表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/248

215話 ユカリたちと温泉の旅!⑨(水路)

 俺とハクは山を目指してオンセーン村の南側に移動する。山から流れてくる川に水路を作っていて、その水路がオンセーン村の中にまで入ってきていた。


 水路には水車が設置されていて、その隣には水車小屋がある。


 水路はそのまま旅館のある方向に道が作られていて、行き着く先を目で追うと、温泉のある場所に向かっているようだった。



「旅館の裏側って感じだね」


「……ああ、そして山賊はここで争ったみたいだ、この水車小屋の壁を見てみろ」



 水車小屋の壁には叩かれて壊された穴が開いていた。



「……旅館の裏側とはいえ、この穴を放置するとは考えにくい」


「そうだね、じゃあ誰かがここで襲われたってことか……ん? 今声が聞こえたような……」



 耳を澄まして音がどこから聞こえてきたか探る。水の流れる音の中に、かすかだが人の声が混じっていた。


 声が大きく聞こえる所に向かって歩くと、水車小屋の中に旅館の店員が倒れている棚の下敷きになっていた。



「うぅ……」


「大丈夫ですか!? ハク、棚を持ち上げるよ」


「……ああ」



 呻き声を上げる店員に俺とハクは駆け寄って棚を持ち上げて隙間を作り、その間に店員は這うように進み、棚から抜け出した。


 俺たちは棚を立てて壁際に持っていく。



「ゴホッゴホッ……助かりました、ありがとうございます」


「いえいえ、それよりも襲ってきたのは山賊ですよね?」


「はい、急に山賊たちが現れて襲われて水車小屋に隠れたのですが、私が隠れるところを見ていたのか、壁に穴を開けて脅してきました。その衝撃で棚が倒れてきて下敷きになってしまって身動きが取れなくなってしまい、もうダメかと思いましたが、山賊たちは私を襲わずに水路に入って逃げて行きました」


「……山賊は俺たちが来たから逃げたってところだろうな」


「でもなんでわざわざ水路なんかに入るの?」



 水路を使わなくても、壁を登ったり壊したりしながら進めば良いのではないかと疑問に思った。しかし、店員は首を横に振る。



「オンセーン村の南側には壁があり、壁は山に住む魔物対策で作られているので、山賊たちが登るにしても壊すにしても時間がかかるでしょう。その点、水路は村の外にある川から水が流れていますので、水路を通ればこの先にある壁を越えるよりも簡単に村の外に行けます」


「そういうことか」


「……追われている状況なら逃げるのに簡単な方を選ぶのは当然だな」


「じゃあ俺らも水路に入って山賊たちを追わないと」


「待ってください!」



 俺が水路に向かおうとすると店員に止められる。



「水路に入らなくても村の外の出る方法があります、付いてきてください」



 店員は走り出すと、後ろを振り返って俺たちを呼ぶ。俺とハクは、店員を信じて付いて行くのだった。


 店員は時々後ろを振り返り、俺たちが付いてきているか確認しながら目的の場所に向かって行く。進むにつれて、オンセーン村の壁が見えてきて、3(メートル)くらいの高さまである石の壁のようで硬そうだ。


 ジャンプすればいけそうな気がするが、みんなからGを盗んで重くなっている山賊には厳しい高さだろう。そうやって走りながら壁を見ていたら店員が立ち止まった。



「着きました、ここです」



 壁の近くには屋根の付いた井戸があった。だが、井戸の中には水はなく、あるのは梯子のみで、底は暗くて見えない。



「ここの井戸は水路の水門を管理するためにあります。そして、ここも村の外に繋がる場所があるのです」



 店員は、屋根に付いているランタンを外して明かりを点けて、ランタンを腕に引っ掛けると梯子を降りる。


 俺たちも店員の後に続いて、井戸の中に入るのだった。






 ぴちゃ……ぴちゃっと水滴が垂れる音と、水の流れる音が井戸の中に響く。その音の中には、水の中で何かが動いているような音も混ざっていた。



「山賊が水路を通っているようですね、気づかれないように音をなるべく立てないようにしましょう」



 店員は小声で俺たちにそう伝える。山賊たちの音が聞こえるということは、俺たちの音も聞こえてしまうと考えていいだろう。


 俺たちは慎重に歩いて、村の外に通じる場所まで進んだ。






 店員がランタンを地面に置き、壁を触り始める。そして壁を押すと、一部だけ壁が押し出される。


 そこに店員が指を引っ掛けて壁を引くと、壁が動き出した。



「ふぅ……ここを進めば外に出られます」



 壁に穴が開き、その向こうには梯子が見える。



「私はこの壁を元の位置に戻さなきゃいけないのでこれ以上はいけません」


「分かりました、ここまで案内してくれてありがとうございます! 行くよハク」



 俺が穴に入ろうとするとハクが止めた。



「……待て、俺から先に行く。すまないが、外に出られることを確認してからシンと行く。俺が良いと言うまでシンはそこで待っていてくれ」



 ハクが1人で進み梯子を登り、上にある蓋のような物を外すと日の光が入ってきて明るくなった。



「シン、ここはオンセーン村の南側のようだ、行くぞ」


「分かった、じゃあ店員さん、またどこかで」


「はい、お気を付けて」



 俺とハクが穴の中に同時に入ると、店員は壁を塞ぎ、こちらから壁を押してもビクともしなくなった。


 梯子を登り外に出ると、水路と水路じゃない川があった。そして、水路側からは、ちょうど山賊たちが出てくる。



「なっ! なんでこんなところに!? ここで戦うか?」



 山賊の1人が慌てたように叫ぶ。しかし、仲間の山賊に背中を叩かれて、叩いてきた相手の方を向く。



「あいつらは武器を持っていないが、ここで戦えばオンセーン村の兵士や他の冒険者が来るかもしれない。今は山まで逃げることだけ考えろ」


「そうだな、逃げるぞ」



 山賊たちは水路から出てくると、山に向かって全力で走り出す。



「追うよ、ハク!」


「……ああ、盗まれた物を取り返す」



 こうして俺たちは山賊を再び追いかけるのだった。

オンセーン村の南側に行くと、山の川に水路が作られていて村の中に流れていた。


水路には水車があり、隣には水車小屋がある。


水車小屋の壁には穴が開けられていて、その水車小屋には店員が棚の下敷きになっていた。


その店員を助けると、山賊は水路から村の外に出て行ったと聞く。南側には壁があり、逃げる山賊には登ることや壊すことは時間がかかるようで、山賊は水路を使ったのだという。


俺たちも水路から行こうとしたが、店員に外に出られる場所に案内される。その途中で3(メートル)の壁を見るのだった。そして井戸まで案内されてその井戸の中に入っていく。


井戸は水門を管理していて、その中にある壁の一部は外すことができるようで、先に進むとオンセーン村の南側の外に出ることができた。


そして、水路から山賊たちが出てくる。


戦闘になるかと思ったが、武器を持っていない俺らを見て、山まで入ってこられないと判断して、山まで逃げるようだ。


俺とハクは山賊を再び追いかけるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ