表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/248

205話 ☆?『拠点設営団』㉑(先生)

 俺は体を揺らされる感覚で、ぼんやりと意識が戻る。どうやら星を見ている間に寝てしまったようで、瞼を閉じていても、太陽が出ていることが分かるくらい外が明るいと理解できた。



「シンくん起きて、朝だよ」


「ん……おはよう、アオ」



 俺は大きなあくびをして目を涙で潤すと、完全に目が覚める。


 上体を起こしたあと、ゆっくり立ち上がる。周りを見るとまだ何人か寝ているようだが、それ以外の人は起きていて、朝食を食べたりしていたり、料理人の配る料理の列に並んでいた。



「アオはもう食べたの?」


「ううん、これから食べるところ。シンくんも早く並ぼう」


「そうだね」


「あっ、その前に」



 俺が列に並ぼうとすると、アオは俺の背中に回り込む。そして背中をパッパと手ではたいて土を落とした。



「これで良し! シンくんが寝ているときに結構服が土で汚れていたみたいだから、軽く落としておいたよ」


「ありがとう」


「いえいえ」



 アオにお礼を言うと、アオは嬉しそうにする。そしてアオは「ちょっと待ってて」といい、ここから離れる。


 アオは周りに人がいないことを確認すると『ウォーター』を使い、自分の手を洗って、手についた土を洗い流していた。そして濡れた手を布で拭くのだった。


 俺も洗うためにアオのように端の方に移動して『ウォーター』を使い、手と顔を洗って綺麗にするのだった。そうして俺たちは、料理を配る列に並び、料理を受け取るのだった。


 リクたちにユカリたち、ザイゲンたちにクリエートはすでに集まっていて、食べている最中のようだった。俺とアオはそこに混ざって一緒に食べるのだった。






 食事を終えると、全員が拠点主任の前に集まり、指示を与えられる。


 冒険者は一昨日やった拠点周りの索敵を行い、魔物がいたら討伐することだった。



「2日しか経っていませんし、魔物がいるとは思えませんが、念のために索敵をお願いします。上位冒険者のダイケンさん、ナーゲナイフさん、ヤミィさんは、ダンジョン化した洞窟に入って調査してください」



 上位冒険者は洞窟に、下位冒険者は一部を拠点に残して森に行くこととなった。


 森の索敵は、拠点主任が言うように魔物が一切出てこない。手分けして索敵しても、誰も魔物の姿を見つけられる者はいなかった。


 俺たちは森を歩いただけで拠点に戻ってくることになった。


 拠点に戻ると、資材を載せた馬車が来ていて、拠点に残っていた冒険者たちが荷下ろしをしていた。帰ってきた俺たちは、荷下ろしを手伝い、全ての馬車から資材を下ろす。


 これで俺たちがやることはなくなったようで、職人たちが建物を建てる姿を眺めていた。少しすると、拠点主任が冒険者を集める。



「みなさんお疲れさまでした。これにて『拠点設営団』のクエストはクリアとさせていただきます。報酬はギルドでお渡ししますので、これから私と一緒に馬車に乗ってアルンに向かいます」


「やっと終わったぁ!」


「一時は死ぬかと思ったぜ!」


「早くお風呂に入りたいわ」



『拠点設営団』に参加していた冒険者たちは、クエストが終わったと聞いて騒いでいた。


 冒険者は次々と馬車に乗り込んでいく中、クリエートが俺に話しかける。



「もう行っちゃうんだね」


「クリエートはここに残るんだっけ?」


「うん、元々残る予定だったし、洞窟がダンジョンになっちゃったから、前以上に鍛冶職人が必要みたい。僕頑張るよ!」


「あはは、元気がいいね。それじゃあ俺も頑張らないとね。またね、クリエート」


「またね、シン!」



 俺たちはクリエートに手を振って馬車に乗り込み、動き出した馬車に揺られながらアルンに向かうのであった。






 ■






 俺は空をぼんやりと眺めながら、ゆっくり動く雲を目で追っていた。そうやってアルンに着くまで暇を潰していると、隣に座っているハクが話しかけてくる。



「……これで終わりのようだな」


「みたいだね。こんなにクリアに時間がかかったクエストは初めてだよ」


「……俺も初めてだ、しばらく休みたい。シンはこの後どうするんだ?」


「そうだね、クリエートには頑張るって言ったから、強くなるための鍛錬をする予定だよ」


「……そうか、ほどほどにしておけよ」



 ハクはそう言うと、目を閉じて瞑想を始めるのだった。俺もハクを見習って、瞑想を始める。雲を眺めているよりも暇が潰せそうだった。


 俺は意識を自分の内に向かわせていく。周りの風の音や馬車の動く音などが徐々に遠くなっていく感覚だ。


 しばらく瞑想をしていると、いつの間にか馬車が止まっていることに気が付いた。もうアルンに着いたのかと思い、目を開けると、視界には青空が広がっている。


 アルンの街は小さく見えているが、まだまだ遠いようだ。



「あれ? なんでここで止まっているの?」


「シンくん起きたんだね、馬車はさっき止まったばかりなんだけど、近くで強個体の目撃情報があったらしくて、索敵するかどうか話し合っているみたい」


「強個体がいるなら、索敵した方がいいんじゃないの? なんでわざわざ話し合う必要があるのさ」


「……今日は実戦訓練の日と被っているからな」


「実戦訓練? ってことは今話し合っている人って!?」



 俺が馬車から身を乗り出すと、何度もお世話になった人がそこにいた。



「みなさん、久しぶりですね」


「ランド先生!」



 ランドは俺たちに向かって軽く笑顔を見せて話しかけてくるのであった。

アオに起こされて、食事を食べた。


上位冒険者は洞窟に向かい、下位冒険者は森を索敵した。


資材を下ろした馬車に冒険者は乗り、アルンに帰る。


途中で強個体が出たという情報が入り、索敵するか話し合っていると、ランドと久々に再開することとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ