表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/248

221話 ユカリたちと温泉の旅!⑮(帰還)

 山を下りて、オンセーン村の裏側まで辿り着くと、そこからぐるっと村の周りを回ると、正面入り口が見えてきた。


 俺たちが入り口に近付いてくると、村人たちが大勢待っていて、俺たちが村に入ると馬車の周りに集まり始めた。


 その集まる村人の老人が兵士に尋ねる。



「山賊はどうなりましたか?」


「こちらのサンゾック殿のおかげで、山賊を捕らえることができました!」



 兵士がここにいる全員に聞こえる声でそう言い、馬車からサンゾックが出てきて村人たちの前に立った。


 村人たちがざわざわと騒がしくなる中、サンゾックは手を肩の位置まで上げて村人たちを静かにさせた。



「オンセーン村のみなさん、僕が山賊のボスとその仲間を捕まえた。まだまだ隠れている山賊はいるでしょうが、ボスを失った山賊は統率を失い自壊するはず。もうオンセーン村は山賊の被害にあうことはないはずさ!」


「うぉぉ! これで魔物以外に襲われる心配がなくなった!」


「これで安心して自分の村に帰れるわ」


「山賊の心配がないなら、今よりも人が来て、村が活気になるな」


「「「ありがとうございます」」」



 村人たちはサンゾックに頭を下げてお礼を伝えた。サンゾックは村人に笑顔を見せて対応していると、


 村の入り口で店をやっていて、このオンセーン村の旅館の館主が、村人の間を抜けてサンゾックに握手を求めた。



「お客様、是非このあと私の旅館でお礼をさせてください。今できる最高のおもてなしをさせていただきます」


「それは嬉しい提案だけど、山賊たちをアルン国のギルドまで運ぶので、山まで来てくれた冒険者や兵士たちにやってあげてほしい」


「そうですか……かしこまりました。では、そのように手配致します」


「ありがとう。ああそうだ、実は頼みたいことがあって」


「何でしょうか?」



 館主はサンゾックにお礼ができると思い、笑顔だった表情が更に明るくなる。


 だが、サンゾックが館主に頼みごとをすると言い出したのに、俺とハクの方を見て、こちらに来るようにと手招きをする。


 俺たちはサンゾックの隣に来るのだった。そして、サンゾックは俺たちの肩に手を置いて、俺たちを一歩前へ進ませて、館主とサンゾックの間に、俺とハクがいるような状態になった。



「この2人の事で頼みがあって、山賊を追いかけている間に、旅館の布の服が汚れてしまった。どうかこの布の服の弁償代をなかったことにしてほしいというのが僕の頼みです」


「ちょっと確認させていただきます」



 館主は俺たちの着ている布の服をじっくりと調べる。時間が経つにつれて、館主は困ったような表情を強めていく。


 一通り布の服の状態を確認すると、館主は眉間に指を当てて悩んでいた。そして結論が出たのか、サンゾックの頼みを聞くということで落ち着いた。



「……(ゴールド)を取り返すことができなかったから、弁償しなくてすんで良かったな」


「そうだね。でも、館主さんがあれだけ悩むってことは、この服って高いのかな?」


「旅館が貸し出している布の服は、良質な布を使っているので、5000(ゴールド)ほどですね」


「そ……そんなに高いのこの服!」



 館主から伝えられた金額が、想像よりも大きくて驚いた。サンゾックのおかげで弁償しなくてすんで良かったと思った。



「「シンくーん、ハクくーん!」」


「ん? この声はユカリとアオかな」



 ユカリとアオが、小走りで俺たちの所に来る。



「2人とも戻って来られて良かったわ」


「シンくんもハクくんも戻って来れたんだね、山賊を追いかけてから何時間も帰ってこないから心配したよ。服もこんなに汚れて……あっ、服が切られてる!」


「ああこれ? ゴブリンに背中を切られちゃってさ」


「じゃあ加護が削れちゃったんだね。いま加護を回復させるから」



 アオは『ヒール』を使って俺の加護を回復させた。



「次はハクくんの番だね」


「……俺は加護が削れるほどのダメージは受けていないから大丈夫だ」


「そう?」



 アオは手に溜めていた魔力を解除して『ヒール』を使うことを止めた。



「さっき山賊を捕まえたって聞こえたけど、ということは、山賊たちに盗まれた物が取り返せたんだね!」



 アオがそう言うと、山賊たちに盗まれていた人たちが詰め寄ってきた。



「そーだそーだ、俺たちの盗まれた物は取り返したのか!?」


「あるなら早く出して!」



 サンゾックは、盗まれた物がまとめられた袋を持ってきて、村人たちの前で袋を開く。


 次々に袋から物が取り出されて、自分の持ち物を見つけたものは袋から離れて、最後に残ったのは、アオとユカリの旅館の部屋の鍵とギルドカードだった。



「あれ、僕の(ゴールド)は?」



 目から光が消えたアオが呟いた。それに対して、サンゾックが答える。



「残念ながら、(ゴールド)は取り返せなかった。僕が捕まえたころには持っていなかったんだ」


「は……ははっ、僕の(ゴールド)……本当になくなっちゃった…………」



 ショックが大きすぎて、アオは涙も出ないようだった。そんなアオの肩にハクが手を置いて慰める。



「……アオ、(ゴールド)がなくなったのはアオだけじゃない、山賊に盗まれた全員のGが無くなった。生活は苦しくなったが、クエストを受けて稼げばいい」


「そうだよアオ、無くなったものはしょうがないし、俺もクエスト頑張るから元気出そう」


「私も一緒にクエスト受けて頑張りますわ」


「みんな……うん、僕アルンに帰ったらクエスト頑張るよ」



 みんながアオを慰めたり励ましたりすることで、アオの元気が回復したようだ。


 山賊から取り戻した盗まれた物を、全員が回収し終わると、新たな馬車が数台現れる。そこに、捕らえた山賊たちを移し替えて、サンゾックはアルンに向かうようだ。



「それじゃあ、僕はそろそろアルンに向かう。またどこかで」



 サンゾックはそう言い残して、オンセーン村からアルン国に向かって出発した。


 それをみんなで見送ったら、村はいつもの風景に戻る。店員たちは自分の店に戻り、それ以外の人たちは観光を楽しみ始めるのだった。


 俺たちも旅館に戻って、休むことにするのだった。

オンセーン村に帰ってきたら、山賊がどうなったかを聞かれて、サンゾックが山賊を捕まえたと伝えた。


サンゾックが旅館の館主に頼んで、俺やハクの来ていた布の服の弁償はなかったことになった。


山賊から盗まれた物を、(ゴールド)以外みんなに返すことができた


サンゾックがオンセーン村からアルン国に出発すると、村はいつもの風景に戻り、俺たちは旅館に戻って休むことにするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ