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217話 ユカリたちと温泉の旅!⑪(猪)

 ゴブリンに追いかけられて逃げているが、それにより村からはどんどん離れ、山の奥に進まされていた。



「ゴブッ!」


「ねえハク、『スモーク』使って逃げようよ」


「……それは無理だ、周りを見てみろ」


「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」



 周りを見ると、右も左もゴブリンがいて、その奥にも何かが動いているのが見えた。俺たちに姿が見えていないゴブリンだろう。



「……見えているゴブリン以外もいる、こんな状態で『スモーク』を使って煙を出しても、煙の外に出た所で待ち伏せされているだろう」


「じゃあ戦って道を作ろう! 俺は後ろにいるゴブリンを狙うから、ハクは周りを警戒して」



 俺は手に魔力を溜めて、後ろから付いてくるゴブリンに『スマッシュ』を放つ。



「ゴブッ!」



 ゴブリンは急に攻撃されたことで足が止まり、俺たちとの距離が開いた。それにより、左右から追いかけてくるゴブリンたちと後ろから追いかけていたゴブリンの間に、逃げられそうなスペースができた。



「……シン、あそこが空いた。行くぞ!」



 俺とハクが空いたスペースに向かって走り出し、この状況から脱出しようとする。それを見た他のゴブリンたちは、逃げる場所を塞ぐように集まり、俺とハクが逃げ出せるスペースは無くなってしまった。



「ダメだ、これじゃあ通れない!」


「……シン、こっちに逃げるぞ」



 ハクの指差す方へ体を向けて、ゴブリンたちから逃げる。



「……ゴブリンにしては連携が取れている、どこかにドン・ゴブリンがいるのかもしれない。今は逃げて時間を稼ごう」


「そうだね、俺たちが山賊を追っているのはアオやユカリ、村にいた冒険者に旅館の店員さんが知っている。もしかしたら山まで来てくれるかもしれない」


「……薄い賭けだが、今の俺たちにはそれくらいしかできないようだな」



 そうして俺たちはゴブリン追いかけられ、とうとう目の前にもゴブリンが現れて次の逃げる先を探したが、周りを見渡すと、十数体のゴブリンに囲まれてしまい、その場から動くことができなくなってしまった。






「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」



 棍棒を持ったゴブリンはブンブンと振り回し、錆びたナイフを持ったゴブリンは刃を舌で舐め、斧を持ったゴブリンはゆっくりと歩き、他のゴブリンたちの間に入り、俺たちが逃げられる空間を減らしていく。


 俺とハクは背中合わせになり、ゴブリンに後ろから攻撃されないようにする。



「ハク……もう俺たち逃げられないみたいだね」


「……そうみたいだな」


「最初にゴブリンと戦闘した後に、無理やりにでも村の方に逃げれば良かったのかな?」


「……そもそも俺が山賊を追わなければ良かった。俺が追ったことでシンまで巻き込んでしまった」



 ハクはそう言うと顔を伏せて、大きなため息をついた。



「俺がついて行きたかったからそうしたんだ。それに俺がいなかったら、最初に戦ったゴブリン4体の相手はハク1人でしなきゃいけなかったし、そうなっていたら結構厳しいんじゃない?」


「……ふっ、そうだな。シンがいなければあそこでやられていただろう。ありがとう」


「お礼は無事に村に帰ってから聞きたいかな」



 俺はゴブリンから奪った剣を両手で強く握った。


 ハクは顔を上げてゴブリンを真っすぐ見つめる、俺を巻き込んだ後悔は消えているようだ。



「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」



 ゴブリンたちが騒ぎ出すと、俺たちから目を離さないようにして後ろに下がる。そして、ズシンズシンと足音を響かせながら、ドン・ゴブリンが姿を現す。


 しかもドン・ゴブリンの手には、自身の体と同じくらいの長さの棍棒を持っていた。



「ゴガァ!」



 ドン・ゴブリンは棍棒を地面に勢いよく叩きつける。すると、衝撃が地面から足に、そのまま全身に振動が伝わってくる。


 これは俺たちだけじゃなくゴブリンたちも同様で、中には立っていられなくなるゴブリンもいた。


 この振動の中でも唯一動けているのは、この場でドン・ゴブリンだけだった。



(ダメだ、振動で声がまともに出せない!?)



 ドン・ゴブリンは子分のゴブリンたちを投げ飛ばしながら俺らの前に近づいてくる。


 そして、棍棒を両手で持ち振り上げていると、ドン・ゴブリンは何者かに体当たりをされて横に飛ばされた。



「ゴガァァァ!?」



 ドン・ゴブリンは転がりながら、自分に攻撃してきた相手を見る。そこには高さが1(メートル)くらいの大きさの、焦げ茶色の体毛をしたイノシシがいた。



「フゴッ」



 俺は見たことのない魔物が現れて驚いていた。



「何だあのイノシシは!?」


「……あれはワイルドボアだ」


「ワイルドボアか、なんでそんな魔物がドン・ゴブリンと戦っているんだ?」


「……さあ、分からない。だが、今の俺たちには都合が良い」



 ワイルドボアは、前足で地面の感触を確かめていると、ドン・ゴブリンに向かって走り出した。


 いきなり走り出したのに、凄い速さで走り、近くにいたゴブリンたちを突進で吹き飛ばしていく。



「「「ゴ……ブッ……」」」



 吹き飛ばされたゴブリンたちの悲鳴が聞こえ地面に落ちると、その衝撃で武器を手放して苦しそうにしていた。それでも何とか落ちた武器を拾おうと手を伸ばすが、力尽きて手は地面に落ち、ゴブリンは気絶した。


 ドン・ゴブリンは、近くにいるゴブリンを遠ざけて、ワイルドボアと1対1の状況を作る。そして、ワイルドボアの突進に合わせて棍棒を振り下ろそうとする。


 しかし、ワイルドボアは足に力を入れると、先ほどよりも早くなった。


 それにより、ドン・ゴブリンの棍棒がワイルドボアに当たる前に、ドン・ゴブリンのお腹にワイルドボアの突進が当たった。


 ドン・ゴブリンは、吹き飛ばされて木にぶつかった。



「ゴガァァァッッッ!」


「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」



 ゴブリンたちがドン・ゴブリンの周りに集まり、ドン・ゴブリンをワイルドボアから守ろうと武器を構えていた。


 ワイルドボアはそれを見て、体の向きを変えていく。どうやらこれ以上ドン・ゴブリンと戦う気はないようだ。しかし、ワイルドボアと俺たちの目が合うと、前足で地面の感触を確かめ始めた。



「まさか……」


「……来るぞ!」



 ワイルドボアは俺たちに向かって突進してくるのだった。

ゴブリンに追われていたので、何とか逃げ道を作ってみたが、ゴブリンたちの連携が取れていて逃げ道を塞がれてしまった。


別の場所に逃げたが、とうとう追い詰められてしまった。


そこにドン・ゴブリンが現れ、棍棒で地面を勢いよく叩いて、その振動で俺たちを動けなくさせた。


そこに、ワイルドボアが現れてドン・ゴブリンと戦っていく。


そして、ドン・ゴブリンと戦ったワイルドボアは、次の標的に俺たちを選ぶのだった。



魔物の紹介


・ワイルドボア


高さが1(メートル)くらいある大きさの、焦げ茶色の体毛をしたイノシシの魔物。


突進攻撃が得意で、なかなかの速さと力で、吹き飛ばしていく。また、突進中に加速もしてくるので、カウンターを合わせにくい。

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