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204話 ☆?『拠点設営団』⑳(野宿)

 洞窟の動きが止まり、ダイケンが中の様子を見に入っていく。俺たちはそれを洞窟の外から見ていた。


 ダイケンが壁に手を触れていると、その近くに魔素が集まりスライムが生まれた。



「スラ!」



 スライムはダイケンを見つけると、攻撃を仕掛ける。ダイケンは大剣を軽く振り、スライムを難なく倒した。


 倒したスライムは経験値を吐き出し、小さな魔石だけを残して体は消滅した。


 ダイケンは魔石を拾い、握りしめたまま外に帰ってくる。そして、拠点主任に魔石を渡した。



「倒したスライムから魔石だけが残った、まるでアルンの洞窟のようなダンジョンになったみたいだな」


「そのようですね」


「魔王軍は勢力を拡大させて、この大陸を自分たちの物にしようとしている。ダンジョンを増やすのは、大陸を支配するための手段の一つだろう」


「ダンジョン化させる魔物は過去にいましたが、そこで生み出された魔物は倒されれば体が残り、素材の回収が可能でした。今回のように魔石だけ残って消えるのは聞いたことがないです。これではこちらが一方的に戦力を削られていきます。急いでギルドにこの事を伝えましょう。馬車はどこですか?」



 拠点主任は御者たちに尋ねるが、首を横に振られる。どうやら、ベルゼが拠点を破壊するときに馬車も破壊されてしまったようで、ここには無いようだ。


 幸いにも、馬たちは森に逃げることができて殺されてはいないが、魔物がいる森の中で今も生きているかは分からないようだ。



「そうですか、これは歩いて帰ることになりそうですね」


「おっ? そういえばここに来る途中で迷っている馬を見つけたから、保護して俺らの乗ってきた馬車と一緒にいるぞ。今は御者と一緒に森の中で隠れてもらっている」



 ダイケンは思い出したかのように言うと、拠点主任は驚いていた。



「本当ですか!? すぐに我々と合流させてください」


「おう! 連れてくるから待ってな」



 ダイケンは森に向かって走っていった。






 俺たちはダイケンが馬車を連れて来るまで、ダンジョン化した洞窟から魔物が外に出ないように見張っていた。


 洞窟内で魔物は生まれているみたいだが、外にいる俺らに気が付いていないのか、こちらを見ようとしない。


 みんなどうすればいいか分からず、困惑している。


 俺は試しに洞窟に足を一歩踏み入れる。すると魔物はこちらを見て敵意を出して襲い掛かってくる。


 冒険者たちはそれを見て洞窟から距離を取る。俺も後ろに下がり、洞窟の外で待ち構えていると、魔物は俺たちを睨み付けるだけで、しばらくしたら洞窟の奥に戻っていった。



「どういうことだ?」


「魔物は自分たちの領域に侵入した者だけに攻撃をする、外に出たので攻撃を止めたのでしょう」



 俺が疑問に思っていると、拠点主任がそう教えてくれた。



「おい、馬車が来たぞ!」



 冒険者のそう言う声が聞こえて振り返ると、馬車と何頭かの馬を連れて戻ってきた。拠点に残っていた御者たちは自分の馬に近づき撫で始めた。そして、自分の馬が見当たらない御者はダイケンに話しかける。



「あの、保護された馬はこの子たちだけですか?」


「俺たちが途中で見かけて保護できた馬はそいつらだけだ」


「そうですか……いなくなってしまった子たちは仕方ありませんね……この子たちが無事で良かった」



 御者は目に涙を浮かべながら、残った馬を見ていた、馬はそれに何かを察したのか、

 涙を浮かべる御者に近づき、頭を擦り付けてきた。御者はそんな馬の頭を、鼻を啜りながら撫でるのだった。






 御者たちと拠点主任と数人のギルド職員が、馬の背に2人ずつ乗った。



「私は一足先にアルンに帰り、ギルドに報告してきます。みなさんはここに残るギルド職員の指示に従ってください。ではアルンに向かってください」


「はい」



 拠点主任は御者に指示を出すと、馬たちは走り出し、アルンに向かって走り出した。


 それを見送った後、残ったギルド職員がこれからの事を話す。



「職人の方々は道具を持っていますか?」


「おう、あれは俺たちにとって命同然だからきっちり身に着けているぜ!」



 職人たちは、仕事道具を取り出してギルド職員に見せた。



「分かりました。それでは冒険者の方々は、馬車を連れて木を切り、馬車に木を載せてここまで運んできてください。運んだ木は職人の方々が加工して、建物の材料にしてください。では、よろしくお願いします」



 馬車はガタガタと揺れながら冒険者と一緒に森に近づいて行った。森に行かなかった冒険者は、ベルゼとの戦いでボコボコになった地面を平らにするために、破壊された拠点の残骸の撤去と、土を別の場所から運んで、穴の開いた部分に詰める作業を始めるのであった。


 こうした作業は数時間行われて、辺りはすっかり夕焼け空に変った。


 そのころには、目立った地面のボコボコは平らになり、扉はないが屋根と壁はある建物が1件できていた。


 今からアルンに帰るには、加護も魔力も切れていて危険ということで、みんなとここで一晩過ごすこととなった。


 食事をどうするか悩んでいたところ、馬車を1台連れた拠点主任が帰ってきた。



「もうこんなに立て直せたのですね。今日用意できる馬車は1台だけですが、明日には用意してこちらに向かわせてくれるそうです。明日までの辛抱です、頑張りましょう! それと、馬車には食事と飲み物を載せてきました」


「「「おおお!!! 飯だ!」」」



 冒険者たちは馬車に集まり、荷物を下ろしていく。中を開けると、肉に野菜、水にミルク入ったビンがたくさん入っていた。今夜過ごすには十分すぎるほどの量だった。


 料理人たちは早速食材を運び、調理を始めるのだった。そして、みんなで生き延びたことへの喜びを分かち合いながら飲み食いをして夜を過ごす。


 そして冒険者たちは、星を眺めながら野宿をするのであった。

洞窟の動きが止まり、ダイケンが様子を見に行く。魔素が集まりスライムが生まれてダイケンに攻撃するが、返り討ちに会い、魔石だけを残して体は消えた。


ダイケンは魔石を拠点主任に渡し、アルンの洞窟のようなダンジョンになったと伝える。


拠点主任はギルドに報告しようと馬車を探す。しかし馬車は破壊され、馬は森に逃げてしまったが、ダイケンたちが拠点に来る途中で馬を保護していた。しかし、何頭かの馬しか保護できておらず、涙を浮かべる御者たちもいた。


御者と拠点主任と数人のギルド職員は馬に乗ってアルンに向かった。残ったみんなは、この拠点を立て直すために木を集めて資材にしたり、残骸の撤去や土を集めて地面を埋めた。


そして暗くなり始めたので、この場所で一晩過ごすこととなった。途中で飲食物を馬車に載せて戻ってきた拠点主任が来たことで、今夜の食料問題は解決した。


冒険者たちは星を眺めながら野宿をするのだった。

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