197話 ☆?『拠点設営団』⑬(壊滅)
ザイゲンは襲ってくるゾンビたちを倒していく。
「はぁっ!」
ザイゲンがゾンビの顔面に拳を食らわせ頭を粉砕する、そのゾンビは体だけとなり動かなくなったが、どこからか飛んできたゾンビの頭が、体だけとなったゾンビにくっつくと、ビクビクと動き始めた。
「ごめんザイゲン、頭をそっちに飛ばしちゃった!」
イラミはザイゲンに謝りながら他のゾンビと戦っていた。ザイゲンは気にしていない様子で、頭がくっついて復活しそうになっているゾンビに駆け寄り。ゾンビが立ち上がる前に拳を振り下ろす。
「大丈夫だ、立ち上がってくるのならまた倒す。今度は頭が来ようと復活できないようにするだけだ!」
ゾンビの全身を殴ることで、全てを灰に変えて復活できないようにしていた。そんなザイゲンの後ろにゾンビたちが集まり、攻撃してくる。
「「「ヴァァ……」」」
「ぐはっ……おらぁ!」
背中を攻撃されても耐え、振り返りざまに肘でゾンビに攻撃をして吹き飛ばしながら体の向きを変え、両手の拳を握りしめ、まだ近くにいる2体のゾンビの胸に攻撃をする。
「今だコカ、ゾンビを燃やしてくれ!」
「うん……『ガル・ドン』……っ…………『ドン・ファイア』」
「「「ヴァァ…………」」」
コカは一瞬ふらつくと、中級魔法の『ドン・ファイア』を使い、ゾンビを燃やしていく。コカは魔法を使ったあと、地面に手と膝をついて、疲れたような表情をしていた。そのコカの近くにゾンビが近づいてくる。
「コカさん! はぁ!」
俺はゾンビを剣で切りながら、コカの近づきゾンビから守る。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫……だけど、もう『ガル・ドン・ファイア』を使う魔力が……残ってない……」
コカは辛そうにしているが、立ち上がり戦おうとする。そのときザイゲンは、ゾンビを倒しながらこちらに駆け寄ってきた。
「コカ、マジックポーションは持ってないのか?」
「持ってきた分……全部使った……」
「そうか。コカは加護と魔力が切れて戦えなくなった冒険者たちに混ざって休むんだ」
洞窟の隅に冒険者とギルド職員と職人が集まっている場所を見る。俺とザイゲンがその場所を見ると、冒険者たちはゾンビに襲われていた。
「なっ!? あそこにもゾンビが集まっていたのか!」
冒険者たちはポーションを使って傷や加護を回復させて、近寄ってくるゾンビからみんなを守っていた。
しかし、多数いるゾンビの攻撃を全て避けられるわけもなく、攻撃を受けて体から血を流す。その冒険者と入れ替わるように後ろにいた冒険者が前に出て、ゾンビと戦い始めた。
「加護が無くなっても戦うのか! ポーションの数も限りがある、早く助けないとやられてしまいそうだな」
「ヴァァ……」
「おらぁ! 数は減ってきているが、コカの魔法がなきゃ倒し切るのに時間がかかるぞ」
ザイゲンはゾンビの腹を殴り飛ばすが、状況が厳しいことを察して冷や汗をかく。殴り飛ばされたゾンビが起き上がろうとすると、頭を矢で射抜かれた。ゾンビは動かなくなるが、じきに復活してくるだろう。
「……マジックポーションが必要なのか?」
ハクが俺たちの近くまで寄ってきてコカに聞く。コカは首を縦に振ると、ハクは袋からマジックポーションを出せるだけ出し、コカに渡した。
コカは蓋を開けて飲み始めると、辛そうだった表情がみるみる明るくなっていく。
「ハクのマジックポーションをコカさんに渡して良かったの?」
「……俺よりもコカに使わせる方が良いと判断した。シンが以前魔力で矢を作ればいいと話していて、何本か買ったマジックポーションを袋に入れていたんだ」
「ふぅ……魔力回復した……」
コカはマジックポーションを飲み終わり、ゾンビたちに『ガル・ドン・ファイア』を使って灰に変えていった。
ゾンビの数が減ったことで、みんなにも余裕が生まれたのか、順調に残りのゾンビを倒せるようになってきた。
リクは斧でゾンビを真っ二つにして、俺とイラミが分かれたゾンビの体を細かく切り刻む。
ハクは灰の中から矢を拾い、それをゾンビの足に向かって放つ。ゾンビは足の動きが遅くなり、そこにカイトとユカリが同時に攻撃をする。
ソラは笛でゾンビの体に振動を与えて震えさせている間に、ザイゲンがゾンビを殴っていった。
細かくなったゾンビの肉片を踏みつぶしながら、冒険者たちの方に集まるゾンビに攻撃を仕掛け、立っているゾンビはいなくなった。
「復活するゾンビが立ち上がる前に攻撃すれば、そのうち復活しなくなる!」
肉片同士が近づき繋がって起き上がろうとするゾンビを、俺は剣で細切れにする。
復活できなくなる肉片は灰に変わり、復活の余力を残している肉片は、肉片の形を保ったままだった。しかし、この大きさでは俺らに攻撃することもできず、足で踏み潰すだけで、灰に変わっていく。
「もう残っていないよね?」
「ああ、全部灰になったぜ!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
リクが答えてくれて、この場所にやっとゾンビがいなくなった。冒険者たちもギルド職員も職人も雄叫びを上げている。
「シンくん、早くアオくんの所に行きますわ!」
「そうだね、拠点まで急ごう!」
戦い終わったばかりの俺たちは、拠点に戻るために洞窟の出口に向かう。
ゾンビを生み出した親玉のベルゼが、冒険者のいない拠点に先に向かったんだ、自分たちがゾンビと戦っていた以上に酷い状態になっているとみんなは思っていて、拠点に向かう途中の表情が暗かった。
(アオ、無事でいてくれ!)
俺は走りながらアオの無事を祈っていた。
■
橋を渡り洞窟の出口へ向かっている道中には灰があり、アオたちがベルゼを追いかけているときに、ゾンビに襲われたのだろうと予想する。
そして、もうすぐ出口という所で、アオと冒険者たち、料理人やクリエートがこちらに向かって来ていた。
「アオ、クリエート、無事でよかった!」
「シンくん……うぅぅ」
「シン……拠点がダメになっちゃった……食堂も、鍛冶屋になるはずだった資材も壊されちゃった……」
アオとクリエートは俺たちの顔を見るなり目から涙を零す。他の拠点に残っていた人たちは、悲しさと悔しさを混ぜたような表情をしていた。
そんな状態の中、アオたちの前に拠点主任が歩み寄る。
「みなさん無事でよかった。負傷者は多くいますが、1人も欠けずによくここまで持ち堪えました。ところで魔王幹部のベルゼはまだ拠点に?」
拠点主任はアオに聞く。
「はい、ベルゼが何かをすると突然拠点内に魔物が現れて、その魔物を使って拠点を壊している最中です。僕たちはみんなを連れて洞窟に逃げ込むことしかできませんでした」
「そうですか。となると、拠点を壊し終えれば、あなたたちを追いかけてくるかもしれないということですね。でしたらここで耐えましょう。そろそろ上位冒険者が来る頃ですから」
拠点主任はそう言うと、俺たちにここで休むように伝え、魔物が来た時のために少しでも回復させようとするのだった。
ゾンビの頭を破壊しても、体に頭がくっつくと立ち上がろうとしたが、ザイゲンに全身を殴られたことで灰になった。
コカが『ガル・ドン・ファイア』を使えないくらいに魔力を使っていた。加護が無くなって戦えない冒険者たちに混ざって休ませようとしていたら、そこにゾンビが集まっていた。
冒険者たちはポーションを使いながら、何とか耐えていたが、加護が無い状態で戦うという危険な状態になり始めていた。
ハクが使っていなかったマジックポーションをコカに渡したことで、コカがマジックポーションを飲み、魔力を回復させて魔法を使えるようになった。
ゾンビを倒し終えて拠点に向かうと、料理人やクリエートを連れたアオたちと合流する。
拠点は新たに魔物を出現させたベルゼにより壊されている最中のようだ。
拠点主任は、そろそろ上位冒険者が来る頃と言い、俺たちをその場で休ませて、魔物が来た時のために少しでも回復させようとするのだった。




