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225話 ユカリたちと温泉の旅!⑲(盾)

 ハクがユカリに矢を放つと、ユカリは半歩ほど体を横に動かすことで矢を避ける。


 ハクは新たな矢を使おうと、矢筒に手を伸ばして矢を取ろうとする仕草を見せると、ユカリが走り出す。新たな矢を使うためにできるこの隙をユカリは突いてきたのだ。


 すぐに攻撃できないタイミングで仕掛けられたハクは、矢を取りに行くのを止めて、弓を引き絞る。


 ハクの手にはさっきまでなかった魔力の矢が出来ていて、迫りくるユカリに向かって撃った。だが、ユカリは飛んで魔法の矢の上を通って、ハクに切りかかってくる。



「……『ボイズスモーク』」


「させませんわ、『ウィンドショック』!」



 ハクが地面に毒煙を立てて身を隠そうとするところで、ユカリは空中にいながらも器用に細身の剣を振り、毒煙を散らしていく。


 だがこれにより、ユカリは剣を構えなおすまで攻撃できず、空中にいるため避けることができない。


 ハクは魔法の矢を作り、ユカリに向けて撃って少しでもダメージを与えようとしたが、ユカリは『フライ』を使って空中を蹴り、ハクの周りを飛び始める。


 ハクは『フライ』で空中を移動し続けるユカリに魔法の矢で連続攻撃をしていく。ユカリは当たらないように何度も『フライ』で方向転換したり、高く飛んだりしながら避けていた。



「……いつまで飛んでいられるかな。俺は魔法の矢でユカリは『フライ』を使っている。魔力の消費量では圧倒的に俺が有利だ」


「そうね、このままじゃ私の魔力の方が先に無くなりますわ。でもハクくん、私にばかり構っていていいのかしら?」


「……何?」



 ハクは背中に俺は体当たりをして、体勢を崩したハクがその場に倒れそうになったが、腕を地面に叩きつけて、一回転しながら両足で地面に立った。


 しかし、ハクが俺に意識を向け始めると、今度はユカリがハクの背中を蹴とばした。



「ぐはっ!」



 背中から来る強い衝撃に、ハクは受け身の体勢を取ることもできず、地面に顔をぶつけてうつ伏せに倒れた。


 ユカリの蹴りは『フライ』で加速しながら蹴ったので、かなりの威力になっていたようだ。






「シンくん、ハクくんが倒れたからちょっと待っていてほしいですわ」


「うん、それには俺も賛成、ハクをこの場から離れさせてから模擬戦を再開しよう」



 俺はユカリにそう言うと、ユカリは地面に降りて、倒れているハクにユカリは近づいていく。


 ハクは顔を上げて周りを確認してから立ち上がって、服に付いた汚れを落としていく。



「ハクくんは地面に倒れたから負けですわ」


「……ああ、ユカリにやり返されたな。これで残るはシンとユカリとアオの3人だ」


「そういえばアオくんの事を忘れていましたわ、どこにいるのかしら?」


「……アオなら最初の位置から動いていないぞ」



 訓練所の隅の方を見ると、アオがビクッとした反応を示しながらこちらを見ていた。



「……それじゃあ俺は邪魔にならない位置で観戦しておく、あとは頑張れよ」



 ハクはそう言うと、訓練所の出口付近まで歩き、壁に寄りかかった。


 俺とユカリはお互いに目を合わせたあと、距離を取って模擬戦を再開させる。


 お互いに相手の隙を窺がってなかなか攻めに行けない状況になっている。


 ユカリは先ほどのハクとの戦いで『フライ』を連発したことで、魔力を消費しすぎていて、ここで俺との戦いが長引けば、隅でこちらを見ているアオと戦う余力は残らなくなってしまうため、慎重に動いていた。


 俺としては、ハク以上に動きの速いユカリに有効打を与えられるとは思えなかったので、何とか消耗させたいと思ったが、ユカリは魔法も技も使わずに細身の剣で攻めてくる。



「えい、えい!」



 ユカリの細身の剣の金属音が、俺の剣に当たって聞こえてくる。


 俺はユカリの素早い剣裁きに防戦一方で、反撃をしている隙が無かった。ユカリもそれが分かっているのか、俺からの反撃を一切考慮しないで、常に攻撃をしてくる。


 防ぎきれなかった攻撃が、俺の体を切りつけて来る。



(このままじゃ加護が無くなる……『スマッシュ』!)



 俺はユカリの斬撃を防いでからすぐに片手の手の平をユカリに向けて無言詠唱をした。


 威力は弱く、ダメージをほとんど与えられていないが、ユカリの攻撃の手が緩み、反撃するチャンスが生まれた。



「はぁぁ!」



 ユカリは細身の剣で俺の剣と鍔迫り合いをする。そのあと片足で地面を蹴って後ろに飛ぶと、細身の剣を持ち角度を変えて、俺の剣はするすると地面に向かって、ユカリに当たらずに地面に当たった。


 俺はそこから一歩踏み込んでユカリに近付き、下から上に向かって剣を振るう。


 ユカリはギリギリ自分の体と俺の剣の間に細身の剣を入れることができて、致命傷を回避する。そして、俺のお腹を蹴って後ろに下がると、一気に俺から離れて体勢を立て直す。


 お腹を軽く摩ってから、追撃しようとすると、体が急に痺れてきた。



「なっ!? 体がっ……痺れて!」


「なんだか分かりませんがチャンスですわ! 『ウィンドショック』!」


「う……動け! うわぁぁぁ!」



 痺れて動けなくなっていた俺は、ユカリの攻撃にやられて吹き飛ばされ、地面に仰向けで倒された。


 倒された後も痺れはどんどん強くなっていく。


 ユカリは俺が地面に倒れたことを確認すると、一気にアオの所まで走り出して攻撃を仕掛けていった。



「『ウィンドスラスト』!」


「『シールド』!」



 アオが両手を前に突き出して、聞いたことのない魔法名を唱えると、アオの姿がこちらから確認できるほどの薄い青色の壁がアオの周囲に広がった。


 その壁は、ユカリの『ウィングスラスト』が当たっても壊れる様子がなく、ユカリはアオに接近して細身の剣で切りつけるが、全て『シールド』によって弾かれてしまった。


 どの角度にも『シールド』はアオの周囲に展開されていて、ユカリがあらゆる角度から攻撃をしても突破できなかった。



「これだけ硬いんですもの、長時間使っていられないはずですわ! うっ、これは!? 体が……痺れて!」



 ユカリが攻撃しようと踏み込むと、急にユカリがその場で止まり、痺れを訴え始めた。



「……俺の麻痺毒が効いてきたようだな」



 壁に寄りかかっていたはずのハクは、俺の隣まで来て、俺を起き上らせてくれながらそう言った。



「麻痺毒って……そんなのいつ使ったんだよ。俺の痺れも関係あるのか?」


「……ああ、俺の矢の何本かには『パラシス』で麻痺毒の効果を付与させてある。ダメージが入ればいずれ体が痺れる。シンもユカリも俺の矢で攻撃は当たっただろ? それが効いてきたってことだ」


「そうだったのか。でも俺は毒耐性の指輪を付けているのに、麻痺毒なんて効くの?」


「……そこは俺も疑問だったが、毒に耐性はあっても麻痺の耐性は無いことは分かったのは大きいな」


「確かにそうだね」



 俺がそう言うと、痺れて動けなくあったユカリに、恐る恐る近づくアオがいた。



「ユカリちゃん大丈夫?」


「大丈夫じゃ……ないですわ。体が……動きませんわ!」


「……ユカリ、俺の麻痺毒が効いてきたんだ。今のユカリじゃアオには勝てない。このまま体を押されて地面に倒されるだけで負けるから、降参するんだ」


「いつの間に……私にそんな毒を!?」


「……壁の上から落とす時に矢を当てていて、その時だ」


「あの時の矢ですの! くぅ……あとアオくん1人だけですのにっ…………降参ですわ……」



 ユカリは悔しそうに降参を宣言することに決めた。



「えっ? じゃあ僕が最後まで残ったってこと? やったぁ!」



 これでこの模擬戦で最後までいられたのはアオということになった。アオは嬉しそうに喜んだあと、みんなを『ヒール』で回復させるのだった。

ハクが新たな矢を使う瞬間を狙ったユカリだったが、すぐに魔法の矢の攻撃に切り替えて素早く反撃をする。


『フライ』で飛びながら逃げ回るユカリにハクが集中していると、後ろから俺に体当たりをして倒れそうになるが、何とか倒れなかったが、ユカリから蹴られてしまい、それで地面に倒されて最初に負けた。


ハクが負けたことで、残りが俺とユカリとアオだけとなった。ここでアオが参加していたことをユカリは思い出す。


俺とユカリが戦い、防戦一方だったので、無言詠唱で攻撃を一時的に止めて反撃をする。体が痺れてきて、その間にユカリに倒された。


ユカリは最後に残ったアオに一気に攻撃を仕掛けるが、アオは『シールド』という魔法を唱えて、周囲に薄い青色の壁を広げた。


ユカリが色んな角度から攻撃しても突破できなかった、新たに攻撃しようとするとユカリも体が痺れて動けなくなる。


どうやらハクの矢には麻痺毒が付与されていて、それが効き始めて俺とユカリは動けなくなったようだ。


ユカリは仕方なく降参して、模擬戦はアオが最後までいられて喜んでいた。



魔法の紹介


・『シールド』


周囲に魔力の防御壁を作る魔法。壁は先が見えるほどの透明度があるが、使用者の魔力の色がそのまま壁の薄い色に反映される。


壁の形は使用者が自由に決められるが、ほとんどは正面に壁を出したり、全方位を囲んでドーム状にしたりする。


壁の強度は使用者の魔力と壁の広さによる。壁は狭いほど強度が上がり、広げるほど強度が下がる。


アオは今回『シールド』をした時は訓練所の隅にいたため、後ろや真横に壁を作らなくて良くなり、強度の高い正面の壁を作るのに集中できた。

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