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22話 魔法鍛錬!⑧(的)

 ざーっという音で目が覚める、外を見ると窓を軽く叩くような雨が降っていた。だんだんと昨日起きたことを思い出す、食堂でみんなに称賛されたあと、疲れが溜まっていてすぐに部屋に戻り眠ってしまったことを思い出した。


 前回雨で体調を崩したからといって、雨の日の鍛錬を休ませてくれることはない。俺は濡れながらみんなと鍛錬をしている、冒険者はどんな環境でもクエスト達成に命をかけているから、雨くらいで体調を崩さない身体も作らないといけない。


 鍛錬も終わりみんな念入りに身体乾かし温める。以前俺が体調を崩したことで、体調管理の意識が高くなったようだ。


 お昼の授業を終えてランド先生と訓練所に向かう。雨は止んでいたが空は暗く、水溜まりがあちこちにできていた。


「今日から魔法を当てる鍛錬をします。奥の的が見えますね? あれに当てることが今の目標です」


 ランド先生が訓練所の奥に指で示しながら言った。今いる位置からだと小さく見えていた。


「あの的の大きさは1メートルで作られています、動く魔物に魔法を当てるなら、動かない的に確実に当てられるようにしないといけません」

「わかりました、やってみます!」


 俺がその場で魔法を使おうとするとランド先生から止められた。


「いきなりこの距離からはシンくんには難しいでしょう、もっと近づいてやってみましょう」


 そうして俺を的から5メートルほどの距離まで近づける。


「ここから始めてみてください」


 俺はそれを聞いて詠唱を始める。


「我が魔力を一つに、球へと型作り、大いなる魔素を集い……不純なる魔を我に……我に適応し糧となる…………サンラ……ルンボ……アイド……ケブン……バイタ」


「『スマッシュ』」


 球体となった魔力を的目掛けて飛ばすことができた。一度魔法が成功しているので簡単とはいかなくても魔法の発動したことに安心する。今まで座って魔法の鍛錬をしていたが、今回は初めて立って魔法を使ったので、ちゃんと発動できるか不安だった。


「……あれ?」


『スマッシュ』は的の距離の半分もいかずに地面に落ちてしまった。


「やっぱりこうなりましたね」

「ランド先生は分かっていたのですか」

「昨日魔法が成功したときも、あまり飛んでいきませんでしたから」


 俺はかなり落ち込んだ。これでは魔物との戦闘で使い物にならない。


「魔法が使えるようになったばかりなのですからまだまだこれからですよ。距離を伸ばすことも意識していればできるようになるでしょう。そのためには『スマッシュ』の発動を無意識でできるくらい鍛錬していきます」

「また完全詠唱の鍛錬ということですか……」


 せっかく魔法が使えるようになっても、また基礎に戻るのかと考えてしまった。


「これから何回も使うので自然にできるようになりますよ。何も思いつかなくなったときに基礎に戻りましょう。さあ、もう一度『スマッシュ』を使ってください、今度は遠くに飛ばす意識を持ってください」


 俺は完全詠唱をして『スマッシュ』を使った。さっきより遠くまで飛んだが、的には届かない。魔法を使った後、足がふらつき膝をついてしまう。短い間に魔法を使ったことが原因だ。少し休んでからもう一度『スマッシュ』を使ったがやっぱり的には届かなかった。俺の魔力が無くなったため今日の魔法鍛錬は終わる。


 次の日も、そのまた次の日も的に向かって『スマッシュ』を使っている。でも的に当たらない。俺の魔力が少なくて1日に何度も使えないことが上達を遅らせていた。


 ――


「シンくんの魔法の鍛錬の調子はどうなのかしら?」

「あまり成果が出てないみたいだよ」

「……根気よくやるしかないな」

「……うぅ……」


 食堂でユカリとアオとハクが話している。俺はみんなの話しを聞いて、両手で顔を隠して呻いていた。


「まだ魔法覚えて数日ですから、そんなに落ち込まなくてもいいと思いますわ」

「そうだよシンくん! 他のことはもっと時間かかってたんだから大丈夫だよ!」

「……愚痴なら聞いてやるよ」

「……そうだね、何もできないことが当たり前だったのに、最近魔法ができるようになってそのこと忘れて調子に乗っていた。ありがとうみんな、俺焦らずじっくりやってみるよ!」



 心に溜まっていたモヤモヤをみんなのおかげで取り除くことができた。次の日から堂々とした態度で魔法鍛錬に臨むことができた。天気は快晴、温度も風も何もかもが気持ち良く感じた。



「シンくん、焦らなくて良いですからね」

「大丈夫です、今日はなんだかいける気がするんです」

「……そうですか、しっかり集中してください」


 俺の顔を見てリラックスできていると感じたランド先生は、それ以上なにか言うことはなかった。


「我が魔力を一つに、球へと型作り、大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる……サンラ・ルンボ・アイド・ケブン・バイタ」


「『スマッシュ』!」



『スマッシュ』は一直線に飛んで行き的に当たった。



「……よっしゃぁ!」

「シンくんよくやりました、これならもっと遠くても当てられそうですね」


 喜びもつかの間、次なる課題を出してくる。もともとはこの訓練所の出入口近くから的を目標にしていた。それができないからこんなに近づいてやっていただけ、俺の挑戦はまだまだ始まったばかりだ。


 今度は的から10メートル離れた所から狙う、さっきの倍の距離だがまだまだ的は大きい。1発目は的からズレて壁に当たってしまう、距離は大丈夫だったが狙いが甘かった。もう1発狙うがまた外れてしまう、今度は的に向かって飛んでいたが飛距離が足りなかった。魔法の狙いが甘くなると飛距離が伸びて、狙いすぎると飛距離が落ちていた。


 今後何に意識を向ければ良いか分かったところで俺の魔力が無くなって魔法鍛錬は終わる。早く色々試してみたくて明日が楽しみだった。

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