227話 ユカリたちと温泉の旅!㉑(日常)
食べ終えた料理を全て片付けてもらった後は、ステージで演奏をしていた演者たちが、大広間の中心に集まって、俺たちのすぐそばで演奏してくれるようになった。
楽器から出る振動が、俺たちの体を心地良く揺らしていく。気が付けば、明るかった空も夕焼けになり、オレンジ色の光が大広間に差し込んでくる。
店員たちは、空が完全に暗くなる前に明かりを灯していく。1つずつ灯されていく明かりも、暗くなる空を背景にすることで、美しく感じることができた。
こうして夕食は大盛り上がりで終わり、俺たちは満足して大広間から出ていくのであった。
自分の部屋に戻ろうと、俺とアオとハクとユカリの4人で階段を上っていく。2階に来たので、俺はみんなと離れようとすると、アオが話しかける。
「旅館の屋上に売店があるってシンくん知ってる?」
「そうなの?」
「知らないなら言った方がいいよ! これからみんなで屋上に行こう」
「……俺たちはGが無いから何も買えないぞ」
ハクにそう言われて、アオは固まった。
「夜景を見に行くだけでも楽しいはずですわ。そうですわよねアオくん」
「う、うん、そうだよ! 夜景を見るだけでも楽しいよ! 行こうよシンくん」
「部屋に戻ってもやることないし、明日にはアルンに帰るんだから、行ってみようかな。ハクはどうする?」
「……この状況で行かないという選択が取れるなら、一緒に旅館まで来ていない」
「じゃあみんな屋上に行くってことだね。アオ、屋上まで案内して」
「うん、僕に付いてきて!」
俺たちはアオに付いて行き、最上階まで来ると、そこから廊下を移動する。旅館の布の服を着た客とすれ違うことが多くなってくる。みんな何かしら買っているようで、手に袋を持って歩いていた。
「この階段の先が屋上だよ」
下りて来る人を避けながら階段を上った先に引き戸があり、そこを開けると出店や屋台が数店舗あり、設置されたテーブルやイスに集まって食べたり飲んだり話したりと、客たちが楽しそうにしていた。
「あっちから村が見下ろせるよ」
アオが向かった先に行くと、柵があり、そこから下を見ると、たくさんの人が行き来しているのを見ることができた。
「星も綺麗ですわ」
「山から流れる川もキラキラしているよね」
反対側を向いて山の方を見ると、川の中にある魔石は空気中の魔素を吸って光だし、昼間に見た時とはべつの輝き方をして、見る者を魅了していく。
風が吹くと、生暖かい空気と共に温泉の良い香りを連れてくる。そこに出店や屋台の食事の香りも付いてきて、何も買わなくても十分に楽しめていた。
「Gがないと分かると無性に食べたくなってくるよ」
アオは他の客が買って食べている物を見つめて、生唾を飲み込む。
「……これ以上ここにいてもアオは辛いだろう。そろそろ帰るか」
「そうだね、アオそろそろ行こう」
「うん」
アオは屋上から出ていくまでの間、屋台の方を名残惜しそうに見ているのだった。
3階まで戻ってくると、みんなはそれぞれの部屋に帰って、俺1人だけとなった。
俺はこのまま自分の部屋に戻らずに、温泉まで向かった。1人で夜の温泉を楽しむのだ。
その後はのぼせるギリギリまで温泉に浸かり、部屋に戻って窓を開けて、風が部屋に入ってくるようにしてからベッドに入り、眠るのであった。
■
朝になり太陽の光が部屋を照らす。俺はゆっくりと体を起こして、ベッドから足を出して立ち上がる。温泉に入ったこともあってか、寝覚めは良く、頭もいつもよりスッキリしている。
魔力を全身に巡らせると、流れが良くなっているような気がしていた。そうやって魔力を流して遊んでいると、扉がノックされた。出てみると店員が朝食を届けてくれていたようだ。
「おはようございます。昨日はよく眠れたでしょうか? 朝食を持って参りましたのでお部屋にお運びします」
「はい、よろしくお願いします」
店員は食事を部屋にすぐ運び終える。
「食器は私たちが回収致しますので、お部屋に置いたままで構いません」
「分かりました」
「では、失礼します」
店員が部屋から出ると、俺は食事を食べ始める。
出されたパンは焼き立てで、ふわふわもちもちの柔らかい触感だった。そこにタマゴと野菜が合わさって、朝食を美味しく頂くことができた。
食べ終わった後、俺は冒険者の服に着替えて、荷物をまとめて忘れ物がないか確認する。忘れ物はなさそうなので、鍵を持って部屋を出て、アオたちと合流するために3階に向かった。
俺が3階に上がると、ハクとユカリが廊下にいて、アオのいる部屋の近くで待っていた。
「シンくんおはようございますわ」
「……シンおはよう」
「2人ともおはよう。アオはまだ部屋の中みたいだね」
「さっき声をかけたので、すぐに出てくると思いますわ」
ユカリがそう言うと、ドタドタと走る音が聞こえて、扉が開けられる。
「おまたせ。あ、シンくんおはよう!」
「うん、アオおはよう。じゃあみんな揃ったし行こうか」
俺たちは階段を降りて旅館の入り口まで移動すると、宿泊していた客たちが列を作り、店員に鍵を返していた。俺たちもその列の後ろに並び、順番が来るのを待っていた。そして俺らの番になり、鍵を店員に返した。
「ご利用いただきありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」
店員が頭を下げて俺たちをそう言ったのを聞きながら、俺らは旅館から出るのだった。
オンセーン村の入り口まで歩くと、馬車が出ていて、冒険者たちが馬車の周りに集まっている。
「この馬車はアルン行きだよー、乗りたい人は無料で送るよー」
御者がそう言うと、次々に冒険者が馬車に乗り込んでいく。俺らもその馬車に乗り込んだ。
「もう乗る人はいないかい? じゃあアルン行き出発するよー」
御者は馬に指示を出すと馬車が動き出し、俺らは馬車に揺られながらアルンに帰る。馬車の隙間から見えるオンセーン村に別れを告げて、俺たちはアルンで日常に戻るのだった。
料理を食べ終わったら、ステージで演奏をしていた演者たちが大広間の中心に集まって、俺たちのすぐそばで演奏してくれるようになった。
自分の部屋に戻ろうとすると、屋上にある売店に向かうこととなった。
屋上では客たちが楽しそうに食べたり飲んだり話したりしている。アオの向かった先に行くと村が見下ろせて、空には星が、山から流れる川はキラキラと輝いていた。
一通り屋上の雰囲気を楽しんだら、みんな自分の部屋に帰った。俺は1人で夜の温泉を楽しんだ後、自分の部屋の窓を開けて風が入るようにしてから眠るのだった。
朝になり朝食を済ませて帰り支度をする。
旅館から出て、オンセーン村の入り口に来ると、アルン行きの馬車が無料ということだったので乗り込んだ。
俺たちは馬車に揺られながらアルンに帰り、日常に戻るのだった。




