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207話 ユカリたちと温泉の旅!①(出発)

 寝ていた俺は寝返りをすると、大きなあくびをしてから目を開く。顔を動かして窓の外を見ると空は暗かった。



「夜になっている……帰ってきたらすぐに寝ちゃったもんなぁ。明るくなるまでもう一回寝よう」



 俺は布団に潜りもう一度寝ようとすると、ぐぅぅっとお腹の音が鳴る。ここで朝に食事をしただけで何も食べていないことを思い出した。我慢して寝ようとしたが、お腹は鳴り続けて眠ることができない。



「このままじゃ眠れない! ご飯でも食べてくるかぁ」



 俺は布団から起き上がり、寝汗で湿った服を着替えてから外に出た。


 外に出ると、俺以外の誰も出歩いていなかった。



「夜とはいえ、こんなに人がいなくなるものなのか?」



 不思議に思いながらも、大きい方の食堂に向かって歩いていく。食堂には明かりがついていて、営業していることが分かって一安心だ。


 中に入ると、あまり客はいないようで、テーブル席に一人で座って食事を楽しんでいたり、本を読んでくつろいでいたり、テーブルに突っ伏して寝ている人がいるくらいだった。


 そうして食堂の入り口で立ち止まっていると、女性店員に声をかけられた。



「いらっしゃいませ、一名様ですか?」


「はい、一人です」


「あれ? シンさんじゃないですか一人なんて珍しいですね」



 俺に声をかけたのは、以前『ウルフ討伐』でサポーターとしてクエストに参加してくれたキャリーだった。



「そうだね、ここに来る時は誰かと一緒の事が多いもんね」


「昨日のお昼に来てくれたのはリクさんたちが来てくれましたよ。そこにシンさんがいらっしゃらなかったので事情を聞いてみると、アオさんからは『呼んだけど返事がなかった』と聞いていました。来てくれて嬉しいです」


「あはは、クエストから帰ってきてすぐに寝ちゃったからね、気が付いたらこんな時間になっちゃったよ。起きたらお腹が空いて眠れないから食べに来たんだ」


「ということは、ほぼ一日食べていないってことですね!」


「ん、一日? どういうこと?」



 どうも俺の話すことと、キャリーの話すことに食い違いがあるので聞いてみることにした。すると、どうやら今の時間帯が夜だと思っていたら、もう少ししたら空が明るくなって朝になると言うのだ。


 俺が寝ている間に日付が変わっていたようだ。お腹が空くのも、ここに来る道中や店内の雰囲気が違うのも納得がいった。



「この時間帯はほとんどお客様が来ないので、空いているテーブル席へどうぞ」



 俺は1階の奥にあるテーブル席を選んで座った。そして、メニューを開いて何を食べようか悩んでいた。



「報酬金もいっぱいもらったし、ここは贅沢してみようかな」



 俺はテーブルに置いてある鈴を鳴らして店員のキャリーを呼ぶ。



「はい、ご注文お決まりでしょうか?」


「ファイアーバードのレッド唐揚げとベーコンパンセット、ミズクラゲのコリコリミルクアイスで」


「かしこまりました! では失礼します」



 キャリーは俺の注文したものを伝票に書くと、キッチンの方に向かって行った。


 キッチンの方では、じゅわぁっと何かが揚げられている音が聞こえてくる。俺の注文した唐揚げだろう。その音を聞きながら料理を待っていると、キャリーが荷台を押して料理を運んでくる。



「お待たせしました!」



 辛そうで美味しそうな香りがする拳より一回り小さい唐揚げが5個乗った皿がテーブルに置かれ、手の平に収まりそうな大きさのミルクアイスは所々にミズクラゲが小さく四角に切られて入っていて、ベーコンパンセットはベーコンパンの他に野菜スープと飲み物のミルクが付いている。


 全部の料理が置き終わると、キャリーは伝票をテーブルに置いた。



「ごゆっくりおくつろぎください」



 そう言ってキャリーは荷台を押して立ち去った。



「いただきます!」



 俺は湯気の立つ野菜スープを一口飲んで体を温める。そのあと、フォークを持って唐揚げに刺し、1個の唐揚げを半分だけ齧る。


 口に入れた時はあまり辛さを感じなかったが、咀嚼していくとどんどん辛さが伝わって舌をビリビリさせる。残った半分も口の中に入れ、1個の唐揚げを食べている間に体が熱くなり、毛穴が開いていく感覚が心地良かった。


 口の中に残った辛さは、ミルクを飲んで中和していく。とても美味しい。


 続いて食べるのはアイスだ。小さいスプーンを使ってアイスをすくう。しっとりと柔らかくすくうことができるが、スプーンを傾けても零れない固さもあった。


 口に入れてみると、アイスはゆっくりと溶けて、ミルクの濃厚な味が口の中に広がっていく。そして四角く切られたミズクラゲが舌の上で転がる触感が楽しい。ミズクラゲのおかげで、アイスなのに舐めるのではなく噛んで楽しませてくれるデザートになっている。



「めちゃくちゃ甘くて美味しい」



 自然と口角が上がっていく。


 そして再び唐揚げを齧って、体を温める。今度はベーコンパンを食べ、辛さを中和していく。唐揚げの旨みでパンをどんどん口へ運んでいく。気が付くと、ベーコンパンは食べ終わっていた。


 俺は追加で単品のパンを注文して、そのパンに唐揚げを挟んで食べるのだった。






「ごちそうさまでした」



 たくさんあったが、全て食べきることができ満足である。


 鈴を鳴らしてキャリーを呼び、お会計をする。


 ギルドカードをキャリーに渡すと、キャリーは注文した分のGP(ギルドポイント)を抜いてギルドカードを俺に返した。



「いつもの3倍くらいGP(ギルドポイント)が減っている。あれだけ注文すればこうなるか。キャリー、美味しかったよ」


「ありがとうございます、キッチンにいる料理人も喜びますね!」



 キッチンの方に目をやると、料理人がニヤッと笑みを浮かべていた。俺はそれを見てから席を立つ。



「またのご利用お待ちしております!」



 キャリーにそう言われながら、明るくなり始める外に出るのであった。






 ■






 宿まで帰ってくると、アオとハクとユカリがちょうど宿から出てきた。



「あっ、シンくん! 起きていたんだね。さっきノックしても返事がないからまだ寝ているのかと思っていたよ」


「アオ、ハク、ユカリおはよう、さっきまで食堂にいてご飯食べていたんだ。その時キャリーからお昼の事聞いたよ。昨日はぐっすり眠っていたみたいで呼ばれているのに気が付かなくてごめんね」


「……気にするな、あれだけの事があったんだ」


「そうですわ。疲れているシンくんを無理に起こすのは良くないと思って、私たちだけで食堂に行くことになったんですわ」



 そんな立ち話をしたあとに、3人がこれからどこに出かけるかも聞いてみることにした。



「こんな朝早くに何処に出かけるの?」


「私たち、(ほし)3冒険者になったことを記念して温泉に行くのですわ!」


「えっ! ユカリたち(ほし)3冒険者になったの!? おめでとう!」


「嬉しいですわ」


「ありがとうシンくん」


「……ふっ」



 3人とも嬉しそうにしていた。



「ところでさっき温泉って聞こえたけど、そんなのあるの?」


「……アルンから南の方角に向かった先に、温泉で有名な村があるんだ」


「ミーナミ村にそんなのあったかな?」


「……ミーナミ村よりも更に南にある村だ」


「僕とハクくんとユカリちゃんはその村に行くけど、シンくんも一緒に行く?」


「俺はどうしようかなぁ、鍛錬したいしなぁ」



 そうやって俺が悩んでいると、ハクが答える。



「……その村には訓練所があるみたいだぞ。そこでも鍛錬ができるし、いつもと違った気分で鍛えるのもいいんじゃないか」


「訓練所があるのか……じゃあ行こうかな」


「やったぁ! シンくんも来てくれるんだね」


「みんなで温泉に入りますわよ! さぁ、行きの馬車に乗りますわ!」



 こうして俺たちは、馬車に乗って温泉のある村にまで向かうのであった。

目を覚ますと空が暗かった。お腹が空いて二度寝ができないので、食堂で食事をする。


食堂で働くキャリーに、今は夜ではなく日付が変わって、もうすぐ明るくなる朝だと知らされる。


食事をして店を出ると空は明るくなり始めていた。宿に帰ると、アオ、ハク、ユカリが宿から出てきた。


そこでアオたちが(ほし)3冒険者になったことを知り、これから南の方角にある温泉で有名な村に行くのだという。その村には訓練場があるみたいなので、俺もついて行くことにした。


そして俺たちは馬車に乗って温泉のある村に向かうのであった。

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