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210話 ユカリたちと温泉の旅!④(山賊)

 床は石畳になっていて、濡れた所が滑りやすくなっていた。俺が転びそうになるとアオが倒れないように支えてくれて、アオが転びそうになると俺が倒れないように支えた。


 そうやって進んでいくと温泉の目の前まで来る。


 温泉の湯には多くの人がいて、みんな気持ちよさそうに温泉に浸かっていた。


 俺とアオが温泉に近づくと、浸かっていた人たちが横に動いて、俺らが通ることのできる場所を開けてくれる。俺とアオは軽く頭を下げてお礼を伝えると湯の中に足を入れる。



「あったかい」


「良い湯だね。あっ、奥の方にハクくんがいるよ」



 アオが肩まで浸かっているハクを見つけたので、ハクの隣まで歩いて向かい、ハクと同じように肩まで温泉に浸かる。


 3人とも白い布を頭に乗せて体を温める。ぼーっと周りを眺めると、俺たちのいる奥側には他の客は少なく、手前側の方に集まっていたので、ここは足を延ばせるほどスペースがあった。


 背中を壁に付けて数十秒ほど温泉の暖かさと客たちの雑談を楽しいでいると、隣にいるアオから話しかけられる。



「そういえばシンくん、僕たちが昨日までやっていた拠点設営団のクエストで、洞窟がダンジョンに変えられちゃったこと覚えているよね?」


「うん覚えているよ。魔王幹部のベルゼが何かやったんでしょ」


「そうそう! ドラコニスさんから聞いたんだけど、どうやらダンジョン化したのはあの箱が作り出したものの可能性が高いみたいなんだ」


「ああ、そう考えるのが自然だろうね」



 ここで今まで黙って聞いていたハクも話に参加してくる。



「……だが、そうなると、最悪のケースを想定しないといけないみたいだ」


「最悪のケース?」



 俺は口に溜まった唾を飲み込んで、ハクの話の続きを聞く。



「……以前俺たちは魔王軍が街に持ってきた箱の中に入ったことがあっただろう? あれを更に調べていくと、とても複雑な仕組みで作られていたそうだ」


「あれだけ凄いことやっていれば、そりゃ複雑だよ」


「……複雑だけなら魔道具として片づけられるんだが、どうやらあの箱は、何者かによって最近作られた物と分かったみたいだ」


「そんなこと分かるものなの?」


「使われている仕組みが、数年前に発見されたものだったそうだ。これは魔法薬研究長のサイエンと副研究長のティストが確認したから間違いない。そしてその仕組みを作りだしたのが、マッドという男だそうだ」


「マッド……どこかで聞いたことがあるような名前だけど思い出せない」



 俺は一生懸命に思い出そうとするが、思い出せないでいた。



「……元魔法薬研究長をしていたようで、いつの間にかアルンからいなくなっていたようだ」


「つまり、最悪のケースってのは……」


「……そのマッドとかいうやつが、魔王軍の味方をしているということだ」



 俺は驚いて、頭に乗っていた白い布が、石畳の上に落ちた。人間が魔王軍の味方をするなんてありえないと思っていたからだ。



「……シン、まだそうと決まったわけじゃない。決まったわけじゃないが……」


「その可能性がかなり高いってことでしょ」


「……そうだ」


「でもハクくん、わざわざ魔王軍側に付くメリットって何があるの? そんなことしても良いことないように思えるけど……」



 アオがそんなことを言っていると、俺たちの話を聞いていた客の1人が話しかけてくる。



「人間の中には、他人を傷付けることに喜びを感じる者もいるんですよ。ああ、いきなり話しかけてごめんなさい。話が聞こえてしまったので」


「あの、あなたは?」



 細身だけどしっかりと筋肉はついている、ワンレングスの髪形をした茶髪の男に俺は聞いた。



「僕はサンゾック、この周辺で用心棒みたいなことをやっている者さ」


「俺はシン」


「僕はアオです」


「……ハクだ」



 俺たちもサンゾックに名前を教えた。



「よろしく、シン、アオ、ハク。僕のことはサンゾックと呼んで良いからね。話の続きだけど、人間が全員善人というわけじゃないんだ。中には魔王軍が動いたことで、それを利用して悪さをしようとする者もいる。あそこを見てくれ」



 サンゾックが目を向ける先には、俺にぶつかってきた大男がいた。



「邪魔だ!」


「うわぁ!」



 大男は湯に浸かっている客を足で突き飛ばしてスペースを作り、温泉に飛び込んで入った。



「おい、何見てんだ。俺様は一人で入りたいんだ。邪魔だから出ていけ」


「「「…………」」」



 客たちは大男を白い目を向けてみていたが、それに対して大男はキレる。



「邪魔だって言ってるのが聞こえねぇのか!!!」


「うわぁぁぁ!!!」



 大男は水を握りしめると、それを客の顔に向かって投げた。客の頭は跳ね上がり、痛みで顔を押さえた。加護のおかげですぐに痛みは引いたみたいだが、その客は涙目になりながら温泉を出て脱衣所に走って逃げていった。



「お前らも同じ目に合いたいか」



 大男が自分を見る他の客に睨み付けると、客たちは大男から離れて、別の温泉に浸かり始めるのだった。


 アオはその現場を目撃して怒っていた。


「何なんですかあの人は!」


「あいつはオンセーン村の近くにある山に住む山賊のボスで、コブンという名の者だ。山を通る商人や冒険者を襲い身包みを剥がしている悪い奴だ。少し前までは身包みを剥いだら山の入り口に商人や冒険者を捨てていたんだが、最近ではそれをやっていないようなんだ」


「ということは……」


「山賊たちは身包みを剥いだ後、山に放置して魔物に襲わせて遊んでいるんだ。魔物から逃げ切れた冒険者や商人からそのような話を聞いている」


「そんな酷いことを……」



 俺は言葉を失い、アオは口元を押さえている。



「でも大丈夫、僕があいつを改心させる」



 サンゾックは立ち上がり、大男のコブンの所へ向かった。俺はサンゾックが立ち上がった時に一瞬、両手の平に太陽のマークが刻まれているのが見えたが、サンゾックは握り拳を作ったので、見えなくなった。



(今のマークはいったい……)



 俺がそんなことを考えていると、アオが俺の肩を揺らす。



「ねえシンくん! サンゾックさん1人で行っちゃったけど大丈夫かな?」


「サンゾックが危なくなったら助けに行こう」



 サンゾックはどんどんコブンに近づいて行き、コブンの真後ろまで来ていた。それに気が付いたコブンが後ろを振り向き、サンゾックと目が合う。



「お、おやぶッ、ぐほっ!」



 サンゾックはコブンの頬を鷲掴みにして口を覆い喋れなくする。そして、そのまま温泉から引きずり出して腕を掴み、一本背負いで床に叩きつけた。



「がはっ!!!」



 サンゾックは倒れたコブンの首を掴み、耳元で何かを伝えているようだ。


 その後コブンは、サンゾックを突き飛ばし、息を荒くしながら答える。



「はぁはぁ……次あったらタダじゃおかねぇ! 覚えてやがれ!」



 コブンは脱衣所に向かって逃げていくのであった。

俺とアオとハクの3人が湯に浸かりながら拠点設営団のクエストで、ダンジョン化してしまった洞窟の話をする。


その時魔王幹部のベルゼが持っていた黒い邪箱の話になり、以前アルンに持ち込まれた邪箱のにはある仕組みがあった。


その仕組みは数年前に発見されたもので、この仕組みを作りだしたのは、元魔法薬研究長のマッドなのだ。


最悪のケースとして、魔王軍に味方している人間がいる可能性が高いみたいだ。


その話を聞いて近寄ってきたのはサンゾックと名乗る男だ。


そして、俺にぶつかって突き飛ばしてきた大男は、オンセーン村近くにある山に住む山賊のボスで、コブンという名だそうだ。


サンゾックは、悪さをするコブンに近づいていく。その時に、サンゾックの両手の平に太陽のマークが見えた。


コブンはサンゾックに一方的にやられて、逃げるように脱衣所に向かった。



新キャラ紹介


・サンゾック


オンセーン村で用心棒をしている。細身だけどしっかりと筋肉はついていて、ワンレングスの髪形をした茶髪の男。両手の平には太陽のマークがあり、これにより、光属性の威力や安定性を増すことができる。



・コブン


オンセーン村の山で山賊のボスをやっている大男。

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