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195話 ☆?『拠点設営団』⑪(泡)

 水の中から飛び出してきた魔物は、ミズクラゲとキクラゲで、大きな音を立てずにぞろぞろとシザークラブも水の中から出てきて、合計3種類の魔物が陸に上がってきた。


 シザークラブの大きさは2(メートル)くらいで、飛び出した2つの目に赤い殻に包まれ、6本の足があり、左右には大きなハサミを持つ蟹だ。その左右のハサミをカチカチと鳴らしてこちらを威嚇しているようだ。


 そんなシザークラブがだいたい30体くらい並んでいる。その後ろに、ミズクラゲとキクラゲ合わせて10体ほどふよふよと浮いていた。



「さあ、始めなさい」



 魔物たちはベルゼの指示で動き出す。


 シザークラブたちは一斉に泡を出した。泡は空中に浮かびながらこちらに少しずつ近づいてきている。冒険者の1人が泡に手を伸ばし始めた。



「なんだこの泡?」


「その泡に触れたら破裂するぞ!」


「なにっ!?」



 シザークラブの泡に冒険者が不用意に触ろうとしたところを、他の冒険者が止めに入る。手を伸ばしていた冒険者は慌てて手を引き、泡から離れた。



「危ねぇな! 俺の所に来るんじゃねぇ」



 冒険者は泡に息を吹きかけると、泡は息に飛ばされて反対方向に進んでいく。そして、他の泡にぶつかると破裂して、近くにいる冒険者に衝撃が伝わった。その衝撃は冒険者だけでなく、周りにある泡にも伝わり、あちこちに飛ばされ、他の泡とぶつかり破裂の連鎖が起こり、洞窟内は破裂音がたくさん響いた。


 あちこちで破裂したことで、何人かの冒険者が破裂に巻き込まれてダメージを受けていた。


 シザークラブたちはもう一度泡を出して、また泡がいっぱい洞窟内に現れた。これではシザークラブたちに近づくこともできない。



「どうやって攻めれば良いんだ」



 俺がそう呟く間にも、泡は俺たちに近づいてくる。俺たち冒険者はじりじりと後退させられていた。



「我慢できねぇ、俺は行くぜ!」


「俺も行く!」


「だったら俺も!」



 泡に触りそうになっていた冒険者の1人が泡を避けながら前に進むと、何人かの冒険者もそれに続いて泡が浮かぶ中を進んで魔物たちと俺たちの間くらいの距離まで進んでいた。


 すると、何も行動を起こしていなかったミズクラゲたちが水の中に潜り、水をぼたぼたと垂らしながら水の中から出てきた。



「何をする気なんだ?」



 ミズクラゲたちは体を回転させて触手をねじる。そして勢いよく逆回転をして体に付いた水滴を飛ばしてきた。


 その水滴は俺たちの所にまで届いて頬を濡らすが、俺たちには何のダメージにもなっていなかった。だが、ミズクラゲの狙いは俺たちにダメージを与えることではないことがこの後すぐに判明する。


 水滴は俺たちの手前側にも落ち始めていた。そして、シザークラブの泡のある所にも水滴が落ちていくのが見える。


 俺や他の冒険者たちは、水滴が泡に近づいて触れる所を見てしまった。






 洞窟内は一気に破裂音が響き渡る。その中には微かに冒険者の悲鳴が聞こえていた。






 音が鳴り止むと、泡を避けながら進んでいた冒険者が血を流して倒れていた。しかも倒れたまま動く気配がない。


 何人かの冒険者が助けに向かった。


 シザークラブたちは助けに入る冒険者の事を待ってはくれないので、再び泡を出してくる。


 冒険者たちは急いで倒れた冒険者たちを背負い、泡が近づく前に戻ってこられた。



「「「うっ……」」」


「気絶しているだけで死んではいないようだね」


「だが加護が剝がれている。こいつらを出口の所まで運ぶぞ」



 冒険者たちによって、出口付近にまで運ばれていった。



「僕の回復魔法なら加護が戻るから、あの人たちの回復をしてくるよ!」



 アオは俺にそう言うと、冒険者たちの後を追いかけていった。



「なあシン、この状況をどうやって突破すると良いと思う?」


「ごめん、分からない。ただ気になることがあって……」


「何か見つけたの?」


「さっき運ばれた冒険者の1人が泡に息を吹きかけて進む方向をかえさせていたでしょ? もしかしてだけど、空気をぶつければ破裂しないのかなって思ってさ。ただ、以前水の中でシザークラブと戦っているのを見たことがあるんだけど、その時は空気に当たったことで破裂したんだよね」


「そういうことか。でも、風魔法が役に立ちそうな感じはするよね」



 ソラは前に出ると、手を突き出し魔法を唱える。



「『ドン・トルネード』!」



 竜巻が起こると、泡は吹き飛ばされて、途中で破裂した泡もあったが、ほとんどが俺たちから離れて破裂していたため、俺たち冒険者にダメージはなかった。


 逆にシザークラブやミズクラゲたちの方に飛んでいったため、向こうはダメージを受けているようだった。



「シン! 風魔法で泡は何とかなりそうだよ」


「そうみたいだね」



 ソラと俺は笑みを浮かべる。


 他の冒険者たちも今の動きを見て戦い方を理解したようだ。



「風魔法は俺も使える! 泡が来たら俺が吹き飛ばしてやるぞ!」



 風魔法の使える冒険者は次々に前に出て泡を攻略していった。


 シザークラブはそれでも泡を吐くことを止めないため、魔物たち側には泡の破裂がたくさん起こり。シザークラブとミズクラゲは全滅するのであった。



「よし! これで全部か?」


「キクラゲはどこに行った?」



 倒れているのはシザークラブとミズクラゲたちだけで、キクラゲの姿はどこにもない。冒険者たちが探していると、水の中からキクラゲたちが出てきた。


 泡の破裂から身を守るために水の中に避難していたようだ。


 だが、キクラゲだけなら問題ない。


 冒険者たちはキクラゲに攻撃を仕掛け、ダメージを与えていく。キクラゲは水に触れ回復をしているようだが、キクラゲの回復量よりも冒険者の与えるダメージ量の方が上回っていた。



「これで終わりだ!」



 俺は触手がほとんど無くなったキクラゲを剣で切りつけた。クリエートに砥いでもらったおかげで、キクラゲを一刀両断。


 そのままキクラゲの体は2つに分かれて経験値を吐き出すのであった。


 他のキクラゲも、冒険者の手によって倒されているようだ。



「これでもう魔物はお前だけだ、ベルゼ!」



 いつの間にか天井に張り付いて俺たちの戦いをリラックスしながら観戦していたベルゼに言った。



「これも突破してきましたか。さすがにこれだけの冒険者がいると、突破してくる冒険者も出てきてしまうものですね。ですが、そんなに消耗していて大丈夫なのでしょうか。ここからが本番だと言うのに」



 ベルゼは自分の体を大量の小さな蝿に変えて洞窟内を飛び回る。



「うわっ、近寄るな!」



 大量の蝿を手で払う冒険者や、耳を塞いで不快な音に耐える冒険者たち。


 大量の蝿が同じ場所に集まると、ベルゼの姿に戻った。



「目覚めなさい」



 ベルゼが両手を救い上げるように動かすと、倒したはずの魔物が全て動き始めた。



「「「ガウッ!」」」


「「「ゴブッ!」」」


「「「スラ!」」」


「「「クワッ!」」」


「「「キィキィ」」」



 ウルフにゴブリンにスライムにアイアンタートルにサウンドバットなどがゾンビとして蘇る。そして水の近くにはシザークラブとミズクラゲとキクラゲもゾンビとして蘇っていた。



「しまった、挟み撃ちか!」



 前方にはウルフたち、後方にはシザークラブたち。俺たちは連戦で体力も魔力も消耗している中でこの魔物たちの相手をすることになるのだった。

水の中から出てきたのは、ミズクラゲとキクラゲとシザークラブだった。


シザークラブは泡で俺たちを追い詰めると、冒険者の何人かが泡を避けながらシザークラブたちの所まで向かう。しかし、ミズクラゲの水滴を飛ばして泡に当てたため破裂し、泡に囲まれていた冒険者たちは加護が剥がれ、血を流すほどのダメージを受けた。何とか他の冒険者たちが回収して、出口付近まで運ばれ、アオはチオ流している冒険者たちに回復魔法をかけに向かった。


その後、泡は空気が当たっても破裂しなかったことを見ていたので、ソラの風魔法で泡を吹き飛ばした。他の冒険者の中にも風魔法を使える者がいたので、その冒険者も風魔法を使いながら泡をシザークラブたちの所まで飛ばした。


そして魔物を倒すと、ベルゼが小さな蝿をたくさん出し、死んだ魔物をゾンビに変えて蘇らせた。しかも前方はウルフたちで、後方はシザークラブたちと挟み撃ちになった。

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