手を上げたんだ。こんな感じで」
ハクは手をグーの形にしたまま肩の高さまで両手を持ってきた。確かに指は1本も立てていないようだ。
「良かったー、見えてないわけじゃなかったのか」
俺は胸を撫で下ろした。
「……俺にもその魔法教えてくれないか? それが使えれば俺が出した『スモーク』の中で隠れている魔物や、俺がスモークで隠れながらでも攻撃ができる」
「なにそれ強そう。今から魔法書を持ってくるから待ってて!」
俺はそう言って自分の部屋から魔法書を持ってきた。そして、そのままハクの部屋に入って行くのだった。
雷の音で目が覚める。外は雨と雷で凄かった。
ギルドに向かうと冒険者はおらず、ギルド職員も受付にはいなかった。掲示板にクエストが無かったため、ギルド職員を呼ぶと奥から出てきた。
クエストの事について聞くと、どうやら今は下位クエストが無いようで、天候次第だが、クエストが貼られるのは夕方か夜のようだ。
俺は夜にまた来ることを伝えてギルドから離れた。
部屋に戻って『サーチ』の鍛錬をしていると、隣の部屋のハクを見てしまう。
そしてハクに『サーチ』で見たことを話して、ハクが『サーチ』の性能を確かめるためにやったことで盛り上がり、ハクも『サーチ』を覚えたいということで、魔法書を持ってハクの部屋に行くのだった。




