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214話 ユカリたちと温泉の旅!⑧(逃走)

 俺とハクが動くと、アオもユカリも我に返り走り出し、4人で逃げる山賊を追いかける。



「僕の(ゴールド)返してー!」



 叫ぶアオに山賊たちはチラっと振り返るが、すぐに前を向いて走る速度を上げた。


 山賊たちは村の人を突き飛ばし、店の商品を倒して俺たちの通れる道を減らしながら、村の奥へと逃げる。


 村人や店員の悲鳴で村中がパニックになっていた。そんな時、1人の男が山賊たちの逃げる先で待ち構えていた。



「ここは通さんぞ!」



 山賊たちに向かってそう言い放ったのは、旅館の布の服を着た冒険者だった。ただ、武器を持っていないみたいで素手で挑むみたいだ。


 冒険者は手に火の球を出して、これ以上近づくのなら攻撃するという雰囲気を出して山賊を待ち構える。


 だが、山賊たちはそれに怯まずに冒険者に突っ込んでいった。



「向かってくるなら仕方ない! 『ファイア』」



 冒険者は村に被害が出ないように山賊の足元に『ファイア』を放つが、山賊は飛んで避けると棍棒を取り出し冒険者を叩く。


 冒険者は腕を盾にして身を守る。



「ぐっ……ゴブリンよりも痛いじゃないか! ぐはっ!」



 正面から来る山賊の攻撃に気を取られていた冒険者は、横から来る他の山賊の攻撃を避けることができずに、背中と横腹を棍棒で叩かれる。


 痛みで腕のガードが緩んだところで、冒険者の正面にいた山賊が、冒険者の顔に向かって棍棒を薙ぎ払った。


 冒険者は強烈な痛みで体勢が崩れると、山賊の1人に蹴られる。冒険者は店の方まで飛ばされて商品が辺りに散乱する。



「ま……待てっ……」



 冒険者は店のテーブルに手を付いて支えにして立ち上がり、山賊の方まで走る。


 山賊は冒険者と距離が離れたことで、再び逃げるようになった。


 ただ、冒険者が山賊たちと争ってくれたおかげで、俺たちも山賊に近づくことができた。俺たちはその冒険者と一緒に山賊を追いかけ始める。


 この騒ぎを聞きつけて、旅館の入り口から冒険者たちが3人出てきた。その冒険者たちは旅館の布の服ではなく、冒険者として服装をしていて、武器もしっかり装備していた。



「山賊どもだな! ここで捕まえてやる」


「俺は右の奴をやる、お前は左の奴を頼む」


「いいぜ!」



 冒険者たちは武器を構えて山賊たちに突っ込んで行った。


 山賊たちは互いに仲間と目を合わせてアイコンタクトを取ると、冒険者たちの方に何かを投げ、山賊たちは自分の目を手で隠すのだった。


 冒険者たちは足を止めて、投げられた物を注意深く見ると、白い球だった。何が来るか分からないので、冒険者たちは対応できるように身構えている。


 山賊と冒険者の間に白い球が来ると、白い球は強力な光を放った。



「「「ぐわぁぁぁ!!!」」」



 目の前にいた冒険者たちは白い球を注意深く見ていたため、両目を押さえて地面に倒れ込む。


 冒険者たちよりも白い球から離れた位置にいた俺たちも、眩しさに目をやられて、視界が白一色となった。


 しばらくして視界が戻り始めて周りが見えるようになると、村人たちも俺たちと同じく目が見えなくなっていたようで、目を押さえていた。


 山賊たちはその間に遠くに移動していて、道を曲がっていくところを見たのが最後だった。






 アオはいなくなった山賊を見て膝から崩れ落ち泣いていた。



「僕の……僕の(ゴールド)が…………」


「アオくんの気持ちが痛いほどわかりますわ、私もここで買い物ができなくなると分かって辛いですわ……」



 ユカリは泣いているアオの背中をさすって慰めていた。



(ゴールド)を盗られたのはキツイな、しばらくはギルドカードに入っているGP(ギルドポイント)で生活しなきゃいけないのか」


「……そうだな」



 俺の言葉にハクはそう返しながら自分の服の隙間に手を入れる。そして、ごそごそと何かを探しているようだが見つからず、ハクの表情に焦りが見え始める。



「どうしたのハク?」


「……まずいことになった。(ゴールド)の入った袋だけじゃなく、ギルドカードと旅館の部屋の鍵がない」


「え!?」



 俺は急いで自分の事も調べる。だが、体中のどこを探しても見つからなかった。



「盗られたのは(ゴールド)だけじゃなかったのか……」


「……こんな所で止まっている場合じゃないな、山賊の言った方向に追いかけるぞ、誰か山賊の行きそうな場所を知っている人はいないか」



 ハクが村人にも聞こえるように聞くと、答えてくれたのは、山賊に棍棒で叩かれていた冒険者だった。



「山にいくつか隠れ家があるらしい。だから多分山に向かったはずだ。まぁ隠れ家がどこにあるかまでは分からないから参考にはならないだろうが……」


「……山ということさえ分かるだけでも十分だ」



 ハクはそれを聞くと、山に向かおうとしていた。



「待ってよハク! 武器も持ってない俺たちが入って魔物にでも出会ったら終わりだよ」


「……確かにそうだが、このままじゃ待っていたって俺たちは(ゴールド)もギルドカードもないんだから生活できないぞ。それに旅館の部屋の鍵の弁償だってしなきゃいけない。時間が経つほど、山賊の場所が分からなくなる」



 ハクの言う通り、ここで山賊たちから盗られた物を取り返さないと、俺たちの生活は大変なことになる。危険を承知で、いるかどうかも分からない山の中に探しに行くべきだろうか。


 俺が考えていると、ハクは自分1人だけでも行く気のようで、俺を置いて歩き始める。



「分かったよ、俺も行くよ! ハク1人だけを危険な目に合わせられない」


「……シンなら付いてきてくれると信じていた。行くぞ」


「うん!」



 俺はハクに返事をした後にアオとユカリの方を向いた。



「アオとユカリはここに残って、山賊たちがどっちの方向に行ったか他の人たちにも伝えといて」


「分かりましたわ、シンくんハクくん、危なくなったら逃げてくださいですわ」



 俺はそれを聞いて頷いた後、ハクと一緒に山に向かって走り出すのだった。

逃げる山賊の前に他に冒険者が立ちふさがるが、山賊たちの連携攻撃により、あっさりとやられてしまう。


続いて旅館から出てきた3人の冒険者が山賊たちに挑むが、山賊が投げた白い球が光り出して目が眩んで、視界が白一色となっている間に逃げられてしまい、最後に見たのは道を曲がるところだった。


盗られたのは(ゴールド)だけじゃなく、ギルドカードや旅館の部屋の鍵も盗られていたと知る。


ハクは盗られた物を取り戻そうと山賊の行きそうな場所を村人に聞くと、場所を答えてくれたのは山賊にやられた冒険者で、その冒険者が言うには山に隠れ家があるらしく、山に向かったはずとのことだ。


俺とハクは山に向かい、アオとユカリは村に残すのだった。

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