194話 ☆?『拠点設営団』⑩(布石)
橋を完成させている間に冒険者は全員集まっていたので、ぞろぞろと橋の向こう側にある洞窟に入っていく。
これだけの人数が渡ったが橋は壊れる気配を見せない。簡易的とはいえ、しっかりと作られているようだ。
とはいえ、また魔物が来て橋を壊されても困るので、数人の冒険者を見張りに残して、他のみんなは湖のように水が満たされている場所がある広い空間まで進んでいく。
現れる魔物は、壁を走って俺たちの横を通り抜けようとするウルフや、水の流れる場所から現れるサウンドバットを倒して前に進む。
これだけ冒険者が多いと、魔物に気が付いたころには倒されていて、俺たちの出る幕はないようだ。
次々とランタンが設置されて、いよいよランタンを設置する最終地点に着いたようだ。
前に来た時よりも鉱石が増えていて、この広い空間にランタンが不要なほど、壁が明るくなっていた。
「ここが最後です、冒険者のみなさんは水から魔物が現れないか警戒してください!」
冒険者は一斉に水の近くに行き、どこから魔物が出てこようと、職人やギルド職員の所まで辿り着けないように、冒険者たちは陣形を広げて警戒をしていた。
ランタンを設置する早さは変わっていないはずなのに、緊張からか遅く感じていた。
他の冒険者の息遣いが荒くなっていることが分かる、俺も頬から汗が垂れて顎に溜まり、ぽたりと落ちる。
そして、職人たちの手は止まり、洞窟内が明るくなったことで、ランタンの設置が全て終わったことを冒険者たちやギルド職員たちは理解した。
みんなが完成を祝う前に、後ろから1人分の拍手が聞こえてきた。
「お仕事ご苦労様です」
「お……お前はベルゼ!? なんでこんなところにっ!」
俺は声を荒げた。
顔の上半分には蝿の目と口があり、顔の下半分には人間のような鼻と口がある男が、水の上を背中に生えた虫の羽で無音のまま飛んでいるベルゼの姿に、アオとハクとユカリは目を見開き驚愕する。
まさかこんな所で魔王幹部に会うとは思っていなかったからだ。
冒険者たちやギルド職員はベルゼの顔を知らないため状況を理解できていないようだが、危険な存在だということは読み取っていた。
ベルゼは、俺の顔をじっと見る。
「私の姿と名を知っているようですが、どこかでお会いしたことがありましたか? 申し訳ないです。私は魔王様の事で頭がいっぱいですので、ちょっとしたことでは覚えてあげられません。まあ覚える必要はないでしょう」
ベルゼが両手を広げると、押しつぶされるような感覚に襲われる。ベルゼが魔力を開放してきたのだ。
「っ……はっ!」「……っ、これは!?」「くっ……重い……!」
冒険者たちはベルゼの圧力に押されて、体を硬直させているが、徐々に耐えきる者が現れ始める。俺たちもベルゼの魔力に慣れてきて、体を動かせるようになり武器を構え直す。
「やはり私の魔力では完全には抑え込めませんか。でも良いんです、私は幹部の中では最弱ですが、魔王様はそんな私でも幹部として迎え入れてくれました。私の強さは戦闘力の高さではないことを魔王様は見抜いていたようです」
ベルゼは不敵な笑みを作ると両手の指を鳴らす。すると、周りの景色が歪みはじめ、俺たちは吹き飛ばされて水の近くから遠ざけられた。
歪んだ空間からは大量の魔物が顔を出す。
「「「ガウッ!」」」
「「「ゴブッ!」」」
「「「スラ!」」」
「「「クワッ!」」」
「「「キィキィ」」」
ウルフにゴブリンにスライムにアイアンタートルにサウンドバットなど、合計100体以上いるであろう魔物が一気に現れた。
「さあ、彼らと戦いなさい」
ベルゼが腕を振ると、魔物たちは動き出した。
「「「うおぉぉぉ!」」」
冒険者たちと魔物たちが一斉にぶつかり合い、金属の響く音、鈍器で殴られる音、冒険者だけでなく魔物の悲鳴も混ざって、戦場と化していた。
「た……助けて……」
床に倒れている職人たちやギルド職員たちが魔物に囲まれていた。ベルゼの魔力にやられたときに、身動きが取れないようだった。職人たちは膝立ちで、ギルド職員たちはやっと立ち上がることができたくらいで、まだまだ動けそうもない。
それを見ていた他の冒険者が、魔物から攻撃されながら、職人たちの周りを集まる魔物たちに攻撃を仕掛けて倒していく。
助かった職人たちとギルド職員たちは、やっと動けるほど回復して、出口の方に向かって戦場から離れていった。
俺はそれを横目に見た後、目の前から攻撃を仕掛けてくるウルフに意識を集中する。
「ガウッ!」
「うっ、はぁ!」
「ガッ……ァ……」
「スラ!」
「えい!」
「スラ……」
「クワァァァ!」
「ぐはっ!」
ウルフとスライムに攻撃を仕掛けられたが、反撃をして倒していく。しかし、アイアンタートルの攻撃は避けることができずに吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた先にはゴブリンがいて、そのゴブリンは他の冒険者と戦っていたが、俺とぶつかって一緒に地面に倒れた。
ゴブリンは起き上がると棒を振り上げて、俺の背中に叩きつける。
「ゴブッ!」
「うわっ、このっ!」
「ゴブッ……」
「クワァァァ!」
ゴブリンを倒すことはできたが、俺を吹き飛ばしたアイアンタートルが再び俺に攻撃を仕掛けに突進してくる。
だがその横に、槍を構えたイラミがアイアンタートルに攻撃を仕掛ける。アイアンタートルの後ろ足が出る甲羅の隙間に槍をねじ込み、致命傷を負わせる。
「はぁぁ!」
「クワァ……」
「シン大丈夫?」
「イラミさん助かりました」
「良かった、じゃあ私は次の魔物に行くね」
イラミは倒したアイアンタートルを踏み台にして高く飛ぶと、空中にいるサウンドバットを槍で突いて倒す。イラミは順調に魔物を倒しているようだった。
それはイラミだけでなく他の冒険者も次々に魔物を倒して、アイアンタートル以外の魔物はどんどん数を減らしていった。
アイアンタートルと戦っている冒険者は、硬い甲羅に苦戦していて倒せていないようだ。
「みんな……離れて……」
コカがアイアンタートルたちのいる方向に手を突き出すと、アイアンタートルと戦っていた冒険者は急いで距離を取る。
「『ガル・ドン・ファイア』」
「「「クワァァァ……」」」
アイアンタートルたちは、コカの放った大きな炎の球により焼かれて、黒焦げとなり倒された。
まだまだ魔物は何体か残っているが、数十秒もすれば全て倒しきれるだろうと思っていた。
「なかなかやりますねぇ、想定の範囲内ですが。では、第二陣と行きましょう」」
ベルゼが指を鳴らすと、今度は水の中から魔物が飛び出して来るのだった。
橋の向こう側の洞窟に入り、ランタンを設置しながら、湖のように水が満たされている場所がある広い空間まで進んでいった。
洞窟の奥にある広い空間にランタンを設置し終わると、魔王幹部のベルゼが拍手をして労ってくれる。
ベルゼが魔力を開放すると、冒険者たちは体を硬直させるが、徐々に回復して動けるようになる。
ベルゼが指を鳴らすと、空間が歪み俺らは吹き飛ばされて、歪んだ空間からは魔物が100体以上現れる。現れた魔物は、ウルフにゴブリンにスライムにアイアンタートルにサウンドバットなどだった。
何とか魔物をほとんど倒し終わると、ベルゼを再び指を鳴らして、水の中から魔物が飛び出して来るのだった。
キャラ紹介
・ベルゼ
魔王幹部の一人
蝿のような目と口を顔の上半分にしているが、顔の下半分は人間のような鼻と口があり、背中には虫の羽が付いていて、無音で飛んでいる男。
蝿の突然変異種で、魔王にはかなり心酔しているようだが、魔王からは避けられているようだ。
単体では他の幹部に比べて弱いが、死んだ魔物をゾンビとして蘇らせて戦わせることが得意。魔王であるスラルンからは、そのゾンビを使った戦い方を強みと捉えてもらい幹部にさせてもらった。




