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211話 ユカリたちと温泉の旅!⑤(珈琲牛乳)

 山賊のボスであるコブンが見えなくなると、男湯にいた他の客は、追い出してくれたサンゾックに拍手をしていた。


 そして、サンゾックの周りに集まりだしてお礼を伝えていた。



「ありがとう、あんたのおかげで助かったよ!」


「ホントホント、ありがとな!」


「何かお礼させてください!」


「お礼なんてそんな、当然のことをしただけさ」


「おおお! 何と素晴らしい方なんだ。あなたは神様なのでしょうか」



 客が膝をついてサンゾックを崇め始めた。周りの客たちそれを見て驚いているようだ。


 サンゾックは、膝をついた客と同じ目線になるために屈んで、客の手を両手で握ると優しく微笑んだ。



「僕は神様なんかじゃない、人並みに欲だってある」


「でも、お礼はいらないと申したではないですか……」


「うーん、じゃあこうしよう。僕は用心棒をやっているんだ、もしあなたに護衛が必要になったら僕を雇ってほしい」


「そんなことで良いのですか!?」


「はい」



 サンゾックがそう言うと、周りにいた客たちも感動したのか、涙を流す者まで現れた。



「あんた良い人だよ。ぜひその人の用心棒が終わったら、俺のところでも用心棒をやってくれ!」


「「「俺のところも頼む!」」」


「あはは……困ったな。一気に仕事が増えちゃったよ」



 サンゾックは困ったと言いつつも、顔は嬉しそうにしていた。


 俺たちは温泉に浸かってそれを眺めているのだった。



「サンゾックに助けはいらなかったみたいだね。って、アオが泣いてる!?」


「サンゾックさん、良い人すぎるよぉ」



 アオもサンゾックの言葉に感動して、白い布で頬に伝う涙を拭いていくのだった。



「どうしようハク、アオが泣き止まないよ」


「……こればかりは俺たちでどうにかできる問題じゃない、そのうち泣き止むだろう。それよりも、シンやアオの顔が赤くなってきている。そろそろ湯から出ないとのぼせるぞ」



 ハクは立ち上がると、泣いているアオを立たせて湯から出て、影ができているところでアオを休ませる。



「えっ、まだ1種類しか温泉に浸かっていないのに」



 俺は不満を漏らしながらも、ハクたちに続いて湯から出るのだった。






 ハクがアオを寝かせて、楽な体勢にしてあげると、アオは呼吸が少し荒くなり、体中から汗が出始めていた。



「……感情が昂って体調が悪くなっているようだ。何か飲める物を買ってくるから、シンはここでアオを見ていてくれ」


「分かった」



 ハクは脱衣所に向かい、服を着ると外に出ていくのであった。



「うぅ……気持ち悪い……」


「アオ、今ハクが飲み物持ってくるから頑張って」


「具合が悪くなったのか?」



 サンゾックが横になっているアオを心配そうに見る。



「汗が出ているね、でも症状は軽そうだ。ちょっと布を借りるよ」



 サンゾックはアオの布を借りると、シャワーでぬるま湯を出して、アオの布を濡らしていく。濡らした布を絞り余計な水気を取ると、アオの頭に布を乗せて、アオの火照った体を冷ましていく。



「これで少し休めば良くなるさ」



 サンゾックのおかげか、アオの呼吸は大人しくなり、汗の出る量も減っていた。そこに飲み物を買ってきたハクが来て、アオを起き上らせて、ビンの中に茶色い液体が入った飲み物を渡す。



「……それはこの旅館で売られているコーヒーミルクという飲み物みたいだ。他の客が美味そうに飲んでいたから、味は大丈夫だろう」



 アオは恐る恐るビンの蓋を開けて一口飲んだ。そして、勢いよく飲み、空になるまでビンを口から離さずに飲み干した。



「ぷはー! なにこれ美味しい!」



 アオは目を輝かせて、空になったビンを覗き込み、底に残ったコーヒーミルクを一滴でも多く飲もうと、ビンを傾ける。



「……元気になったようだな」


「うん、もう大丈夫!」



 アオの体調が良くなったことで、元気に立ち上がって手でピースサインをした。



「サンゾックさんも、僕のために色々やってくれてありがとうございます」


「当然のことをしただけさ。じゃあ、僕はそろそろ温泉から上がるよ」


「……もう行くのか?」


「僕もだいぶ長風呂をしたからね。用心棒の仕事をもらえたし、それに行くのさ。またどこかで会おう」



 サンゾックはそう言うと、脱衣所に向かって出て行ってしまった。



「……アオはもう大丈夫そうだし、温泉の続きでも始めよう。ほら、これはシンの分のコーヒーミルクだ」



 ハクが俺にコーヒーミルクを渡してくれた、ハクも同じものを持っていて、アオの分と合わせると、合計3本買ってきていたようだ。



「ありがとう。でもこれここで飲んで良いのかな? アオの場合は体調が悪かったから仕方ないにしても、俺たちは別に体調悪くないし」


「……それは店員に聞いたんだが、温泉内はダメだが、脱衣所でなら着替えなくても飲んで良いみたいだ」


「そうなんだ。でも、ここから出ないと売ってないんでしょ? それなのにどうやって脱衣所で飲むのさ」


「……なんでも、脱衣所に入る前に買って、鍵付きの棚の中に入れて置けばいいと、店員が言っていた。ビンを捨てる箱も、脱衣所の隅の方に置いてあった。さあ、シンもそれを飲んで体の火照りを冷ませ」



 ハクはそう言って、自分のコーヒーミルクを飲み始めた。そしてあまりの美味しさに驚いているようだった。俺もアオやハクの反応を見て飲みたくなり、コーヒーミルクを飲むと、めちゃくちゃ美味しくて幸せになった。


 その後俺たちは、他の温泉にも入っていく。


 薬草を袋に詰めて、温泉に薬草のエキスを染み込ませた薬草風呂や、柑橘系の果物のエキスを染み込ませた柑橘風呂や、魔石の成分が染み込まれた魔石風呂などたくさん回り、いっぱい温泉を楽しんでから湯から上がるのであった。






 ■






 温泉から出て青い布に着替えると、俺たちはコーヒーミルクを飲んでいた。



「「ぷはー! コーヒーミルクはやっぱり美味しい!」」



 俺とアオが同じ感想を言うと、ハクは両手に2本のコーヒーミルクを持ちながら、こちらを見ていた。



「ハクもそれの飲みなよ」


「僕とシンくんのおごりだよ」


「……そもそもシンとアオの分を先に出したのは俺だからな?」


「そういえばそうだったね」


「……おい!」



 ハクは起こった態度を見せるが、コーヒーミルクを1本飲んで機嫌を直す。



「それにしても、なんか体の調子が良くなった気がする」



 俺が体を激しく動かしたり、魔力を使ってみたりすると、動きが良いのでそんなことを言った。すると、ハクが温泉の効能について話してくれる。



「……薬草風呂は疲れた体を癒し、魔石風呂は魔力を回復する効能があるみたいだな」


「へぇ、そんな効能があったのか、だからこんなに調子が良いのか。この後アオとハクはどうする?」



 俺はアオとハクのこの後の行動を聞く。



「僕は自分の部屋で横になってるよ。いっぱい温泉に浸かって眠くなっちゃった」


「……俺も部屋で休もうと思う。シンはどうするんだ?」


「俺は着替えた後、訓練所に行って鍛錬するつもりだよ」


「……そうか。じゃあそろそろ行くか」



 俺たちは自分の部屋に移動するのであった。

サンゾックが山賊のボスであるコブンを追い出したことで、他の客から拍手されていた。そして、用心棒の仕事をしていると伝えて、仕事をもらっていた。


アオが感動して感情が昂ったことでのぼせたようで、影のある場所で寝て休んでいた。サンゾックがぬるま湯で濡らした白い布を、アオの頭に乗せて体の火照りを冷めさせる。


アオはハクが買ってきたコーヒーミルクを飲んで体調が良くなった。


アオの体調が良くなったので、薬草風呂や柑橘風呂や魔石風呂を楽しんで俺たちは温泉から出る。


その後は、アオとハクが部屋で休み、俺は着替えてから訓練所で鍛錬をする予定になったので、みんなで移動するのであった。

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